2014年9月24日
【プレスリリース】
小規模保育事業の業界団体で、小規模保育の運営支援を手がけるNPO法人全国小規模保育協議会(神奈川県横浜市、理事長駒崎弘樹、以下当協議会と表記)は2014年7月30日~8月15日の17日間、全国の政令都市、一部基礎自治体を対象に小規模保育導入の準備状況についてアンケートを実施、65の有効回答を集計した。
◆小規模認可保育所、来年度より法制化
現代の多様な保育ニーズに対応する保育施策「子ども・子育て支援新制度」が2015年度に開始する。この法律で新たに「小規模保育」「家庭的保育」「事業所内保育」「居宅訪問型保育」という4つの保育制度が誕生する。
その中の一つ「小規模保育」は対象を0歳-2歳に限定、定員も6名から19名と、従来の認可保育園(定員20名以上)より少人数で行う保育事業である。0歳児は子ども3につき一人、1-2歳児は子ども6人に対し保育者一人、プラスもう一名追加が認められ人員配置が手厚い。また、規模が小さいゆえ園舎でなく一般住宅を使用する等、開園コストが従来の認可保育園より格段に低いというメリットもある。
社会保障の財源が限られる今、低予算で開園可能な「小規模保育」は待機児童の多いエリアに出店することで待機児童問題解消の切り札と期待されており、今後の拡充が大いに注目されている。
◆8割の自治体が小規模保育を実施!
アンケート「貴自治体では地域型保育給付・小規模保育事業を事業計画に位置づけ、実施される予定ですか?」
回答した自治体のうち、83%にあたる52の自治体が「小規模保育」を事業計画に盛り込み、実施予定。新制度の「小規模保育」が全国規模で大きく展開していくことが見込まれる。
83%の自治体が小規模保育を実施!
◆小規模保育拡充の難所をクリアする「特例給付」
アンケート「小規模保育の導入を進めるために課題と思われる点は何ですか?」
回答中76%にあたる48の自治体が「連携園の確保」を小規模保育導入の難点として挙げている。
小規模保育は0-2歳児を対象とするため、子どもは3歳以降に卒園し自治体が用意する「連携園」と呼ばれる他の保育施設に転入する。この「連携園」は、新制度では小規模保育事業者の求めに応じ自治体が調整、設置することとなっている。しかし都市部では待機児童が多く、地方では保育施設の不足から連携園の確保は難しいとされ、3歳以降の受け入れ先は大きく不足している。但しこの連携園制度、5年の経過措置期間があり、特例給付を受けた小規模保育施設が定員の範囲内で引き続き3歳以降の子どもを預かることを可能としている。(内閣府 自治体向けFAQ 第二版 P19 No.1より)つまり、卒園後の預けき先がない場合は特例給付制度の活用ができるのに、それを自治体が知らない状況があることを回答が示している。
◆足りるのか 補助金不足の穴埋め
アンケート「貴自治体では小規模保育導入にあたって独自の加算制度を検討されていますか?」
上乗せ補助を検討しない、もしくは未定、と87%にあたる55の自治体が回答している。
「小規模保育」への国からの補助金は基本的に不十分である。例えば賃料加算(家賃補助)。 園児10人の施設に対し都市部で4万円弱と市場水準から大きく乖離している。財務上マイナス部分を抱えたままの事業継続は難しく、こうした補助金の不足に対する上乗せ補助の設置なしに都市部では安定的な保育所運営は難しい。
上乗せ補助を検討しない・未定という自治体は87%
◆自治体の思惑と事業者のニーズ 制度理解に大きなギャップ
「小規模保育」の導入に前向きな自治体が83%と高い数字である一方、上乗せ補助を検討しない自治体も87%と高水準にのぼる。このように自治体の小規模保育導入への思惑と小規模保育事業者のニーズは大きくずれている。また、特例給付という3歳児以降の受け皿が弾力的措置として整備されているにもかかわらず、認知不足から76%の自治体が「小規模保育導入の課題に「(3歳以降の預け先の)連携園の確保」と答えるなど、制度理解が不十分であると言わざるを得ない。
社会的メリットの大きい小規模保育が広く展開するか否か、はこうした溝をいかに埋めるかにかかっているといえる。