2022/10/4に開催された内閣府「子ども・子育て会議(第62回)」における、駒崎理事の提言をご紹介いたします。
◎通園バスへの「置き去り防止装置」の導入・運用コストを全額公費負担にしてください
通園バスへの「置き去り防止装置」の設置を義務化していただき、ありがとうございます。しかし、導入・運用にかかる費用が事業者負担となる場合、園運営を圧迫し、導入が遅れる恐れがあります。
通園バス置き去り事故の再発を防ぐため、以下の3点を要望いたします。
1.「置き去り防止装置」導入・運用にかかるコストを全額公費負担としてください
国として、安全管理のために有効と考える装置を決め、その装置の導入及び運用にかかるコストを全額公費負担していただきたいです。また、1施設あたりではなく、バス1台あたりで計算した補助額にしていただきたいです。全額公費負担がなければ、ただでさえ経済的に厳しい園運営を圧迫することになり、導入が進みません。
2.現状非常に支援の薄い通園バス運行への公的支援を強化してください
そもそも、通園バスの運行は園にとっては大きな負担であるにも関わらず、公的支援はわずかしかありません。このことが、少ない人数でとり回さなければならず、事故のリスクを上げてしまう遠因となっています。通園バス運行への公的支援を強化してください。
3.障害児用施設も対象にしてください
保育所、幼稚園、認定こども園及び特別支援学校幼稚部だけではなく、障害児用施設(障害児通所施設、特別支援学校等)も対象にしてください。自分で判断したり、身動きをすることが困難な障害児の置き去りも発生しえます。
◎企業主導型保育の障害児加算を充実させてください
しかしながら、ある県に設置された医療的ケア児支援センターによると、相談のほとんどは就園に関することであり、保育園の就園は大きな課題となっています。
一方、内閣府の「企業主導型保育事業を行う施設における医療的ケアの必要な児童の預かり実態について」によると
医療的ケア児の入所相談を受けたことがあると回答した企業主導型保育施設のうち、実際に医療的ケア児を「受け入れたことがある」と回答したのは20.4%にとどまっています。
医療的ケア児の受入れにあたり課題と感じる点として、以下が挙げられています。
「医療的ケア児や医療的ケアについての基礎知識がない」(66.3%)
「事故発生時等のリスクへの対応」(60.1%)
「医療的ケアへの対応が困難であるため、保育従事者のマンパワーが
不足する」(57.5%)
「看護師等の確保が難しい」(56.4%)
「受け入れ体制を整備するための資金が不足している」(41.0%)
看護師を加配できれば、上記に挙げた課題は改善が期待できます。
認可保育所では、保育所が2人以上の看護師を配置する際の補助金が年1058万円となっています。
企業主導型保育にも同等の補助金の導入をお願いします。
また、企業主導型の現行の障害児加算の仕組みでは「障害児2人」に対する職員配置への加算となっていて、障害児1名をお預かりしている場合は加算認定されません。
1名でも加算認定されるように変更をお願いします。
◎居宅訪問型保育事業に「障害児対応加算」を新設してください
現状、居宅訪問型保育事業には障害児対応加算はなく、健常児でも障害児でも対象者による保育料の違いがありません(施設連携加算として、健常児より障害児の方が18,090円(217,080円/年)高く支給されます)。
しかし、障害児保育では、急変が起こるなど安全体制の確保が何よりも重要であり、普段からの巡回やアドバイス体制(保育リーダー/巡回訪問費など)、保育とは異なる看護や療育の専門性(保育アドバイザー/看護アドバイザーなど)、医療従事者ではない保育スタッフの初期研修(1-2ヶ月間)や継続育成、が必要です。
また、障害児においては担任交代も容易ではなく、真の意味で保育者と児の「1対1保育」となる。集団保育同様に複数の保育者が関わり、複数の視点が入ることは障害児においても大事であることから、担任一人が児二人をみることで、実質担任2人で一人を見られる複数担任体制に現在移行しています。しかし、複数担任体制を実施するにあたり、安全の観点で、「担任同士の情報共有や保育方針の議論」の時間が必要であり、更に人員工数が必要となっています。
千葉県や神奈川県、狛江市、三鷹市などの事業者や自治体からも「居宅保育事業実施の相談」が来たものの、財務上事業が成り立たず参入できず断念している状況です。フローレンスでは、訪問看護と組み合わせたり、寄付を募ることで、会社として事業を成り立たせています。しかし、居宅保育事業と訪問看護事業のみでは大きく赤字(約3500万)[*1]の状況であり、撤退検討が必要になっています。
*1 内閣府HP 令和元年12月10日 第50回子ども子育て会議配付資料 参考資料2より
全国の医療的ケア児は約1.9万人[*2]いるとされ、そのうち未就学児は0.52万人いると推定[*3]されます。更に医療的ケア児数は医療の発達に伴い年間約750人のペースで増加[*4]しており、今後も医療的ケア児の保育ニーズも高まっていくと考えられます。
*2 厚生労働省社会・援護局、令和元年10月1日発表資料「医療的ケア児に関する施策について」より
*3 児童に占める未就学児の割合を27.5%とし、年代別ごとの医療的ケア児比率に差がないとした場合。総務省統計局「人口推計(2018年(平成30年)10月1日現在)結果の要約 参考表1:年齢(5歳階級)別人口―総人口,日本人人口(各月1日現在)」および「統計トピックスNo.109 我が国のこどもの数 -「こどもの日」にちなんで- 表2:男女、年齢3歳階級別こどもの数」より
*4 厚生労働科学研究費補助金(障害者政策総合研究事業)分担研究報告書 平成30年度医療的ケア児に対する実態調査と医療・福祉・保健・教育等の連携に関する研究 分担研究課題(1-2):「医療的ケア児数の年次推移」図2より
全国の集団保育園での受け入れも順次進んでいますが、居宅訪問型保育は【集団園へ入園可能なラインまでの児の成長支援/集団への移行支援機能】も担っています(事業開始から約6年間で、①96名のお預かり、②現在も32名が利用中、③約半数の39名を通常の集団保育園に転園させてきた実績があります)。
2021年9月に施行された「医療的ケア児支援法」においては、医療的ケア児を育てる家族の負担を軽減し、医療的ケア児の健やかな成長と家族の離職防止を目指すことが国や地方自治体の責務となります。障害福祉分野では施行に伴う検討や改定が進んでいますが、保育分野ではまだまだといえる状況です。
居宅訪問型保育事業の公定価格の見直しとともに、障害児加算の検討を行い、医療的ケア児の保育や保護者の就労の道を守ってください。
詳細は内閣府ホームページをご覧ください。
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