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2021.11.30


【報告】内閣府「子ども・子育て会議(第58回)」提言のご紹介

10/11に開催された内閣府「子ども・子育て会議(第58回)」における、駒崎理事長の提言をご紹介いたします。


1.保育園を誰もが入れる「みんなの保育園」に
〜保護者の就労要件を撤廃し、就労の有無や形態に関わらず保育園を利用できるよう提言〜

ポスト待機児童時代に入り、全国の保育所等の定員充足率は年々低下しています。 ※定員充足率=利用児童数÷定員


引用:厚生労働省Press Release「保育所等関連状況取りまとめ(令和3年4月1日)」
https://www.mhlw.go.jp/content/11922000/000821949.pdf

これまではキャパがなく受け入れられなかった在宅子育て家庭やフリーランスワーカー、社会復帰したいけれど事情により就労先がなかなか見つからない家庭など、必要要件を満たしづらい家庭の子どもも保育所等で受け入れられるようになります。

在宅子育て世帯にも保育は必要です。
共働き世帯に比べ、周囲からのヘルプが得られにくく、子育てに対して強い不安や孤立感等を抱える母親が、24時間小さい子どもと一緒にいることで虐待のおそれやそのリスクを高めています。

最新の報告(※1)によると、1年間の子どもの虐待死事例(57人)では、「0歳」が 28 人(49.1%)で最も多く、「2歳以下」の割合が34 人(59.7%)と半数を超える状況です。未就園児率の高い低年齢で深刻な事例が多く発生しています。

※1 子ども虐待による死亡事例等の検証結果等について(第17次報告)
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000825392.pdf

一時預かりもありますが、導入に消極的な自治体があったり、補助金が十分ではないために事業が広がりづらく、供給量が不足しています。令和元年度の実績(※2)で見ると、未就園児1人当たりでは1年間に約3日の利用にとどまっています。利用したい時に利用できず、複数施設や他のサービスをかけもちで利用するなど、子どもの情緒や発達面を考えても、親子にとって望ましい姿とはいえない状況です。

※2  保育を取り巻く状況について(P31)
https://www.mhlw.go.jp/content/11907000/000784219.pdf

そこで、これまでのフルタイム・共働き世帯が利用する保育園という前提を見直し、保護者の就労形態や就労の有無に関わらず、誰もが利用できる「みんなの保育園」に変更すべきと考えます。

そのためには、現行の「保育の必要性の認定」の就労要件(最低条件)の撤廃が必要です。

全体で進めることが難しければ、例えば、0~2歳児を対象に規模の特性を生かしてきめ細かな保育や保護者対応を実施している小規模保育事業で試験的に行ってみて、効果を見てから全体に広げてほしいと提言しました。

特に地域型保育事業の充足率が低く空きが多いため、他施設より受け入れが可能です。

施設別の定員充足率  ※( )は前年度比

保育所等

幼稚園型認定こども園等

地域型保育事業

全体

平成31年

93.2

91.0

82.7

92.8

令和2年

92.6(▲0.6)

96.0(+5.0)

82.2(▲0.5)

92.2

令和3年

91.3(▲1.3)

93.4(▲2.6)

78.5(▲3.7)

90.9

 

よって、小規模保育事業から保護者の就労要件を外して「みんなの保育園」に向けた取り組みを試験的に始めさせてほしいと要望しました。

2.公定価格の「賃借料加算」「冷暖房費」について、算定方法の見直しを提言

賃借料加算や冷暖房費加算の「利用子ども数×単価」の算定方法では、子どもの入所率が下がると補助金収入が減ってしまいます。

建物賃借料や冷暖房費は毎月定額なのに、子どもの数により収入が変動してしまう現在の加算の仕組みでは、今後、保育園等の量的拡充や少子化等により、保育園等の入所率が下がると事業者負担が増し経営を圧迫していきます。

また、子ども1名欠員の場合の賃借料加算の影響は、100名定員の保育園では「1/100」減収ですが、19名定員の小規模保育事業では「1/19」減収になります。さらに、規模が小さければ小さいほど、1名あたりの単価が高いので、小規模保育事業を運営する事業者にとって非常に深刻な問題です。

利用子ども数に応じて施設・事業者側で調整ができない費用に関わる加算については、定員数で算定するように見直しを提言しました。

3.特区小規模保育を全国でできるように提言

堺市等で行われている3〜5歳の特区小規模保育ですが、当該自治体の方々にヒアリングを行うと、有用性を感じていらっしゃり、今後についても期待度が高いことが伺えます。

これから全国的に少子化が進む中、人口減少地帯では既存の認可保育園のインフラを維持できなくなる地域が多発してくると考えられます。そうなった際に、少人数の保育ニーズがある地域において、狭いスペースでも立ち上げられ、0~5歳児まで保育でき、かつ、家庭的保育・小規模保育事業者等の卒園児の受け皿となれる小規模保育所があれば、地域の保育インフラを維持していける可能性が見えてきます。

しかし、事業者に取り組む意思があっても、特区申請をする自治体は多くなく、取り組み自体が限定的になってしまっている現状は否めません。また、元の定義(0~2歳)と違うため、建築上の各都道府県の施設要件の緩和措置が受けられなくなることを理由に取り組み自体を断念せざる得ない状況もあります。

そこで、小規模保育事業の定義(0~2歳、19名)自体を現在の特区と同等にし(0~5歳、19名)、自治体が特区に申請しなくても、現在の要件を満たせば取り組める状況を作っていただけるよう提言しました。このことで、整備と運営のしやすさを維持したまま、きめ細かい小規模ならではの保育が継続発展されていきます。

下記の例示のように、国では「小規模認可保育所の緩和」とされています。「小規模認可保育所」の定義が(特区の現状に合わせて)変更されれば、施設整備や運用における小規模認可保育所の緩和措置が受けられるものと考えます。

例示

「日本再興戦略2016」平成28年6月2日閣議決定【抜粋】

3.国家戦略特区による大胆な規制改革

⑥小規模認可保育所に対するバリアフリー条例の適合免除の明確化・待機児童対策として小規模認可保育所の設置を促進するため、共同住宅の用途変更による小規模認可保育所の設置について、東京都が、バリアフリー法に基づく「東京都建築物バリアフリー条例第14 条」に係る具体的運用として、小規模認可保育所については、基準を満たさなくても円滑に利用できる旨を通知により明確化できるよう、国においても、小規模認可保育所について同法の建築物移動等円滑化基準への適合を義務付けていない旨を明確化した上で、子どもも含めた生活者の自立した生活の確保といった同法の趣旨を踏まえ、小規模認可保育所において利用する者が想定されない設備等に関する規制を求めないなど、合理的な運用を促すための所要の措置を速やかに講ずる。 

(上記の閣議決定を受けて)

東京都通知 「28 都市建企第252号 平成28年 6月 2日 高齢者、障害者等が利用しやすい建築物の整備に関する条例 第14条の適用に係る基本的な考え方について 」
【抜粋】「0歳から2歳までの低年齢児を対象」として緩和

4.保育の短時間認定・長時間認定の切り替えタイミングが、その家庭の実情に添えるよう、市区町村への通知を要望

就労等の要件で保育園を利用している家庭が、下の子どもの妊娠・出産のためにそのまま保育園を利用すると、産後休業→育児休業への切り替えタイミングで、保育の必要量が保育標準時間から短時間に切り替わります。


(例:東京都八王子市の保育の必要量に応じた区分
 https://kosodate.city.hachioji.tokyo.jp/material/files/group/3/R03_shiori.pdfより)

産後休業は「出産翌日から8週間」と法律で決められているため、多くの家庭で、産後8週間をすぎると保育短時間認定となり、利用時間が1日最大8時間(8~16時、9~17時等)となります。

しかしながら、産後8週間という期間は、早産児や多胎児、障害児を出産した家庭にとって、母体の回復も未然であり、生まれた子供の養育も不安定な状況です。早産児や多胎児、障害児は、出産後も数週間入院していることも多いためです。

その状況の中で、保育園の送迎が8-9時/16-17時台になると、配偶者が勤務時間上送迎対応できないことが多く、出産後の母親に送迎の負担が重くのしかかることは明白です。

弊会にて内閣府ご担当者に確認をしたところ、「自治体が保護者の状況を鑑みて保育の支給認定を決定する」との回答でした。実際に、沖縄県浦添市では「出産日から起算して5か月を経過する日の翌日が属する月の末日までの期間」は保育標準時間と認定するなど、柔軟に対応している自治体も存在します。しかし、多くの自治体では前述の通り「産前休業→育児休業」という一律切り替えになっています。

内閣府から自治体に対し、「保護者の状況を鑑みて柔軟に保育時間を認定すること」という通知を再度発出してもらえるよう要望しました。


詳細は内閣府ホームページをご覧ください。
子ども・子育て会議: 子ども・子育て本部 – 内閣府(リンク
子ども・子育て会議(第58回)会議資料はこちら