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2020.12.15


【報告】内閣府「子ども・子育て会議(第54回)」提言のご紹介

12/1に開催された内閣府「子ども・子育て会議(第54回)」における、小規模保育などに関する駒崎理事長の提言をご紹介いたします。

1.保育所等の欠員補填の仕組み創設を要望

今年度、全国の待機児童数が過去最小となり、今後も同じペースで待機児童数が減少すると仮定した場合、あと3年で待機児童がいなくなる計算になります。

保育園を希望するご家庭にとっては大変喜ばしいことですが、東京23区でさえ、定員割れする保育園が出てきています。園児一人あたりの公定価格の単価が高く、園児の充足率が給付費の金額に大きく影響する地域型保育の小規模保育事業については、このまま定員割れが続くと、経営難で閉園せざるをえない園が増えてくると予想されます。

自治体によっては、保育所等の安定的な運営や年度途中の入所枠確保のため、独自に欠員補填の補助を設けているところもありますが、補助の有無や対象期間、金額などにばらつきがあります。

例えば、産育休から復帰し保育園の利用を開始する多くの家庭が0-2歳児であることから、補助対象を0-2歳児クラスに限定し、かつ定員の必要保育士等が確保できている場合に、欠員分の単価の7割程度(人件費相当)を補填するといった仕組みができれば、保育園の安定的な運営、地域の子育て支援施設としての機能や役割も果たすことができます。

それにより、今まで以上に年度途中の保育園への入所がしやすくなるので、保護者や就業先にとって必要なタイミングでの職場復帰が可能となり、雇用の安定化や働き方の多様性、という面においても貢献できると考えます。

子育て家庭や地域にとって必要不可欠な社会インフラとしての保育所等を維持するために、欠員補助の仕組みの検討を要望しました。

2.既存施設では対応できないマイクロニーズに応えるため、新たな小規模保育類型(S型)の創設を要望

例えばあるエリアに6人の待機児童が発生したとします。待機児童の増加トレンドにおいては将来的なニーズの増加を見込んで、認可保育所や小規模認可を設置することは合理性がありました。

しかし、待機児童の減少フェーズにおいては、認可保育所はおろか小規模認可保育所も設置することはできなくなります。こうしたマイクロニーズに対応するためには、既存の制度枠組みでは対応できません。

そこで、2人以上8人以下の新たな小規模保育類型(小規模保育事業S型)を提案します。S型は、これまでの小規模保育のように商業ビルやマンション等だけでなく、既存施設要件にこだわらず、児童館や公民館、小学校等の地域資源の中でも運営できるようにしていきます。そうした「改装と所有」を前提としない形態であれば、待機児童がいなくなった場合にも撤退しやすく、少人数の保育の受け皿をスピーディに整備できます。

一方で、保育の質を担保するために、保育士資格要件については100%を保持することを提案します。

小規模保育S型(案)

定員1人以上5人以下の家庭的保育事業がありますが、主には家庭的保育者の居宅で保育を行うため、保育を必要とするエリアに家庭的保育者がいるとは限らないことや法人運営の必要性から、小規模保育をより小さくできる方向性での制度アップグレードを提案いたしました。

3.居宅訪問型障害児保育の公定価格引き上げを要望

居宅訪問型保育事業(障害児向け)は、障害、疾病等で保育園に通うことができない医療的ケア児を1対1で保育する制度です。国の公定価格では、障害児を保育する場合には約4万2千円/月額が加算されていますが、これでは事業は赤字続きで運営が成り立ちません

出典:内閣府HP

医療的ケア児を保育するためには、専門のスタッフを採用し、たんの吸引や経管栄養等の医療的ケアができるよう、2ヶ月をかけて育成を行う必要があり、胃ろう・腸ろうなどを使用している医療的ケア児の場合は、保育士だけでなく看護師による見守りやバックアップ、運営スタッフによる保育士や保護者からの問合せ対応、緊急時対応などが必要です。人手も労力もかかることから、高コストにならざるを得ず、年間で3,500万程度の赤字となっています。

出典:内閣府HP 令和元年12月10日 第50回子ども子育て会議配付資料

現状の制度設計では、障害児に対して居宅訪問保育を提供する財務的インセンティブが働かず、事業者は一向に増えません。医ケア児の保育や医ケア児保護者の就労の道が断たれることがないよう、公定価格の引き上げを要望いたしました。

4.障害児加算に加えて医療的ケア児加算の創設を要望

公定価格の障害児加算は、対象となる子ども1名に対し加配置職員0.5人分相当の単価になりますが、医療的ケアを必要とする子どもの場合、子ども1名に対し看護師または保健師(以下、看護師等)1名の加配置が必須と考えます。

医療的ケアを必要とする子どもの受け入れにあたっては、看護師等が中心となり、主治医からの意見書や指示書をもとに、嘱託医、保健所・訪問看護ステーション等、多くの関係機関と連携を図り、情報共有や申し継ぎを受け、医療的ケア実施の看護計画のもと医療的ケアを行うため、十分な看護体制が必要ですが、現状の障害児加算だけでは十分ではなく、看護師等が配置できないケースがあります。

<参考>公定価格:小規模保育事業(A型)20/100地域

国による看護師の配置を支援するための補助事業「医療的ケア児保育支援モデル事業」は、予算がつく自治体や保育所等が限られており、医療的ケアを必要とする子どもの保護者のニーズに合わせて利用したい保育所等を柔軟に選択できるというものではありません。

今後、待機児童数が減少し定員割れが起こった際に、例えば小規模保育事業などの施設で看護師等を配置し、医療的ケアを必要する子どもを積極的に受け入れることができるよう、医療的ケア児加算を公定価格に組み込んでいただけるよう要望いたしました。

5.企業主導型保育事業への「障害児保育加算」の導入を要望

2016年に開始した企業主導型保育事業は、地域枠の弾力化なども導入され、地域の保育ニーズの受け皿の役割を担うまでになっています。そのため、企業主導型保育事業は認可保育所に入園できなかったお子さんの受け皿になっているという現状があります。

企業主導型に通うお子さんや、入園を希望されるお子さんの中にも障害児がいますが、企業主導型保育事業では障害児を預かるための整備が難しく、スタッフが疲弊していたり、そもそも入園をお断りしなければならない状況にあります。

障害児を預かるためには、お子さんにとって安心安全な保育環境を担保するため、スタッフの加配が必要になります。認可保育所では、障害児を受け入れる特定地域型保育事業所において、障害児2人につき、保育士1人を配置するために必要な経費を負担する『障害児保育加算』が導入されています。

企業主導型に通う障害児、また、その保育園で働くスタッフ労働環境を改善するためにも、企業主導型保育事業にて『障害児保育加算』の導入を要望いたしました。

6.「保育所等における要支援児童等対応推進事業」で地域連携推進員の配置先を限定せず、支援対象に居宅訪問型保育の追加を提案

基礎自治体を回って地域連携推進員の導入を勧めてきた際に、自治体より「地域連携推進員を配置できる園を見つけるのが困難」「別の保育所の地域連携推進員が巡回支援に来ることに抵抗を感じる(情報漏えいの懸念等がある)」といった意見があがり、導入が進まない状況に陥っています。

当事業の目的は、地域連携推進員が保育所等への相談支援を行い、関係機関と連携して、保育所等の運営を円滑化することです。この目的を達成するために、地域連携推進員の配置先を基幹保育所に限定する必要はありません

配置先を限定せず、自治体が地域連携推進員を民間団体等(ソーシャルワーカーを抱えるNPO等)に委託することも含めて、柔軟な形で事業を行えるよう提案いたしました。

また、現在の事業イメージ図には居宅訪問型保育事業所が入っていませんが、居宅訪問型保育事業所においても相談支援のニーズがあり、都内で居宅訪問型保育を行った際、複数の家庭で虐待を含む課題が見つかり、専門の相談スタッフが持ち出しで保育士の相談支援を行っています。

「家庭的保育事業等の設備及び運営に関する基準の一部を改正する省令」(令和2年3月26日厚生労働省令第40号)により、今年4月1日から、「保護者の疾病、疲労その他の身体上、精神上若しくは環境上の理由により家庭において乳幼児を養育することが困難な場合」も子ども子育て支援法で規定する、居宅訪問型保育を利用できるようになりました。

これにより、これまで以上に、困難を抱えるご家庭での居宅訪問型保育を行う機会が増え、保育士や保護者からの相談ニーズが増えると予想されます。また、居宅訪問型保育は、保育園と違い、1対1での保育であるため、より悩みを保育士1人で抱え込んでしまうことも懸念されます。

事業の支援対象に居宅訪問型保育事業所を含め、地域連携推進員が居宅訪問型保育の保育士や保護者からの相談を受けられるよう要望するとともに、コロナ感染防止のため、そして、限りのある人員で広く相談支援を行うために、巡回訪問支援だけではなく、オンラインや電話による相談支援も柔軟に行えることも認め、要綱等でその旨明示することも提案致しました

7.賃借料と公定価格の賃借料加算の収入額が乖離している地域の保育所等について、上乗せ加算の創設を提案

賃借料が賃借料加算の額の3倍を超える都市部などの保育所等について、その乖離分を補助し安定的な運営を行うため、国の補助事業「都市部における保育所等への賃借料支援事業(保育対策総合支援事業費補助金)」があります。

東京都江東区では、この補助事業を活用した区の賃借料加算がありますが、開設から5年目までという条件がついており、6年目以降は賃借料加算からはみでた年間1,000万以上の費用を、全て保育園側で負担しなければならない状況です。

江東区以外の区でも、自治体によって賃借料加算の対象期間や補助上限など条件にばらつきが生じています。

賃借料加算の収入額との乖離分が大きいにも関わらず、補助が受けられないと、それを全て事業者が負担することとなり、職員への処遇改善や安定的な保育園運営を行うことが難しくなるため、「都市部における保育所等への賃借料支援事業」の財源を用いて、公定価格の賃借料加算の上乗せ加算の仕組みの創設を提案いたしました。

8.都道府県に届出のある認可外の居宅訪問型保育の経験を、加算率の算定年数に含められるよう要望

現在、都道府県に届出をしている認可外の居宅訪問型保育は、加算率の経験年数の算定対象施設に含まれていません。

一方で、同様の保育を行う地域型保育事業の居宅訪問型保育、病児保育施設や一時預かり事業所、認可外保育施設指導監督基準を満たす旨の証明書の交付された施設については、加算率の経験年数の算定対象となる施設に含まれています。

上記の施設や事業が対象になるのであれば、「都道府県に認可外保育施設指導監督基準を満たす旨の証明書を交付された施設」に、認可外の居宅訪問型保育も加えていただけるよう要望いたしました。

経験年数の算定対象施設

引用:府子本第761号「施設型給付費等に係る処遇改善等加算Ⅰ及び処遇改善等加算Ⅱについて(令和2年7月30日)」

9.DVで避難中等の「ノーセーフティネットひとり親家庭」が児童手当を受け取れるように運用改善を要望

2020年9月に「別居中・離婚前のひとり親家庭」実態調査プロジェクトチームが実施した別居中・離婚前のひとり親家庭262世帯への調査にて、18.1%が児童と同居しているにも関わらず、児童手当を受け取れていないことがわかりました。

ノーセーフティネットひとり親家庭とは、別居中・離婚前で、子どもと同居していながら児童手当をはじめとしたセーフティネットを剥奪され、精神的、経済的、社会的に追い詰められた状況にいるひとり親家庭を指す造語です。

今回調査した対象者の98%は母子家庭で、7割以上が相手からのDVを経験しており、かつ就労年収200万未満。過半数が行政等の専門機関、職場や友人に状況を打ち明けられていない状況でした。

現在の児童手当制度では、離婚を前提として別居している場合には、住民票を別世帯にすることを条件に、児童手当の受給者変更ができるようになっており住民票を別世帯にする手続きをしようとすると、相手に居場所を知られてしまいます。DV被害者の多くは、それを恐れて、住民票を別世帯にすることができないため、児童手当を受け取ることができないのです。

調査でも、児童手当の受給者変更手続きをしていない理由の第1位は「相手と関わりたくない」で、DV被害者の多くが、相手とのやり取りを回避するために手続きを行えていないということが分かりました。

一方、国としては「児童虐待・DV事例における児童手当関係事務処理について」(平成24年3月31日付雇児発0331第4号厚生労働省雇用均等・児童家庭局長通知。以下「DV事務通知」という。にて、現在の受給者が虐待やDVの加害者である場合に、その者に対して児童手当等の受給資格を取り消すことができる事例が示されていますが、対象者が限定されてしまっています。

申請者が「配偶者」(虐待・DVの加害者)と同一の住民票のままやむなく避難しており、かつ「配偶者」の社会保険の被扶養者になっている場合に、その「配偶者」に対し「職権による支給事由消滅処理を行うべき事例」として「申請者と児童が母子生活支援施設に入所」のみ例示されるにとどまっているのです。

結果、各自治体では「児童との間に生活の一体性がないと認められる場合など」が非常に狭く解釈され、児童と別居している親(現受給者)から同居している親(被害者)へ受給者変更する手続きが進まず、児童と同居している親が児童手当を受け取れないという状態が発生しています。

前述の別居中・離婚前のひとり親家庭への調査では、そもそも、児童手当の受給者を変更できるということすら、知らない・よくわからないと回答した世帯が約4割にのぼりました。

そこで、児童手当を必要としている多くの別居中家庭の実態に合わせて自治体が判断できるよう、例えば、「申請者と児童が母子生活支援施設に入所」以外のケースとして、「特別定額給付金事業におけるDV避難者や施設入所児童等への対応」(2020年4月 特別定額給付金室)にて採用された要件を参考に、「行政または行政から委託された弁護士・民間支援団体等がDVから避難しており児童と同居しているという生活実態を確認できた場合」等も例示に追加することを提案致しました。

通知改正の上、DVからの避難などのノーセーフティネットひとり親も、新通知に基づいてしっかりと救済されるのだ、ということを自治体・民間支援団体・当事者へ積極的に周知していただきたいです。

 

詳細は内閣府ホームページをご覧ください。

子ども・子育て会議: 子ども・子育て本部 – 内閣府(リンク

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