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2023.03.24


【報告】内閣府「子ども・子育て会議(第64回)」提言のご紹介

2023/2/1に開催された内閣府「子ども・子育て会議(第64回)」における、駒崎理事の提言をご紹介いたします。


まず、昨年10月の「子ども・子育て会議」にて意見書を提出した「企業主導型保育園への医ケア児加算」が来年度の予算案に反映されたことについて、御礼を申し上げました。
これにより、企業主導型保育園が医ケア児預かりの体制を整え、より多くの医ケア児家庭が保育園を利用できるようになると期待されます。
引き続き、医ケア児以外の障害児の受け入れ加算についても、見直しを進めていただきたい、と併せてお伝えしました。

また、この会議冒頭で保育課長より、「保育所等における使用済みおむつの処分について」の資料説明が行われました。
保育士や保護者の負担軽減につながるとして、保育所等において使用済みおむつの処分を行うことを推奨するというもので、使用済おむつの持ち帰り廃止は、全国小規模保育協議会の上野代表理事がかねてから提言していた内容です。
こちらも事務連絡発出の御礼を申し上げました。

◎保育所の人員配置基準を再度見直してください

【背景】

子ども家庭庁の令和5年度当初予算

「比較的規模の大きな保育所(利用定員121人以上)(※)について、25:1の配置が実現可能となるよう、2人までの加配を可能とする(現行は保育所の規模にかかわらず1人。)拡充を行い、保育士の負担軽減、こどもの安心・安全な保育環境の整備を推進する。」
と、保育所の人員配置基準改善に向けて動いてくださりありがとうございました。

 一方で、利用定員121人以上で対象となる保育所は日本において18%*1 程度しかありません。加えて、職員の平均経験年数(12年以上)等という条件も含めると該当の保育所がさらに少なくなると推測します。根本的な配置基準の改善には至っておりません。
*1 統計「社会福祉施設等調査 / 令和2年社会福祉施設等調査 個別表 施設票」より推計、NHK首都圏ナビ「“虐待や人手不足” 保育に関する来年度の予算案 現場や専門家は」
https://www.nhk.or.jp/shutoken/newsup/20221226c.html

【要望】
前回の子ども子育て会議でも提言いたしましたが、保育所の人員配置基準の見直しを今一度お願いいたします、と改めて提言しました。

===以下、前回2022年12月6日の意見書内容===

2022年11月に大阪府岸和田市で、保育所に送り届けるのを忘れられた2歳の女児が、父親の乗用車内で死亡したことを受け、小倉こども政策担当大臣は会見で「保育園の方で登園管理をしてくだされば救えた命だと思っている。園の責任は重い」と述べられました。
 

登園時の出欠確認を確実に行う、ふだんの登園時間を過ぎても子どもが来ない場合は保護者に電話で確認する等、園が定められた手順を遵守していれば、防げた事案であることは事実です。

 
しかし同時に、大臣は会見で、保育所などの現状について「かなり人繰りが大変で、ご苦労されているという認識だ。担当大臣として現場の人員に余裕が出るようしっかり要望して、少しでも現場の負担が軽減できるよう努力を続けたい」とも述べられました。

 
現在、日本の保育所で1人の保育士が見る児童数は、海外と比較しても多すぎであり、きめ細やかな保育を行える状況とは言えません。特に、3歳児配置改善加算は導入されたものの、人員配置基準として3歳児は1人の保育士が20人、4歳以上児は30人となっていて、目を行き届かせるのは非常に困難な児童数です。

人員配置基準(保育士1人当たりの年齢別児童数)


 *2
さらに、子ども子育て新制度施行後、保育の記録、保存書類の作成、会計処理財務諸表への対応、第三者評価、請求業務、各種契約業務、監査対応など事務処理が明らかに増大し、保育所の職員の負担は増すばかりになっています。
*2 (日本の人員配置基準について)「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準」第33条第2項
(海外の人員配置基準について)株式会社シード・プランニング「諸外国における保育の質の捉え方・示し方に関する研究会 (保育の質に関する基本的な考え方や具体的な捉え方・示し方に関する調査研究事業)報告書」(平成31年3月29日)
https://www.mhlw.go.jp/content/11907000/000533050.pdf

 
 今後このような悲しい事故を起こさないためにも、保育現場の負担軽減が必要です。1人の保育士が見る児童数を少人数化し、安全で質の高い保育を提供できるように、人員配置基準の見直しを行ってください。

また、事務量増加に対する正規職員雇用補助や専門家に委託できる補助の創設、事務量を減らすための対行政書類の抜本的な簡素化、押印必要書類の削減、巡回指導や監査の改善も行ってください、と併せて要望しました。

◎事業者が行っている保育園や居宅型訪問保育への巡回を支援してください。

【背景】

静岡県裾野市で起きた保育士の虐待事件を皮切りに、全国で不適切保育の報告があがっています。

保育士の過重労働や園のマネジメント体制の問題など、原因は複数考えられますが、リスクマネジメントの観点からも、園に第三者の目を入れることが、不適切保育の防止に効果的だと考えられます。

また、保育士が日々の保育を振り返り、これから取り組もうとする保育について継続的にアドバイス・指導を受けることは、職員のスキルアップや保育の質の向上のためには欠かせません。

東京都では「東京都ベビーシッター利用支援事業」において、利用者が安心してベビーシッターを利用できる環境を整備するため、認定事業者の保育の質向上の取り組みを支援しています。

巡回支援を実施するために必要な人件費や、安心・安全のためのウェブカメラ設置に必要な経費に対する補助があります*3
*3 令和3年度ベビーシッター利用支援事業認定事業者に対する保育の質向上支援事業補助要綱

(参考)

【要望】

この【保育の質向上事業】をぜひ国の制度として導入してください、と要望しました。

令和5年度保育関係予算の中で、就業継続支援として「若手保育士や保育事業者等への巡回支援事業」を盛り込んでいただいていますが、保育の質向上を目的として、定期的かつ継続的に園を巡回し指導やアドバイスを行うスーパーバイザー等の雇用支援も導入してください。

また、障害や医療的ケアのあるお子さんを、研修を受けた医療従事者ではない保育スタッフがご自宅で保育するケースが多い「居宅訪問型保育事業」では、重大事故を防ぐための安全管理が必要です。スタッフの急な休みでも保育提供を止めない対策や、現場でのスタッフ指導・育成等に対応していくため、担任保育スタッフ以外の目線・支援が必要です。また健常児と異なり救急搬送等の緊急対応のリスクが高く看護視点での見守りも欠かせません。

しかし、上述のとおり、国の制度には事業者の行う巡回支援やウェブカメラ設置に対する補助や加算がありません。

特に1対1で保育を行う居宅訪問型保育には、東京都ベビーシッター利用支援事業同様に巡回支援やウェブカメラ等の導入への補助を強く要望しました。

◎企業主導型保育事業における、利用定員の1割以上を自社従業員枠にしなければいけないルールを見直してください。

【背景】

企業主導型保育事業実施者(保育事業者型事業の事業実施者を除く)は、施設の利用定員の1割(小数点以下切り上げ。以下同じ)以上を自社従業員枠の定員として設けなければならないこととなっています。

令和元年度までに企業主導型保育事業の助成を受けている施設については、令和4年度末までの経過措置としてこの定員設定は求められないこととなっていますが、令和5年4月以降はすべての事業者がこの設定を求められることとなります。

自社従業員枠の定員を1割以上設けなければならないこのルールは、多くの従業員を抱える設置事業者においてはそれほど大きな問題とはならないことが想定されますが、従業員数の比較的少ない設置事業者においては大きな障害となります。

自社従業員の利用が1割に満たない場合、保育定員の空きが常時発生することになり、提携企業枠や一般枠で保育ニーズが発生しても、このニーズに応えることができなくなり、保育園という社会的な資源が有効活用されないこととなってしまいます。

【要望】

企業主導型保育事業における利用定員の1割以上を自社従業員枠にしなければいけないルールの見直し、もしくは経過措置の継続を検討してください、と要望しました。

◎企業主導型保育事業の安定的かつ発展的な事業継続を目的とした、設置事業者を交えた定期的な議論の場を設定ください。

【背景】

企業主導型保育事業は、平成28年度の制度創設以降、政府の「子育て安心プラン」等に基づき、定員11万人分の受け皿整備に向けて取り組まれ、この定員11万人分の定員整備が令和4年度中に概ね達成されました。

全国的に待機児童数が減少している現状を鑑みると、企業主導型保育事業は、今後いかに安定的に事業継続を行うか、また企業主導型保育事業を「子育て支援」や「少子化対策」にいかに活用するかといった発展的な事業継続の議論が必要となることが想定されます。

企業主導型保育園を安定的に事業継続していくためには、設置事業者の健全な経営が大前提です。一方、設置事業者が健全な経営を行っていたとしても、制度そのものやその運用が非効率だと、事業者の財務的な疲弊や保育園(保育士)に過度な業務負担が課されるような事態を招きます。

企業主導型保育事業に関わる事業点検・評価の場として「企業主導型保育事業点検・評価委員会」が設置されており、定期的な評価点検が行われていますが、この委員会では安定的な事業継続の議論はなされているものの、発展的な事業継続の議論はなされていないのが現状です。

企業主導型保育事業の設置事業者の中には、新しい発想や、制度運用上の課題を解決するためのアイデアを持ちえた事業者がたくさん存在しますが、発展的な議論を行うための有効な場がありません。

【要望】

全国に約4,500か所ある企業主導型保育園をいかに有効活用していくかの議論や、安定的かつ発展的に事業継続を行うための新たな仕組みについての議論、制度運用上の課題をいかに解決していくかの議論を行っていく、設置事業者を交えた定期的な議論の場を設定してください、と要望しました。

◎認可外保育施設の職員も研修を受講できるよう、キャリアアップ研修のガイドラインを見直してください

【背景】

保育士等キャリアアップ研修は、職員のキャリアアップの仕組みを構築するとともに、一定の水準のもとでリーダー的職員を育成するためのすばらしい制度です。

しかしながら、現行ガイドライン(保育士等キャリアアップ研修ガイドライン 雇児保発0401第1号)では、対象者は「保育所等(子ども・子育て支援法に基づく特定教育・保育施設及び特定地域型保育事業をいう)の保育現場において役割を担うもの」と明記されており、認可外保育施設に勤務する職員は対象外と読み取れてしまいます。

ガイドラインには対象者に「当該役割を担うことが見込まれる者を含む」とも記載されており、現在認可外保育施設に勤務する職員でも対象外になるわけではないと考えられますが、自治体によっては申込みを受け付けてもらえなかったり、順番を後回しにするなどの対応を受けることがあります。

認可外施設の職員も認可施設と同じようにキャリアアップ研修が受講可能になれば、職員のスキルアップやモチベーションの向上にも繋がります。

【要望】

現行のガイドライン(保育士等キャリアアップ研修ガイドライン 雇児保発0401第1号)で対象の施設に認可外保育施設も明記してください。または認可外保育施設を排除しないよう、自治体向けに通知等を出してください、と要望しました。


詳細は内閣府ホームページをご覧ください。

子ども・子育て会議(第64回)会議資料はこちら