全国小規模保育協議会では、かねてから子ども・子育て会議等で、保育所で子ども食堂等の食支援が実施できるよう、ガイドラインを作成し、保育園の多機能化の推進を後押しするよう提言を重ねてまいりました。
その提言が実り、保育園で子ども食堂など地域に資する活動を行っても良いという通知が、9月7日、こども家庭庁などから全国の自治体などに出されました。
国と自治体で分かれる「目的外使用の禁止」の壁
全国小規模保育協議会では、保育園は就労している親のみが利用できる施設ではなく、地域の親子にも開いた「子どもと親のための包括的福祉拠点」として捉え直し、様々な機能を備えていく「地域おやこ園」を目指しています。
「保育所等の空きスペースを活用して、地域の子育て世帯等が集う場等を設ける」という国が定める保育所保育指針にならい、降園後の空き時間に地域の親子も利用できる子ども食堂を実施し、保護者の負担軽減のほか「孤独な子育て」解消にも役立てる取り組みを進めてきました。
しかし、自治体によっては保育園は保育以外のことは原則として行ってはいけないと考えが根強く、公立の保育園には「目的外使用の禁止」を管理規則で定めている自治体も存在していました。国は保育園を子ども食堂等に使うことを禁じているわけではありませんが、自治体から渋られたり「調味料は園利用分と子ども食堂分を分けて計上する」など厳しい運営を指示されることがあり、全国的な実施が進まない実情がありました。
そこで、全国小規模保育協議会では国に対して、「保育所で子ども食堂等がスムーズに運営できるよう、ガイドラインを作成し国が考え方を示してほしい」と提言してきました。
「保育所は地域の拠点」国の通知のポイントは
そして今回、全国の自治体などに通知が出されました。
「保育所等において地域づくりに資する取組を行う意義」として、次のように書かれています。
●地域において保育所等は、現に利用しているこどもや保護者だけではなく、かつて保育所等を利用していたこどもや地域住民、保育所等において勤務していた職員その他保育所等と連携して活動する地域の主体とも関わり合う存在である。
● そうした場において地域づくりに資する取組を行うことは、こども・子育て支援や生活困窮世帯に対する支援のみならず、高齢者、障害者その他の地域住民の交流拠点に発展することが期待されており、子育て世帯に限らない地域住民の居場所づくり、地域の賑わいの創出等の意味においても意義のあることであると考えられる。
● 特に人口減少地域においてこどもや子育て世帯その他の若い世代が集う場は貴重かつ重要なものであり、保育所等がその拠点となることは、保育所等の多機能化の一つの例である。
※通知「保育所等における子ども食堂等の地域づくりに資する取組の実施等について」
大きくポイントは二つあります。
①施設の業務時間外・休日利用OKと明記されたこと
施設等の業務時間外や休日を利用し、本来の事業に支障を及ぼさない範囲で一時的に子ども食堂等の実施のために保育所等の設備を使用する場合のほか、 保育の提供時間内であっても、令和3年通知1(2)の整理に基づき、定員に空きがある場合において、保育所等の運営に支障を及ぼさない範囲で子ども食堂等の実施のために保育所等の設備を一時的に使用する場合には、一時使用に該当するものであり、財産処分の手続は不要となるため、令和3年通知1(4)で示した取扱いも踏まえ適切な手続を行うこと。
②消耗品費、水道光熱費を園利用分と分けて経理処理しなくてOKと明記されたこと
保育所等において子ども食堂等を実施する際の消耗品費、水道光熱費等の経費について、子ども食堂等の取組の規模が本来の事業に支障を及ぼさない範囲である場合にあっては、保育所等の運営と子ども食堂等の実施とを区分して経理することを要しない。
この通知を受け、保育園での子ども食堂の実施に理解が深まり、実践する園とすべての親子が食をきっかけに繋がれる未来が見えてきました。
今後、小規模保育協議会の会員の園でも、保育園での子ども食堂が実施され、全国でも子ども食堂の事例が増えていくでしょう。
小規模保育協議会では、子ども食堂以外にも保育園を多機能化し、地域にひらいた存在になることを目指しています。これからも引き続き、実践と政策提言を重ねてまいります。