【報告】内閣府「子ども・子育て会議(第64回)」提言のご紹介
2023/2/1に開催された内閣府「子ども・子育て会議(第64回)」における、駒崎理事の提言をご紹介いたします。
まず、昨年10月の「子ども・子育て会議」にて意見書を提出した「企業主導型保育園への医ケア児加算」が来年度の予算案に反映されたことについて、御礼を申し上げました。
これにより、企業主導型保育園が医ケア児預かりの体制を整え、より多くの医ケア児家庭が保育園を利用できるようになると期待されます。
引き続き、医ケア児以外の障害児の受け入れ加算についても、見直しを進めていただきたい、と併せてお伝えしました。
また、この会議冒頭で保育課長より、「保育所等における使用済みおむつの処分について」の資料説明が行われました。
保育士や保護者の負担軽減につながるとして、保育所等において使用済みおむつの処分を行うことを推奨するというもので、使用済おむつの持ち帰り廃止は、全国小規模保育協議会の上野代表理事がかねてから提言していた内容です。
こちらも事務連絡発出の御礼を申し上げました。
◎保育所の人員配置基準を再度見直してください
【背景】
子ども家庭庁の令和5年度当初予算
「比較的規模の大きな保育所(利用定員121人以上)(※)について、25:1の配置が実現可能となるよう、2人までの加配を可能とする(現行は保育所の規模にかかわらず1人。)拡充を行い、保育士の負担軽減、こどもの安心・安全な保育環境の整備を推進する。」
と、保育所の人員配置基準改善に向けて動いてくださりありがとうございました。
一方で、利用定員121人以上で対象となる保育所は日本において18%*1 程度しかありません。加えて、職員の平均経験年数(12年以上)等という条件も含めると該当の保育所がさらに少なくなると推測します。根本的な配置基準の改善には至っておりません。
*1 統計「社会福祉施設等調査 / 令和2年社会福祉施設等調査 個別表 施設票」より推計、NHK首都圏ナビ「“虐待や人手不足” 保育に関する来年度の予算案 現場や専門家は」
https://www.nhk.or.jp/shutoken/newsup/20221226c.html
【要望】
前回の子ども子育て会議でも提言いたしましたが、保育所の人員配置基準の見直しを今一度お願いいたします、と改めて提言しました。
===以下、前回2022年12月6日の意見書内容===
2022年11月に大阪府岸和田市で、保育所に送り届けるのを忘れられた2歳の女児が、父親の乗用車内で死亡したことを受け、小倉こども政策担当大臣は会見で「保育園の方で登園管理をしてくだされば救えた命だと思っている。園の責任は重い」と述べられました。
登園時の出欠確認を確実に行う、ふだんの登園時間を過ぎても子どもが来ない場合は保護者に電話で確認する等、園が定められた手順を遵守していれば、防げた事案であることは事実です。
しかし同時に、大臣は会見で、保育所などの現状について「かなり人繰りが大変で、ご苦労されているという認識だ。担当大臣として現場の人員に余裕が出るようしっかり要望して、少しでも現場の負担が軽減できるよう努力を続けたい」とも述べられました。
現在、日本の保育所で1人の保育士が見る児童数は、海外と比較しても多すぎであり、きめ細やかな保育を行える状況とは言えません。特に、3歳児配置改善加算は導入されたものの、人員配置基準として3歳児は1人の保育士が20人、4歳以上児は30人となっていて、目を行き届かせるのは非常に困難な児童数です。
人員配置基準(保育士1人当たりの年齢別児童数)
*2さらに、子ども子育て新制度施行後、保育の記録、保存書類の作成、会計処理財務諸表への対応、第三者評価、請求業務、各種契約業務、監査対応など事務処理が明らかに増大し、保育所の職員の負担は増すばかりになっています。
*2 (日本の人員配置基準について)「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準」第33条第2項
(海外の人員配置基準について)株式会社シード・プランニング「諸外国における保育の質の捉え方・示し方に関する研究会 (保育の質に関する基本的な考え方や具体的な捉え方・示し方に関する調査研究事業)報告書」(平成31年3月29日)
https://www.mhlw.go.jp/content/11907000/000533050.pdf
今後このような悲しい事故を起こさないためにも、保育現場の負担軽減が必要です。1人の保育士が見る児童数を少人数化し、安全で質の高い保育を提供できるように、人員配置基準の見直しを行ってください。
また、事務量増加に対する正規職員雇用補助や専門家に委託できる補助の創設、事務量を減らすための対行政書類の抜本的な簡素化、押印必要書類の削減、巡回指導や監査の改善も行ってください、と併せて要望しました。
◎事業者が行っている保育園や居宅型訪問保育への巡回を支援してください。
【背景】
静岡県裾野市で起きた保育士の虐待事件を皮切りに、全国で不適切保育の報告があがっています。
保育士の過重労働や園のマネジメント体制の問題など、原因は複数考えられますが、リスクマネジメントの観点からも、園に第三者の目を入れることが、不適切保育の防止に効果的だと考えられます。
また、保育士が日々の保育を振り返り、これから取り組もうとする保育について継続的にアドバイス・指導を受けることは、職員のスキルアップや保育の質の向上のためには欠かせません。
東京都では「東京都ベビーシッター利用支援事業」において、利用者が安心してベビーシッターを利用できる環境を整備するため、認定事業者の保育の質向上の取り組みを支援しています。
巡回支援を実施するために必要な人件費や、安心・安全のためのウェブカメラ設置に必要な経費に対する補助があります*3 。
*3 令和3年度ベビーシッター利用支援事業認定事業者に対する保育の質向上支援事業補助要綱
(参考)
【要望】
この【保育の質向上事業】をぜひ国の制度として導入してください、と要望しました。
令和5年度保育関係予算の中で、就業継続支援として「若手保育士や保育事業者等への巡回支援事業」を盛り込んでいただいていますが、保育の質向上を目的として、定期的かつ継続的に園を巡回し指導やアドバイスを行うスーパーバイザー等の雇用支援も導入してください。
また、障害や医療的ケアのあるお子さんを、研修を受けた医療従事者ではない保育スタッフがご自宅で保育するケースが多い「居宅訪問型保育事業」では、重大事故を防ぐための安全管理が必要です。スタッフの急な休みでも保育提供を止めない対策や、現場でのスタッフ指導・育成等に対応していくため、担任保育スタッフ以外の目線・支援が必要です。また健常児と異なり救急搬送等の緊急対応のリスクが高く看護視点での見守りも欠かせません。
しかし、上述のとおり、国の制度には事業者の行う巡回支援やウェブカメラ設置に対する補助や加算がありません。
特に1対1で保育を行う居宅訪問型保育には、東京都ベビーシッター利用支援事業同様に巡回支援やウェブカメラ等の導入への補助を強く要望しました。
◎企業主導型保育事業における、利用定員の1割以上を自社従業員枠にしなければいけないルールを見直してください。
【背景】
企業主導型保育事業実施者(保育事業者型事業の事業実施者を除く)は、施設の利用定員の1割(小数点以下切り上げ。以下同じ)以上を自社従業員枠の定員として設けなければならないこととなっています。
令和元年度までに企業主導型保育事業の助成を受けている施設については、令和4年度末までの経過措置としてこの定員設定は求められないこととなっていますが、令和5年4月以降はすべての事業者がこの設定を求められることとなります。
自社従業員枠の定員を1割以上設けなければならないこのルールは、多くの従業員を抱える設置事業者においてはそれほど大きな問題とはならないことが想定されますが、従業員数の比較的少ない設置事業者においては大きな障害となります。
自社従業員の利用が1割に満たない場合、保育定員の空きが常時発生することになり、提携企業枠や一般枠で保育ニーズが発生しても、このニーズに応えることができなくなり、保育園という社会的な資源が有効活用されないこととなってしまいます。
【要望】
企業主導型保育事業における利用定員の1割以上を自社従業員枠にしなければいけないルールの見直し、もしくは経過措置の継続を検討してください、と要望しました。
◎企業主導型保育事業の安定的かつ発展的な事業継続を目的とした、設置事業者を交えた定期的な議論の場を設定ください。
【背景】
企業主導型保育事業は、平成28年度の制度創設以降、政府の「子育て安心プラン」等に基づき、定員11万人分の受け皿整備に向けて取り組まれ、この定員11万人分の定員整備が令和4年度中に概ね達成されました。
全国的に待機児童数が減少している現状を鑑みると、企業主導型保育事業は、今後いかに安定的に事業継続を行うか、また企業主導型保育事業を「子育て支援」や「少子化対策」にいかに活用するかといった発展的な事業継続の議論が必要となることが想定されます。
企業主導型保育園を安定的に事業継続していくためには、設置事業者の健全な経営が大前提です。一方、設置事業者が健全な経営を行っていたとしても、制度そのものやその運用が非効率だと、事業者の財務的な疲弊や保育園(保育士)に過度な業務負担が課されるような事態を招きます。
企業主導型保育事業に関わる事業点検・評価の場として「企業主導型保育事業点検・評価委員会」が設置されており、定期的な評価点検が行われていますが、この委員会では安定的な事業継続の議論はなされているものの、発展的な事業継続の議論はなされていないのが現状です。
企業主導型保育事業の設置事業者の中には、新しい発想や、制度運用上の課題を解決するためのアイデアを持ちえた事業者がたくさん存在しますが、発展的な議論を行うための有効な場がありません。
【要望】
全国に約4,500か所ある企業主導型保育園をいかに有効活用していくかの議論や、安定的かつ発展的に事業継続を行うための新たな仕組みについての議論、制度運用上の課題をいかに解決していくかの議論を行っていく、設置事業者を交えた定期的な議論の場を設定してください、と要望しました。
◎認可外保育施設の職員も研修を受講できるよう、キャリアアップ研修のガイドラインを見直してください
【背景】
保育士等キャリアアップ研修は、職員のキャリアアップの仕組みを構築するとともに、一定の水準のもとでリーダー的職員を育成するためのすばらしい制度です。
しかしながら、現行ガイドライン(保育士等キャリアアップ研修ガイドライン 雇児保発0401第1号)では、対象者は「保育所等(子ども・子育て支援法に基づく特定教育・保育施設及び特定地域型保育事業をいう)の保育現場において役割を担うもの」と明記されており、認可外保育施設に勤務する職員は対象外と読み取れてしまいます。
ガイドラインには対象者に「当該役割を担うことが見込まれる者を含む」とも記載されており、現在認可外保育施設に勤務する職員でも対象外になるわけではないと考えられますが、自治体によっては申込みを受け付けてもらえなかったり、順番を後回しにするなどの対応を受けることがあります。
認可外施設の職員も認可施設と同じようにキャリアアップ研修が受講可能になれば、職員のスキルアップやモチベーションの向上にも繋がります。
【要望】
現行のガイドライン(保育士等キャリアアップ研修ガイドライン 雇児保発0401第1号)で対象の施設に認可外保育施設も明記してください。または認可外保育施設を排除しないよう、自治体向けに通知等を出してください、と要望しました。
その他、駒崎理事の提言内容の詳細はこちらをご覧ください。
詳細は内閣府ホームページをご覧ください。
子ども・子育て会議: 子ども・子育て本部 – 内閣府(リンク)
子ども・子育て会議(第64回)会議資料はこちら
【報告】内閣府「子ども・子育て会議(第63回)」提言のご紹介
2022/12/8に開催された内閣府「子ども・子育て会議(第63回)」における、駒崎理事の提言をご紹介いたします。
◎保育士の柔軟な働き方を可能にし、保育人材確保を後押しして下さい。
令和4年4月の保育士の有効求人倍率は1.98倍で、全職種平均の1.17倍と比べると、依然高い水準で推移しています。保育園は慢性的に人手不足で、特に常勤保育士の採用難が続いています。さらにコロナ禍により、今まで以上に厳しい状況になっています。
その理由として、保育士の働き方が早朝や遅番勤務もあり家事育児との両立が困難であることなどが挙げられます。またコロナ禍では、在宅勤務などの柔軟な働き方ができない仕事が敬遠されるなどの実態があります。
一方、保育士登録されているが保育施設等で従事していない「潜在保育士」は、2018年時点で95万人*1おり、その数は年々増加しています。
*1 保育士の現状と主な取組(令和2年8月24日)P22 保育士の登録者数と従事者数の推移(https://www.mhlw.go.jp/content/11907000/000661531.pdf)
株式会社野村総合研究所による2018年の調査*2では、
・潜在保育士のうち約6割が今後保育士として働く意欲を持っていること
・就労意欲を持つ潜在保育士の3人に2人は、働く上で「勤務時間や勤務日など希望に合った働き方」を最も重視していること
がわかりました。
*2 潜在保育士の6割が保育士として就労を希望~「勤務時間や勤務日など希望に合った働き方」を最も重視~(https://www.nri.com/jp/news/newsrelease/lst/2018/cc/1003)
厚労省の調査*3でも、過去に保育士として就業した者が再就業する場合の希望条件として、「勤務時間」「勤務日数」が上位にきています。
*3 保育を取り巻く状況について P53 過去に保育士として就業した者が再就業する場合の希望条件(複数回答)(https://www.mhlw.go.jp/content/11907000/000784219.pdf)
常勤保育士を確保するためには、保育現場で、保育士のニーズに合わせた多様な働き方を選択できるようにする必要があります。
しかし、現在、常勤保育士の多様な働き方が認められていません。
厚労省では「1日6時間未満又は月20日未満勤務」の保育士を短時間勤務の保育士としています。よって、多くの自治体では、常勤保育士を「1日6時間以上又は月20日以上勤務」と解釈して運用しています。「1日8時間 週4日(月16日)」勤務する人がいた場合、「1日6時間 週5日(月20日)」の人よりも合計勤務時間は多くなるにも関わらず、前者は常勤保育士とみなされません。
今年10月には、大手保育事業者が週休3日(週4勤務)の正社員の導入を始めましたが、週休3日では常勤保育士の要件を満たさなくなることが課題となっています。
2022年の「骨太の方針」*4においても、多様な働き方の推進を目的とし「選択的週休3日制度」の普及を図ることが示されています。
*4 経済財政運営と改革の基本方針 2022(https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/cabinet/2022/2022_basicpolicies_ja.pdf)
保育業界においても、多様な働き方を推進し、保育人材の確保を後押しして下さいと要望しました。
例えば、自治体に向けて「常勤」の定義を改めるように以下のとおり通知を出してくださいと提言しました。
現在:1日6時間以上かつ週5日(月20日)以上
→変更後:月120時間以上
◎保育所で子ども食堂等が実施できるよう、ガイドラインを作成し、保育園の多機能化を推進して下さい。
保育所保育指針において、保育所は、通所している児童の保育を行うだけでなく「地域の子育て支援の拠点」としての役割を担うこと*5とされています。厚生労働省は、自治体に対し「多様な社会参加への支援に向けた地域資源の活用について(通知)*6」を発出し、福祉ニーズの多様化・複雑化、人口減少といった福祉分野を取り巻く状況が変化する中、包括的な支援を提供する仕組みを推進していくため、福祉サービス事業所等を活用することとしています。そして、その例として、「保育所等の空きスペースを活用して、地域の子育て世帯等が集う場等を設ける」ことを挙げています。
*5 保育所保育指針 第1章 1ー(1)ーウ(https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00010450&dataType=0&pageNo=1)
*6 多様な社会参加への支援に向けた地域資源の活用について(通知)P1,P9 (https://www.pref.fukuoka.lg.jp/uploaded/attachment/134594.pdf)
それにも関わらず、在園児の保育に関わること以外の活動に対し、自治体は、「目的外使用に該当する」として、保育所を通常の保育以外で利用することに懸念を示したり、厳密な別管理を求める等、保育園の多機能化を阻んでいます。
例えば、保育所はキッチンもあり、子どもにとって安全な環境もあることから、地域の孤立しがちな親子に対し、子ども食堂を行うのに大変適しています。実際に、某市において認定NPO法人フローレンスが「ほいくえん子ども食堂」を行ったところ、非常に反響があり、母子生活支援施設入居者を含む、地域の多くの親子にご利用いただいています。
しかし、別の自治体で同様に子ども食堂を実施しようとしたところ、保育所の運営に係る補助金の対象ではないという判断のもと、保育施設の調理室を使用することに懸念を示されたり、調味料や光熱費を保育園運営と厳密に分ける等の非効率な運用を求められています。
保育所が、在園児だけでなく地域に向けて開かれることで、孤独と孤立に陥りやすい無園児家庭等ともつながるきっかけになることが期待できます。
また、大半の保育所は、日曜日や土曜日夜は使われておらず、平日にも、使っていないスペースを抱える保育所は少なくありません。アイドリングしている保育所内スペースを、地域のNPOや習い事の先生、親グループ等に貸すことができれば、保育所がコミュニティの結節点になっていく未来が描けます。
地域の社会資源として保育所の活用を推進するため、ガイドラインを作成してください。上述の通知は、広く福祉サービス事業所の多機能化についての発信であり、自治体の認知も高くありません。保育所は様々な親子のための施設であり、入所しているこどもとその保護者のみならず地域のすべての子どものために活用すべきです。自治体が保育所の活用を前向きに検討できるよう、保育所の多機能化に特化したガイドラインを作成してください、と要望しました。
◎保育所の人員配置基準を見直してください
2022年11月に大阪府岸和田市で、保育所に送り届けるのを忘れられた2歳の女児が、父親の乗用車内で死亡したことを受け、小倉こども政策担当大臣は会見で「保育園の方で登園管理をしてくだされば救えた命だと思っている。園の責任は重い」と述べられました。
登園時の出欠確認を確実に行う、ふだんの登園時間を過ぎても子どもが来ない場合は保護者に電話で確認する等、園が定められた手順を遵守していれば、防げた事案であることは事実です。
しかし同時に、大臣は会見で、保育所などの現状について「かなり人繰りが大変で、ご苦労されているという認識だ。担当大臣として現場の人員に余裕が出るようしっかり要望して、少しでも現場の負担が軽減できるよう努力を続けたい」とも述べられました。
現在、日本の保育所で1人の保育士が見る児童数は、海外と比較しても多すぎであり、きめ細やかな保育を行える状況とは言えません。特に、3歳児配置改善加算は導入されたものの、人員配置基準として3歳児は1人の保育士が20人、4歳以上児は30人となっていて、目を行き届かせるのは非常に困難な児童数です。
人員配置基準(保育士1人当たりの年齢別児童数)
*7さらに、子ども子育て新制度施行後、保育の記録、保存書類の作成、会計処理財務諸表への対応、第三者評価、請求業務、各種契約業務、監査対応など事務処理が明らかに増大し、保育所の職員の負担は増すばかりになっています。
*7 (日本の人員配置基準について)「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準」第33条第2項
(海外の人員配置基準について)株式会社シード・プランニング「諸外国における保育の質の捉え方・示し方に関する研究会 (保育の質に関する基本的な考え方や具体的な捉え方・示し方に関する調査研究事業) 報告書」(平成31年3月29日)
https://www.mhlw.go.jp/content/11907000/000533050.pdf
今後このような悲しい事故を起こさないためにも、保育現場の負担軽減が必要です。1人の保育士が見る児童数を少人数化し、安全で質の高い保育を提供できるように、人員配置基準の見直しを行ってください、と要望しました。
また、事務量増加に対する正規職員雇用補助や専門家に委託できる補助の創設、事務量を減らすための対行政書類の抜本的な簡素化、押印必要書類の削減、巡回指導や監査の改善も行ってください、ということも併せて要望しました。
その他、駒崎理事の提言内容の詳細はこちらをご覧ください。
詳細は内閣府ホームページをご覧ください。
子ども・子育て会議: 子ども・子育て本部 – 内閣府(リンク)
子ども・子育て会議(第63回)会議資料はこちら
【報告】内閣府「子ども・子育て会議(第62回)」提言のご紹介
2022/10/4に開催された内閣府「子ども・子育て会議(第62回)」における、駒崎理事の提言をご紹介いたします。
◎通園バスへの「置き去り防止装置」の導入・運用コストを全額公費負担にしてください
通園バスへの「置き去り防止装置」の設置を義務化していただき、ありがとうございます。しかし、導入・運用にかかる費用が事業者負担となる場合、園運営を圧迫し、導入が遅れる恐れがあります。
通園バス置き去り事故の再発を防ぐため、以下の3点を要望いたします。
1.「置き去り防止装置」導入・運用にかかるコストを全額公費負担としてください
国として、安全管理のために有効と考える装置を決め、その装置の導入及び運用にかかるコストを全額公費負担していただきたいです。また、1施設あたりではなく、バス1台あたりで計算した補助額にしていただきたいです。全額公費負担がなければ、ただでさえ経済的に厳しい園運営を圧迫することになり、導入が進みません。
2.現状非常に支援の薄い通園バス運行への公的支援を強化してください
そもそも、通園バスの運行は園にとっては大きな負担であるにも関わらず、公的支援はわずかしかありません。このことが、少ない人数でとり回さなければならず、事故のリスクを上げてしまう遠因となっています。通園バス運行への公的支援を強化してください。
3.障害児用施設も対象にしてください
保育所、幼稚園、認定こども園及び特別支援学校幼稚部だけではなく、障害児用施設(障害児通所施設、特別支援学校等)も対象にしてください。自分で判断したり、身動きをすることが困難な障害児の置き去りも発生しえます。
◎企業主導型保育の障害児加算を充実させてください
しかしながら、ある県に設置された医療的ケア児支援センターによると、相談のほとんどは就園に関することであり、保育園の就園は大きな課題となっています。
一方、内閣府の「企業主導型保育事業を行う施設における医療的ケアの必要な児童の預かり実態について」によると
医療的ケア児の入所相談を受けたことがあると回答した企業主導型保育施設のうち、実際に医療的ケア児を「受け入れたことがある」と回答したのは20.4%にとどまっています。
医療的ケア児の受入れにあたり課題と感じる点として、以下が挙げられています。
「医療的ケア児や医療的ケアについての基礎知識がない」(66.3%)
「事故発生時等のリスクへの対応」(60.1%)
「医療的ケアへの対応が困難であるため、保育従事者のマンパワーが
不足する」(57.5%)
「看護師等の確保が難しい」(56.4%)
「受け入れ体制を整備するための資金が不足している」(41.0%)
看護師を加配できれば、上記に挙げた課題は改善が期待できます。
認可保育所では、保育所が2人以上の看護師を配置する際の補助金が年1058万円となっています。
企業主導型保育にも同等の補助金の導入をお願いします。
また、企業主導型の現行の障害児加算の仕組みでは「障害児2人」に対する職員配置への加算となっていて、障害児1名をお預かりしている場合は加算認定されません。
1名でも加算認定されるように変更をお願いします。
◎居宅訪問型保育事業に「障害児対応加算」を新設してください
現状、居宅訪問型保育事業には障害児対応加算はなく、健常児でも障害児でも対象者による保育料の違いがありません(施設連携加算として、健常児より障害児の方が18,090円(217,080円/年)高く支給されます)。
しかし、障害児保育では、急変が起こるなど安全体制の確保が何よりも重要であり、普段からの巡回やアドバイス体制(保育リーダー/巡回訪問費など)、保育とは異なる看護や療育の専門性(保育アドバイザー/看護アドバイザーなど)、医療従事者ではない保育スタッフの初期研修(1-2ヶ月間)や継続育成、が必要です。
また、障害児においては担任交代も容易ではなく、真の意味で保育者と児の「1対1保育」となる。集団保育同様に複数の保育者が関わり、複数の視点が入ることは障害児においても大事であることから、担任一人が児二人をみることで、実質担任2人で一人を見られる複数担任体制に現在移行しています。しかし、複数担任体制を実施するにあたり、安全の観点で、「担任同士の情報共有や保育方針の議論」の時間が必要であり、更に人員工数が必要となっています。
千葉県や神奈川県、狛江市、三鷹市などの事業者や自治体からも「居宅保育事業実施の相談」が来たものの、財務上事業が成り立たず参入できず断念している状況です。フローレンスでは、訪問看護と組み合わせたり、寄付を募ることで、会社として事業を成り立たせています。しかし、居宅保育事業と訪問看護事業のみでは大きく赤字(約3500万)[*1]の状況であり、撤退検討が必要になっています。
*1 内閣府HP 令和元年12月10日 第50回子ども子育て会議配付資料 参考資料2より
全国の医療的ケア児は約1.9万人[*2]いるとされ、そのうち未就学児は0.52万人いると推定[*3]されます。更に医療的ケア児数は医療の発達に伴い年間約750人のペースで増加[*4]しており、今後も医療的ケア児の保育ニーズも高まっていくと考えられます。
*2 厚生労働省社会・援護局、令和元年10月1日発表資料「医療的ケア児に関する施策について」より
*3 児童に占める未就学児の割合を27.5%とし、年代別ごとの医療的ケア児比率に差がないとした場合。総務省統計局「人口推計(2018年(平成30年)10月1日現在)結果の要約 参考表1:年齢(5歳階級)別人口―総人口,日本人人口(各月1日現在)」および「統計トピックスNo.109 我が国のこどもの数 -「こどもの日」にちなんで- 表2:男女、年齢3歳階級別こどもの数」より
*4 厚生労働科学研究費補助金(障害者政策総合研究事業)分担研究報告書 平成30年度医療的ケア児に対する実態調査と医療・福祉・保健・教育等の連携に関する研究 分担研究課題(1-2):「医療的ケア児数の年次推移」図2より
全国の集団保育園での受け入れも順次進んでいますが、居宅訪問型保育は【集団園へ入園可能なラインまでの児の成長支援/集団への移行支援機能】も担っています(事業開始から約6年間で、①96名のお預かり、②現在も32名が利用中、③約半数の39名を通常の集団保育園に転園させてきた実績があります)。
2021年9月に施行された「医療的ケア児支援法」においては、医療的ケア児を育てる家族の負担を軽減し、医療的ケア児の健やかな成長と家族の離職防止を目指すことが国や地方自治体の責務となります。障害福祉分野では施行に伴う検討や改定が進んでいますが、保育分野ではまだまだといえる状況です。
居宅訪問型保育事業の公定価格の見直しとともに、障害児加算の検討を行い、医療的ケア児の保育や保護者の就労の道を守ってください。
その他、駒崎理事の提言内容の詳細はこちらをご覧ください。
詳細は内閣府ホームページをご覧ください。
子ども・子育て会議: 子ども・子育て本部 – 内閣府(リンク)
子ども・子育て会議(第62回)会議資料はこちら
【報告】内閣府「子ども・子育て会議(第57回)」提言のご紹介
6/18に開催された内閣府「子ども・子育て会議(第57回)」における、駒崎理事長の提言をご紹介いたします。
1.「こども基金」の創設を提言
現在、政府内で「こども庁」創設に向けた議論が進められています。子どもを中心に据えた政策の推進のために、子ども関連政策を所管する関係府省庁の縦割りをなくすことは賛成です。
ただし、単に関係府省庁の人員と予算を1か所に集めるだけでは、有効な政策を打ち出すことは困難です。「こども庁」創設は、必要な人員と予算の投入とセットで行われる必要があります。
そこで、「こども基金」の創設を提案しました。今回、「こども庁」を創設する目的は、子育て政策の強化ですから、組織再編とセットで、子育て分野に集中的に予算を投下し、実行力のある政策を打ち出せるように、新たな「こども基金」の創設を提言しました。
(注)政府は、平成21年度に創設した「子育て支援対策臨時特例交付金(都道府県が設置する「安心こども基金」)」により、待機児童解消のための保育所整備等を実施し、一定の効果を上げました。
2.地域の全ての子どもたちに開かれた保育園に
保育園は、利用児童のためだけではなく、地域の子育て家庭のための施設であるべきだと考えます。待機児童問題が解消しつつある今、地域に開かれた「あたらしい保育園」へ移行できるように制度改正等が必要です。
1)保育の必要性認定を廃止し「国民皆保育」を目指してください。
法令上※、保育の必要性認定が受けられるのは、就労、妊娠・出産、保護者の疾病・障害等の事由により、家庭において必要な保育を受けることが困難な子どもに限定されています。
※子ども・子育て支援法第19条第1項第2号・第3号、子ども・子育て支援法施行規則第1条の5
しかし、保育を必要としているのは、必要性認定を受けられる家庭だけではありません。
週1〜週6まで、その家庭に応じたグラデーショナルな利用を可能とし、どのような家庭でも地域の保育園を利用できるように、法令改正をと要望しました。
2)3歳以上児の保育園の義務化を
保育所・幼稚園に通園することで、子ども達の虐待リスクを低下させたり、自閉症やADHD等の発達障害を早期に発見し、早期に支援に繋げていくことができます。
しかし、現状も保育園にも幼稚園にも行っていない3歳以上の子どもたちが5万人いることがわかります。
出典:厚生労働省「地域における保育所・保育士等の在り方に関する検討会(第1回)」資料3
https://www.mhlw.go.jp/content/11907000/000784219.pdf
保育園にも幼稚園にも行けず、家庭の経済力や保護者の意識によって左右されてしまう子ども達は、最も脆弱性 が高い層であると思います
3歳以上児の義務教育化を実現し、こうした子ども達を早期に社会的支援の網の目で支えていくことが必要であると提言しました。
3)保育園で福祉サービスをできるように通知を出してください。
保育園において、子ども食堂等の福祉サービスを行えれば、地域の子育て家庭の支援になります。
しかし、都内では、保育園で福祉サービスを実施することが認められていません。
法令で禁じられていない保育園での福祉サービスを、自治体の運用で認めないこととするのは適切ではありません。厚生労働省は国としては禁じていないというスタンスですが、地域の福祉に資するサービスであれば、積極的に保育園を活用できるよう、国から通知を発出していただきたいと要望しました。
3.「保育所等における要支援児童等対応推進事業」(保育ソーシャルワーク関連事業)について
当該事業は、地域の基幹保育所に「地域連携推進員」(保育士、社会福祉士、精神保健福祉士等)を配置し、他の保育所等への巡回支援、保護者への相談支援等を実施するものです。これにより、保育所等における要支援児童等の対応や関係機関との連携強化、運営の円滑化を図ることとしています。
1)対象児童数に応じた補助基準額にしてください。
現在、基幹保育所1か所あたり約460万円が補助されますが、基幹保育所数に対し、対象児童数が多いと赤字運営になります。
安定的に事業運営ができるように、対象児童の見込み数に応じた補助基準額としてもらえるよう要望しました。
2)自治体・地域連携推進員・保育園・関係機関間のクラウドでの情報共有を推進してください。
中野区では、クラウド活用やメールでの書類のやりとりは認められておらず、全て書留での発送業務が必要となっています。紙でのやりとりでは、紛失などによる情報漏えいリスクが高い上、費用・時間のロスが多く、事業をスムーズに実施することが困難です。
児童の情報をより安全に管理し、要支援家庭に対して、自治体・保育園・関係機関がそれぞれ迅速に必要な対応がとれるように、クラウドを活用した情報共有が進むよう、通知等により国から後押ししていただきたいと要望しました。
3)保育スタッフが要支援児童等の対応を適切に行うための研修や意見交換会の運営費を補助してください。
専門知識を有する地域連携推進員が、要支援児童それぞれの対応方法について保育スタッフに助言することは重要です。しかし、限られた数の地域連携推進員の助言だけでは、要支援児童等の適切な対応が十分に行えません。
保育所等で要支援児童等の対応をより適切にできるようになるためには、
①保育スタッフ自身がそのノウハウを身に付けるための研修機会の提供
②他の保育所等の保育スタッフとの意見交換会の実施(他園の事例から学ぶ)
が欠かせないと考えます。
そのための、保育スタッフの対応スキルを底上げするために必要な研修等の運営費の補助を要望しました。
4.土曜減算ルールについて、土曜利用の実態や将来的な保育園のあり方にあわせた見直しを提言
小規模保育事業は定員19名以下のため、そもそも土曜保育を希望する利用者が少なく、認可保育所と比べて預かり人数が0人になり、減算対象となる確率が高めです。そのため、毎月給付費が安定せず、小規模保育の経営に大きな影響が発生しています。
直前キャンセルについては、減算しないということが国の通知にて示されておりますが、減算対象とする自治体があると聞いています。運用の徹底を図っていただくよう対応を要望しました。
また、多様な保育ニーズの受け皿として一時保育事業を行う保育園も徐々に増えてきています。一時保育の予約が入っている場合には、例え在園児の利用がなくても、開園して子どもを預かっているとみなし、減算対象としない運用を要望しました。
そして、今後の保育園のあり方として、地域に根差した子育て支援や保育の質向上を考えていく必要があると考えます。土曜日に園職員が地域向けの子育て支援活動や、園内の環境整備・研修等による保育の質向上を目的とした活動により開園した場合には、在園児の利用が0人であっても土曜減算の対象外とするように検討を要望しました。
5.特区小規模保育の全国化を提言
大阪府堺市等で行われている3〜5歳の特区小規模保育ですが、当該自治体の方々にヒアリングを行うと、有用性を感じていらっしゃり、今後についても期待度が高いことが伺えます。
堺市の小規模保育の入所率データを見ると、卒園後の入園先として3~5歳の特区小規模保育をもつ小規模保育の入所率が105.3%と、非常に高い結果であることがわかります。
特区小規模を持たない小規模保育 84・4%
特区小規模を持つ小規模保育 105・3%
今後、全国的に少子化が進む中、人口減少地帯では既存の認可保育園のインフラを維持できなくなる地域が多発してくると考えられます。そうなった際に、0〜2歳の小規模認可保育園と連携する形で、3〜5歳の小規模認可園という選択肢があることで、保育インフラを維持していける可能性が見えてきます。
よって、3〜5歳の小規模認可保育園を国家戦略特区だけでなく、全国でできるようにすることを検討するよう要望しました。
6.企業主導型保育事業について
1)企業主導型にも障害児加算の適用を
認可保育事業である地域型保育事業(居宅訪問型保育事業を除く)において障害児を受け入れる場合、障害児2人につき、保育士1人を配置するために必要な経費「障害児保育加算」が補助されます。
しかし、認可外保育事業である企業主導型保育事業では、この「障害児保育加算」の補助がありません。
企業主導型保育事業所にも地域型保育事業所と同様に、障害児の申し込みは一定数あります。また、入園時は障害児としての入園でなくても、保育園に通っている間に園児が障害児となる場合もあり、企業主導型保育事業所で障害児を預かるケースが発生することはあり得ます。
企業主導型保育事業所であっても、障害児が安心して通える環境を整備できるように、障害児保育加算を適用するよう要望しました。
2)土曜減算についてルールの見直しを提言
企業主導型には、土曜日利用が1日でも無い場合、2カ月は猶予、3カ月目に週5運営の園として減算されるルールがあります。
例えば、保護者が毎週ではなく月2日の土曜日利用を希望した場合、週5運営の園としての給付しかない中で運用するか、土曜休園を前提とした運営にする必要があり、保護者ニーズに合わせられません。
また、認可保育事業で認められている、直前キャンセル=減算なしとする運用もありません。
土曜保育を必要とする保護者のニーズに柔軟に対応できるようなルールの見直しを提言しました。
3)定員(減少)変更を認めるよう要望
企業主導型保育事業においては、一度整備した定員を減らすことができないという指導になっています。認可保育所や認定こども園では、定員変更は自治体が認めれば可能になっております。
急激な少子化により、定員を減少させざる得ない企業主導型保育事業が今後増加することが予想されます。定員の硬直化により、運営費単価が不利な運営を強いられることで経営が悪化するなどの弊害が起きることになります。
認定こども園などは、認可定員とは別に利用定員という概念を用いて、自在に定員を伸縮させることが可能です。
現在のルールを改め、企業主導型でも、定員(減少)変更が認められる、または利用定員の設定を認めるよう要望しました。
7.公費補助により整備した施設の場合の、撤退時の返還義務について、内装費を対象外にするよう要望
補助金の交付を受けて保育所等を整備したが、今後、預かり人数の減少などでやむを得ず撤退の判断を行う保育所等が増えることが予想されます。
保育所等整備交付要綱の条件に、「事業により取得し、又は効用の増加した不動産及びその従物並びに事業により取得し、又は効用の増加した価格が単価30万円以上の機械及び器具及びその他財産については、適化法施行令第14条第1項第2号の規定により厚生労働大臣が別に定める期間を経過するまで市町村長の承認を受けないでこの補助金の目的に反して使用し、譲渡し、交換し、貸し付け、担保に供し、取り壊し又は廃棄してはならない。」とあります。
条件に反した場合には、補助金の全部または一部を返還しなければならなりませんが、建物内部の壁面や床、天井、家具、室内装飾や仕上げ等の内装費については、対象から除外するよう要望しました。
8.企業主導型ベビーシッター利用者支援事業の事務手続き(事業者・利用者双方)負担軽減のため、制度公表のスケジュール見直し、および電子化を提言
内閣府が実施する企業主導型ベビーシッター利用者支援事業は、以下のようなスキームとなります。
加入企業(親の勤め先)が親に紙の割引券を配布
↓
一回の利用ごとに割引券を親が氏名等を記入し、千切ってベビーシッター事業者に提出
↓
受け取った事業者は、一枚一枚その記載内容を目で確認しながらまとめ、社判を押し、期日までに全国保育サービス協会に送付
↓
全国保育サービス協会よりベビーシッター会社に振り込まれる
という流れです。割引券が紙であることから、管理方法が非常に煩雑となり、ベビーシッター事業者にとっては手作業に大変な工数をとられています。
また、年度始めの時期に当該年度の制度が決定されていない状況なため、毎年4-6月の利用分に関しては遡及割引対応(一度全額をベビーシッター会社に払った後、遅れて割引券を提出し、事業者から利用者へ返金する)が発生しており、利用者・事業者とも相当な負担を背負っています。
一方で、企業主導型ベビーシッター利用者支援事業と同様のサービスである民間の福利厚生では、今年度以降相次いでクーポンの電子化が予定されています。(えらべるくらぶ(2021年夏~)・ベネフィットワン(2022年度~)等)
内閣府のベビーシッター利用者支援事業においても、割引券の電子化を推進し、利用者・事業者双方の負担を軽減すること、また、遡及対応が発生しないよう、スケジュールの見直しを強く要望しました。
詳細は内閣府ホームページをご覧ください。
子ども・子育て会議: 子ども・子育て本部 – 内閣府(リンク)
子ども・子育て会議(第57回)会議資料はこちら
【報告】内閣府「子ども・子育て会議(第56回)」提言のご紹介
1/20に開催された内閣府「子ども・子育て会議(第56回)」における、小規模保育などに関する駒崎理事長の提言をご紹介いたします。
1.シッターによる届出義務化が「ザル状態」になっていることについて ―マッチング型事業者の届出未確認事案を踏まえて―
1月15日のビジネスインサイダー誌の報道によると、「ベビーシッターの大手マッチングプラットフォームで、4年半以上にわたり、児童福祉法上シッター個人に義務付けられている、都道府県等への届出を確認しないまま、届出対象年齢である7歳未満のシッティングをマッチングしていたことが明らかになった」とのことです。
児童福祉法の改正によって、2016年4月から、1日に1人以上児童を預かるベビーシッター事業者も、児童福祉法上の認可外保育施設として届出の対象になりました。今回の事案は、その法令を違反していたということになります。そうした状況のまま、同社は内閣府のシッター補助金の対象となっていました。
同誌は「そもそも補助金事業に対して、個人のベビーシッターは申請ができず、マッチング型事業者が認定をされているのは、事業者が審査等を経て安全性を担保しているとみなされているからではなかったのか。(中略)『認定の一時停止や取り消しができないのであれば、補助金事業自体が砂上の楼閣だったということではないか」「今回のキッズラインの届出未確認問題により、シッターによる届出の義務化は、ザル状態であったことが明るみに出たと言える」と指摘しています。
こうした状態について、民間から内閣府に対応策を求めました。
2.企業主導型の新規園募集停止を提案
待機児童解消が一定程度効果を発揮し、このペースで待機児童が解消された場合、3年で待機児童は0になる推計となっています。
作成:認定NPO法人フローレンス
待機児童解消を目的として設計された企業主導型保育は、その使命を終えたと考えることもできます。だとしたら新規園募集は止め、既存の園の質の向上等にリソースを振り向けていくべきではないかと考えます。
一方で、一時保育・病児保育・ショートステイ・産後ケア・多胎児支援等、地域の子育て資源はいまだに不足していることは明らかです。
認可園や地域型保育と違って、13の子ども子育て支援事業については、自治体が手を挙げなければ実施することができず、自治体は予算制約や優先順位などから、積極的に整備を行ってきたとは言い難い状況です。
企業主導型の新規園募集を停止することで生まれる予算的な余白を用いて、これまで整備が進みにくかった地域の子育て支援を行うことはできないでしょうか。その際は現状の13事業のように自治体のコミットに左右されてしまう仕組みではなく、企業主導型の良い点であった、自治体を介さず、事業者の希望で事業を始められる仕組みを踏襲することで、スピード感を持って整備を進めることが叶う構想もあわせて提案いたしました。
3.5歳まで預かれる特区小規模保育を、特区だけでなく全国でできるよう要望
堺市等で行われている3〜5歳の特区小規模保育について、当該自治体の方々にヒアリングを行うと、有用性を感じていらっしゃり、今後についても期待度が高いことが伺えます。
今後、全国的に少子化が進む中、人口減少地帯では既存の認可保育園のインフラを維持できなくなる地域が多発してくると考えられます。そうなった際に、0〜2歳の小規模認可保育園と連携する形で、3〜5歳の小規模認可園という選択肢があることで、保育インフラを維持していける可能性が見えてきます。
3〜5歳の小規模認可保育園を国家戦略特区だけでなく、全国でできるようにすることを検討して頂きたいです。
4.「在宅勤務の場合、自宅保育をしてほしい」という自治体の独自要請の取り下げを要望
都内の一部の区において、保護者へ、保育園の登園自粛要請と受け取れる通達が出されているケースが見受けられます。要請内容は「家で保育できる人だけ」とありますが、これにより育児休暇中の家庭や在宅勤務可能な家庭が保育園に預けられない事例が実際に出ています。
子どもを見ながらの在宅勤務は不可能です。さらに毎日通っている園からの「協力のお願い」は容易に「ほぼ強制」に転嫁し得ます。
保育園で働く職員の感染を防ぐことももちろん大切です。しかし、それでもなお登園自粛要請には慎重になるべきです。保護者を追い込み、精神的に不安定にさせれば、そのリスクは子どもに向かいます。
既に発出されているであろうFAQ等とあわせて、自治体独自の登園自粛を再検討するよう、厚生労働省より通知等を出して頂けるよう要望いたしました。
5.保育所運営にかかわる本部所属の職員の人件費も、拠点区分の経費として認められるよう要望
江東区の認可保育所の指導検査にて、拠点に属さない職員(本部所属)の給与等を人件費として計上したことについて、あくまでも拠点区分外の経費とする改善依頼(口頭)がありました。
指導検査基準では、委託費の人件費の使徒範囲について「保育所に属する職員の給与、賃金等保育所運営における職員の処遇に必要な一切の経費に支出されるもの」とされています。
保育所の委託費の請求業務や取引先への支払業務、園児が使うシステムの保守等に従事する本部職員の処遇に関わる経費についても、「保育所運営における職員の処遇に必要な一切の経費に支出されるもの」に該当します。
本来は拠点内で実施すべき業務を多数の拠点を運営する強みから集中管理しているにすぎず、その所属の有無に関わらず拠点運営の経費として計上されるのが適切と考えます。
もし、このような業務に従事する職員の人件費を拠点区分外の経費とすると、不当に人件費比率が低くなってしまい、実態と乖離してしまいます。
多様な運営形態があることを鑑み、保育所運営にかかわる本部所属の職員の人件費を拠点区分の経費として認めていただけるよう、指導監査実施要綱の改定を要望いたしました。
6.保育士の働き方改革において、副業・兼業として複数の認可保育施設での勤務が可能になるよう、各自治体へ通知の発出を依頼
令和2年7月時点で保育士の全国の有効求人倍率は 2.29 倍、全職種は 1.05 倍。全職種平均の倍以上となっているなど、多くの施設で保育の担い手の確保がますます困難に。
原因の一つに、保育士の働き方の画一的な運用があろうかと思います。多くの自治体において指導監査での縛りが厳しく、解釈も定まらない状況があります。
複数の認可保育施設に所属することができるか、という問題があります。例えば、保育園Aの常勤職員(月160時間勤務)が、労働時間が被らない就業時間に保育園Bで短時間勤務(月12時間勤務)する場合に、保育園Aは常勤、保育園Bでは非常勤職員として月次の各自治体への公定価格職員配置報告へ記載し、所属させることに関して、いまだ多くの自治体では許されていません。
町田市では、「複数の施設での勤務は可能です。ただし、その場合、当該職員を法人では常勤職員として採用したとしても、法令上の施設ごとの職員配置の考え方では、どちらの園でも非常勤職員扱いとなります」と示されいます。
各自治体における指導では、同法人内でも、他法人でも、複数所属を認められないと指導しているケースが多いようです。
昨今の働き方改革において、「副業・兼業」なども積極的に取り組むよういわれておりますが、保育士においても可能になってしかるべきと考えます。副業・兼業を行う理由は、収入を増やしたい、1つの仕事だけでは生活ができない、自分が活躍できる場を広げる等様々ですが、保育士の過度な長時間労働などを招かないよう留意しつつ、保育現場においても、その希望に応じて複数施設で副業・兼業が行える環境を整備すべきと考えます。
法的には問題がないと思われますので、上記のような保育士の働き方について自治体に通知を出していただけるよう提案いたしました。
7.東京都都市部における公定価格の「賃借料加算」について、金額の算定基準の見直しを要望
東京都都市部において、公定価格で定められている「賃借料加算」が金額的に実態と大きく乖離している実態があります。これは、東京都の財源で5年の期限付きで加算の上乗せを行っていることからも明らかです。
自治体の財源を使わなくてはならない現状のため、「5年」という時限付きでしか上乗せされません。そのため、5年を超えると法人が持ち出すなどの方策を取らなければ賃料を賄えないケースが続出しています。
5年後に賃料が安くなるという社会情勢でもないことから、このことが理由で保育所整備が進まない地域もあり、整備されたとしても非常に不安定な見通しでの運営を余儀なくされています。
保育所の運営は5年では終わりません。改修型であっても最低10年は運営するよう自治体からは約束を求められています。東京都の公定価格上の賃借料加算の金額設定に無理があるためこのような状況になっていると思われるため、算定基準の見直しを求めました。
8.コロナ禍における処遇改善Ⅱキャリアアップ研修の実施体制・要件について、抜本的な見直しを要望
保育士は、処遇改善Ⅱの適用を受けるため、キャリアアップ研修を受けることが必要です。しかし、コロナ禍の影響で特に2020年度は各実施主体とも「ソーシャルディスタンス」への配慮により、受講定員を減らしてきており、希望しても受講がかなわないことが増えています。
「受けたくても受けられない」という状況に鑑み、現在の実施体制や要件の抜本的な変革とともに、受講機会・受講主体を増やすこと、そして処遇改善Ⅱの 講座受講要件のさらなる延長・緩和を要望いたしました。
9.子ども子育て新制度施行後、増大した事務負担への対応に係る提言
子ども子育て新制度施行後、制度の安定と引き換えに認可申請をはじめ、記録、保存書類の作成、会計処理財務諸表への対応、第三者評価、請求業務、各種契約業務、監査対応など事務処理が明らかに増大し、施設長や事務職員への負担は増すばかりで、各施設で負担する会計業務などの外部委託や、労務管理、規定類の整備などにかかる費用なども看過できない状態となってきています。
事務量増加に対する正規職員雇用補助や専門家に委託できる補助の創設をするか、それができないならば、事務量を減らすための対行政書類の抜本的な簡素化、巡回指導や監査の改善などを希望いたしました。
詳細は内閣府ホームページをご覧ください。
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【報告】内閣府「子ども・子育て会議(第55回)」提言のご紹介
12/25に開催された内閣府「子ども・子育て会議(第55回)」における、小規模保育などに関する駒崎理事長の提言をご紹介いたします。
1.小学校の学級少人数化に伴い、保育園の人員配置基準見直しも要望
公立小学校において、よりきめ細やかな指導が行えるように、学級人数の上限(現行40人)を35人に見直し、来年度から5年間をかけて低学年から段階的に少人数化に対応することが決定しました。また、これに対応するために、令和3年度文部科学関係予算案に、教職員配置の充実のための費用が計上されています。
一方で、保育園で1人の保育士が見る児童数は、海外と比較しても多く、きめ細やかな保育を行える状況とは言い切れません。特に、3歳児は保育士1人当たり20人、4歳以上児は保育士1人で30人となっていて、目を行き届かせるのは非常に困難な児童数です。
人員配置基準(保育士1人当たりの年齢別児童数)※1
(※1)(日本の人員配置基準について)「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準」第33条第2項
(海外の人員配置基準について)株式会社シード・プランニング「諸外国における保育の質の捉え方・示し方に関する研究会 (保育の質に関する基本的な考え方や具体的な捉え方・示し方に関する調査研究事業) 報告書」(平成31年3月29日)
小学校の学級少人数化に伴い、保育現場においても、保育士1人当たりが見る児童数を少人数化し、安全で質の高い保育を提供できるように、人員配置基準の見直しを行っていただけるよう要望いたしました。
2.保育園の空き定員で障害児の児童発達支援を行えるよう提案
児童福祉法により、未就学の障害児は、障害児通所施設に通い、児童発達支援(日常生活における基本的な動作の指導、知識技能の付与、集団生活への適応訓練等)を受けられます。障害児通所施設には、利用定員に応じた報酬や児童指導員等の配置加算額などが支払われます。
現在、保育園と障害児通所施設は、隣接させることはできても、保育園で障害児の児童発達支援を行うことはできません。
「障害のある子どもは障害児通所施設で、健常児は保育園で」という分断を早期に生むことは、社会的包摂(インクルーシブ)の理念からは遠ざかってしまうため、障害児と健常児が共に過ごして成長できる環境を構築していくことが重要と考えます。
保育園の待機児童数は平成29年以降順調に減少し、令和2年4月1日時点で12,439人(※2)となっており、来年度から4年間で約14万人の保育の受け皿が整備(※3)されれば、待機児童問題はほぼ解消します。
(※2) 厚生労働省子ども家庭局保育課「保育所等関連状況取りまとめ(令和2年4月1日)」
(※3) 全世代型社会保障検討会議(第12回)配布資料「世代型社会保障改革の方針(案)」(令和2年12月14日)
待機児童問題が解消に向かう中、定員割れする保育園が出てくることが想定されます。そこで、空き定員分を活用して障害児を受け入れ、児童発達支援をできるようにする制度改正を提案いたしました。
3.企業主導型保育園にも障害児保育加算が適用されるよう要望
認可保育事業である地域型保育事業(※4、居宅訪問型保育事業を除く)において障害児を受け入れる場合、障害児2人につき、保育士1人を配置するために必要な経費「障害児保育加算」が補助されます。
(※4)小規模保育事業・家庭的保育事業・居宅訪問型保育事業・事業所内保育事業の4つ。2015年に開始された「子ども・子育て支援新制度」で認可保育事業となった。
認可外保育事業である企業主導型保育事業には、この「障害児保育加算」の補助がありません。
企業主導型保育事業所にも地域型保育事業所と同様に、障害児の申し込みは一定数あります。また、入園時は障害児としての入園でなくても、保育園に通っている間に園児が障害児となる場合もあり、企業主導型保育事業所で障害児を預かるケースが発生することはあり得ます。
企業主導型保育事業所であっても、障害児が安心して通える環境を整備できるように、障害児保育加算の適用を要望いたしました。
4.既存施設では対応できないマイクロニーズに応えるため、新たな小規模保育類型(S型)の創設を要望
例えばあるエリアに6人の待機児童が発生したとします。待機児童の増加トレンドにおいては将来的なニーズの増加を見込んで、認可保育所や小規模認可を設置することは合理性がありました。
しかし、待機児童の減少フェーズにおいては、認可保育所はおろか小規模認可保育所も設置することはできなくなります。こうしたマイクロニーズに対応するためには、既存の制度枠組みでは対応できません。
そこで、2人以上8人以下の新たな小規模保育類型(小規模保育事業S型)を提案します。S型は、これまでの小規模保育のように商業ビルやマンション等だけでなく、既存施設要件にこだわらず、児童館や公民館、小学校等の地域資源の中でも運営できるようにしていきます。そうした「改装と所有」を前提としない形態であれば、待機児童がいなくなった場合にも撤退しやすく、少人数の保育の受け皿をスピーディに整備できます。
一方で、保育の質を担保するために、保育士資格要件については100%を保持することを提案します。
小規模保育S型(案)
定員1人以上5人以下の家庭的保育事業がありますが、主には家庭的保育者の居宅で保育を行うため、保育を必要とするエリアに家庭的保育者がいるとは限らないことや法人運営の必要性から、小規模保育をより小さくできる方向性での制度アップグレードを提案いたしました。
詳細は内閣府ホームページをご覧ください。
子ども・子育て会議: 子ども・子育て本部 – 内閣府(リンク)
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【報告】内閣府「子ども・子育て会議(第54回)」提言のご紹介
12/1に開催された内閣府「子ども・子育て会議(第54回)」における、小規模保育などに関する駒崎理事長の提言をご紹介いたします。
1.保育所等の欠員補填の仕組み創設を要望
今年度、全国の待機児童数が過去最小となり、今後も同じペースで待機児童数が減少すると仮定した場合、あと3年で待機児童がいなくなる計算になります。
保育園を希望するご家庭にとっては大変喜ばしいことですが、東京23区でさえ、定員割れする保育園が出てきています。園児一人あたりの公定価格の単価が高く、園児の充足率が給付費の金額に大きく影響する地域型保育の小規模保育事業については、このまま定員割れが続くと、経営難で閉園せざるをえない園が増えてくると予想されます。
自治体によっては、保育所等の安定的な運営や年度途中の入所枠確保のため、独自に欠員補填の補助を設けているところもありますが、補助の有無や対象期間、金額などにばらつきがあります。
例えば、産育休から復帰し保育園の利用を開始する多くの家庭が0-2歳児であることから、補助対象を0-2歳児クラスに限定し、かつ定員の必要保育士等が確保できている場合に、欠員分の単価の7割程度(人件費相当)を補填するといった仕組みができれば、保育園の安定的な運営、地域の子育て支援施設としての機能や役割も果たすことができます。
それにより、今まで以上に年度途中の保育園への入所がしやすくなるので、保護者や就業先にとって必要なタイミングでの職場復帰が可能となり、雇用の安定化や働き方の多様性、という面においても貢献できると考えます。
子育て家庭や地域にとって必要不可欠な社会インフラとしての保育所等を維持するために、欠員補助の仕組みの検討を要望しました。
2.既存施設では対応できないマイクロニーズに応えるため、新たな小規模保育類型(S型)の創設を要望
例えばあるエリアに6人の待機児童が発生したとします。待機児童の増加トレンドにおいては将来的なニーズの増加を見込んで、認可保育所や小規模認可を設置することは合理性がありました。
しかし、待機児童の減少フェーズにおいては、認可保育所はおろか小規模認可保育所も設置することはできなくなります。こうしたマイクロニーズに対応するためには、既存の制度枠組みでは対応できません。
そこで、2人以上8人以下の新たな小規模保育類型(小規模保育事業S型)を提案します。S型は、これまでの小規模保育のように商業ビルやマンション等だけでなく、既存施設要件にこだわらず、児童館や公民館、小学校等の地域資源の中でも運営できるようにしていきます。そうした「改装と所有」を前提としない形態であれば、待機児童がいなくなった場合にも撤退しやすく、少人数の保育の受け皿をスピーディに整備できます。
一方で、保育の質を担保するために、保育士資格要件については100%を保持することを提案します。
小規模保育S型(案)
定員1人以上5人以下の家庭的保育事業がありますが、主には家庭的保育者の居宅で保育を行うため、保育を必要とするエリアに家庭的保育者がいるとは限らないことや法人運営の必要性から、小規模保育をより小さくできる方向性での制度アップグレードを提案いたしました。
3.居宅訪問型障害児保育の公定価格引き上げを要望
居宅訪問型保育事業(障害児向け)は、障害、疾病等で保育園に通うことができない医療的ケア児を1対1で保育する制度です。国の公定価格では、障害児を保育する場合には約4万2千円/月額が加算されていますが、これでは事業は赤字続きで運営が成り立ちません。
医療的ケア児を保育するためには、専門のスタッフを採用し、たんの吸引や経管栄養等の医療的ケアができるよう、2ヶ月をかけて育成を行う必要があり、胃ろう・腸ろうなどを使用している医療的ケア児の場合は、保育士だけでなく看護師による見守りやバックアップ、運営スタッフによる保育士や保護者からの問合せ対応、緊急時対応などが必要です。人手も労力もかかることから、高コストにならざるを得ず、年間で3,500万程度の赤字となっています。
出典:内閣府HP 令和元年12月10日 第50回子ども子育て会議配付資料
現状の制度設計では、障害児に対して居宅訪問保育を提供する財務的インセンティブが働かず、事業者は一向に増えません。医ケア児の保育や医ケア児保護者の就労の道が断たれることがないよう、公定価格の引き上げを要望いたしました。
4.障害児加算に加えて医療的ケア児加算の創設を要望
公定価格の障害児加算は、対象となる子ども1名に対し加配置職員0.5人分相当の単価になりますが、医療的ケアを必要とする子どもの場合、子ども1名に対し看護師または保健師(以下、看護師等)1名の加配置が必須と考えます。
医療的ケアを必要とする子どもの受け入れにあたっては、看護師等が中心となり、主治医からの意見書や指示書をもとに、嘱託医、保健所・訪問看護ステーション等、多くの関係機関と連携を図り、情報共有や申し継ぎを受け、医療的ケア実施の看護計画のもと医療的ケアを行うため、十分な看護体制が必要ですが、現状の障害児加算だけでは十分ではなく、看護師等が配置できないケースがあります。
<参考>公定価格:小規模保育事業(A型)20/100地域
国による看護師の配置を支援するための補助事業「医療的ケア児保育支援モデル事業」は、予算がつく自治体や保育所等が限られており、医療的ケアを必要とする子どもの保護者のニーズに合わせて利用したい保育所等を柔軟に選択できるというものではありません。
今後、待機児童数が減少し定員割れが起こった際に、例えば小規模保育事業などの施設で看護師等を配置し、医療的ケアを必要する子どもを積極的に受け入れることができるよう、医療的ケア児加算を公定価格に組み込んでいただけるよう要望いたしました。
5.企業主導型保育事業への「障害児保育加算」の導入を要望
2016年に開始した企業主導型保育事業は、地域枠の弾力化なども導入され、地域の保育ニーズの受け皿の役割を担うまでになっています。そのため、企業主導型保育事業は認可保育所に入園できなかったお子さんの受け皿になっているという現状があります。
企業主導型に通うお子さんや、入園を希望されるお子さんの中にも障害児がいますが、企業主導型保育事業では障害児を預かるための整備が難しく、スタッフが疲弊していたり、そもそも入園をお断りしなければならない状況にあります。
障害児を預かるためには、お子さんにとって安心安全な保育環境を担保するため、スタッフの加配が必要になります。認可保育所では、障害児を受け入れる特定地域型保育事業所において、障害児2人につき、保育士1人を配置するために必要な経費を負担する『障害児保育加算』が導入されています。
企業主導型に通う障害児、また、その保育園で働くスタッフ労働環境を改善するためにも、企業主導型保育事業にて『障害児保育加算』の導入を要望いたしました。
6.「保育所等における要支援児童等対応推進事業」で地域連携推進員の配置先を限定せず、支援対象に居宅訪問型保育の追加を提案
基礎自治体を回って地域連携推進員の導入を勧めてきた際に、自治体より「地域連携推進員を配置できる園を見つけるのが困難」「別の保育所の地域連携推進員が巡回支援に来ることに抵抗を感じる(情報漏えいの懸念等がある)」といった意見があがり、導入が進まない状況に陥っています。
当事業の目的は、地域連携推進員が保育所等への相談支援を行い、関係機関と連携して、保育所等の運営を円滑化することです。この目的を達成するために、地域連携推進員の配置先を基幹保育所に限定する必要はありません。
配置先を限定せず、自治体が地域連携推進員を民間団体等(ソーシャルワーカーを抱えるNPO等)に委託することも含めて、柔軟な形で事業を行えるよう提案いたしました。
また、現在の事業イメージ図には居宅訪問型保育事業所が入っていませんが、居宅訪問型保育事業所においても相談支援のニーズがあり、都内で居宅訪問型保育を行った際、複数の家庭で虐待を含む課題が見つかり、専門の相談スタッフが持ち出しで保育士の相談支援を行っています。
「家庭的保育事業等の設備及び運営に関する基準の一部を改正する省令」(令和2年3月26日厚生労働省令第40号)により、今年4月1日から、「保護者の疾病、疲労その他の身体上、精神上若しくは環境上の理由により家庭において乳幼児を養育することが困難な場合」も子ども子育て支援法で規定する、居宅訪問型保育を利用できるようになりました。
これにより、これまで以上に、困難を抱えるご家庭での居宅訪問型保育を行う機会が増え、保育士や保護者からの相談ニーズが増えると予想されます。また、居宅訪問型保育は、保育園と違い、1対1での保育であるため、より悩みを保育士1人で抱え込んでしまうことも懸念されます。
事業の支援対象に居宅訪問型保育事業所を含め、地域連携推進員が居宅訪問型保育の保育士や保護者からの相談を受けられるよう要望するとともに、コロナ感染防止のため、そして、限りのある人員で広く相談支援を行うために、巡回訪問支援だけではなく、オンラインや電話による相談支援も柔軟に行えることも認め、要綱等でその旨明示することも提案致しました。
7.賃借料と公定価格の賃借料加算の収入額が乖離している地域の保育所等について、上乗せ加算の創設を提案
賃借料が賃借料加算の額の3倍を超える都市部などの保育所等について、その乖離分を補助し安定的な運営を行うため、国の補助事業「都市部における保育所等への賃借料支援事業(保育対策総合支援事業費補助金)」があります。
東京都江東区では、この補助事業を活用した区の賃借料加算がありますが、開設から5年目までという条件がついており、6年目以降は賃借料加算からはみでた年間1,000万以上の費用を、全て保育園側で負担しなければならない状況です。
江東区以外の区でも、自治体によって賃借料加算の対象期間や補助上限など条件にばらつきが生じています。
賃借料加算の収入額との乖離分が大きいにも関わらず、補助が受けられないと、それを全て事業者が負担することとなり、職員への処遇改善や安定的な保育園運営を行うことが難しくなるため、「都市部における保育所等への賃借料支援事業」の財源を用いて、公定価格の賃借料加算の上乗せ加算の仕組みの創設を提案いたしました。
8.都道府県に届出のある認可外の居宅訪問型保育の経験を、加算率の算定年数に含められるよう要望
現在、都道府県に届出をしている認可外の居宅訪問型保育は、加算率の経験年数の算定対象施設に含まれていません。
一方で、同様の保育を行う地域型保育事業の居宅訪問型保育、病児保育施設や一時預かり事業所、認可外保育施設指導監督基準を満たす旨の証明書の交付された施設については、加算率の経験年数の算定対象となる施設に含まれています。
上記の施設や事業が対象になるのであれば、「都道府県に認可外保育施設指導監督基準を満たす旨の証明書を交付された施設」に、認可外の居宅訪問型保育も加えていただけるよう要望いたしました。
経験年数の算定対象施設
引用:府子本第761号「施設型給付費等に係る処遇改善等加算Ⅰ及び処遇改善等加算Ⅱについて(令和2年7月30日)」
9.DVで避難中等の「ノーセーフティネットひとり親家庭」が児童手当を受け取れるように運用改善を要望
2020年9月に「別居中・離婚前のひとり親家庭」実態調査プロジェクトチームが実施した別居中・離婚前のひとり親家庭262世帯への調査にて、18.1%が児童と同居しているにも関わらず、児童手当を受け取れていないことがわかりました。
ノーセーフティネットひとり親家庭とは、別居中・離婚前で、子どもと同居していながら児童手当をはじめとしたセーフティネットを剥奪され、精神的、経済的、社会的に追い詰められた状況にいるひとり親家庭を指す造語です。
今回調査した対象者の98%は母子家庭で、7割以上が相手からのDVを経験しており、かつ就労年収200万未満。過半数が行政等の専門機関、職場や友人に状況を打ち明けられていない状況でした。
現在の児童手当制度では、離婚を前提として別居している場合には、住民票を別世帯にすることを条件に、児童手当の受給者変更ができるようになっており、住民票を別世帯にする手続きをしようとすると、相手に居場所を知られてしまいます。DV被害者の多くは、それを恐れて、住民票を別世帯にすることができないため、児童手当を受け取ることができないのです。
調査でも、児童手当の受給者変更手続きをしていない理由の第1位は「相手と関わりたくない」で、DV被害者の多くが、相手とのやり取りを回避するために手続きを行えていないということが分かりました。
一方、国としては「児童虐待・DV事例における児童手当関係事務処理について」(平成24年3月31日付雇児発0331第4号厚生労働省雇用均等・児童家庭局長通知。以下「DV事務通知」という。)にて、現在の受給者が虐待やDVの加害者である場合に、その者に対して児童手当等の受給資格を取り消すことができる事例が示されていますが、対象者が限定されてしまっています。
申請者が「配偶者」(虐待・DVの加害者)と同一の住民票のままやむなく避難しており、かつ「配偶者」の社会保険の被扶養者になっている場合に、その「配偶者」に対し「職権による支給事由消滅処理を行うべき事例」として「申請者と児童が母子生活支援施設に入所」のみ例示されるにとどまっているのです。
結果、各自治体では「児童との間に生活の一体性がないと認められる場合など」が非常に狭く解釈され、児童と別居している親(現受給者)から同居している親(被害者)へ受給者変更する手続きが進まず、児童と同居している親が児童手当を受け取れないという状態が発生しています。
前述の別居中・離婚前のひとり親家庭への調査では、そもそも、児童手当の受給者を変更できるということすら、知らない・よくわからないと回答した世帯が約4割にのぼりました。
そこで、児童手当を必要としている多くの別居中家庭の実態に合わせて自治体が判断できるよう、例えば、「申請者と児童が母子生活支援施設に入所」以外のケースとして、「特別定額給付金事業におけるDV避難者や施設入所児童等への対応」(2020年4月 特別定額給付金室)にて採用された要件を参考に、「行政または行政から委託された弁護士・民間支援団体等がDVから避難しており児童と同居しているという生活実態を確認できた場合」等も例示に追加することを提案致しました。
通知改正の上、DVからの避難などのノーセーフティネットひとり親も、新通知に基づいてしっかりと救済されるのだ、ということを自治体・民間支援団体・当事者へ積極的に周知していただきたいです。
詳細は内閣府ホームページをご覧ください。
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【報告】内閣府「子ども・子育て会議(第53回)」提言のご紹介
10/5に開催された内閣府「子ども・子育て会議(第53回)」における、小規模保育などに関する駒崎理事長の提言をご紹介いたします。
1.3歳以上児を受け入れる国家戦略特区小規模保育施設が、家庭的保育事業等の連携施設として認定されるよう要望
3~5歳児の定員を設定する施設である特区小規模保育施設(以下「特区小規模」)は、現行の制度では、小規模保育事業、家庭的保育事業及び事業所内保育事業(以下「家庭的保育事業等」)の連携施設となることはできないとされています。
平成31年4月、「特定教育・保育施設及び特定地域型保育事業並びに特定子ども・子育て支援施設等の運営に関する基準」の一部が改正され、同法第四十二条5項では、卒園後の受け皿を担う連携施設の確保が著しく困難であると認めるときは、企業主導型保育事業、又は地方自治体が運営費支援等を行っている認可外保育施設から確保できることとなっています。
全国に先駆けて特区小規模を開設した大阪府堺市では、家庭的保育事業等と協定を締結することにより、家庭的保育事業等の卒園児を優先的に受け入れることができるとしており、既存の小規模保育事業に近接した場所に特区小規模を開設し、日頃から保育について連携協力を行っているため、卒園後の移行もスムーズです。
保育所や幼稚園、認定こども園と同様に、特区小規模を連携施設として認めて頂くか、第四十二条第5項に追加頂くことを要望いたしました。
2.わいせつ行為を行った保育士の免許が失効したことを確認できる期間を、教員と同様に40年にすることを要望
保育士は犯罪行為によって免許が取り消されたとしても、2年が経過すると、免許の再取得が可能である旨が児童福祉法第十八条の五に記されています。
一方で、子どもに対する性犯罪は極めて常習性、再犯性の高いものです。法務省の調査では、小児わいせつで検挙された犯罪者の84.6%が、小児わいせつの前科を持っていたことが明らかになりました。(参照元:平成27年版犯罪白書, 法務総合研究所)
さらに、小児性愛障害の専門家である斉藤章佳氏らによって、小生性愛障害を持つ者は、性嗜好が職業選択の基準となっており、免許が取り消されても、子どもと関われる別の現場に転職したり、元の保育士に戻っていたりする可能性が指摘されています。
この問題は、教育分野でも長く指摘されてきました。現行法では、教員免許が取り消されても3年後には再取得が可能で、教員の処分歴を検索するデータベースでも情報が開示されなくなっていました。しかしこのほど、文部科学省はわいせつ行為などで教員免許を失効したことを確認できる期間を40年に延長する方針を示しています。
子どもたちを性犯罪から守るため、保育士の欠格事由について教員と同等に引き上げることを要望いたしました。
3.コロナ禍における、保育所監査の簡略化・分散化・オンライン化を提案
今年度、コロナ禍においても、保育所監査が通常通り実施されています。長時間の対応を迫られている実情に関し、保育所側の負担が大きいため一部簡略化・分散化・オンライン化などの対応を含めた配慮を依頼しました。
保育現場は、エッセンシャルワーカーとしてコロナによる自粛要請期間も含め、開所をしています。現在も感染者クラスタが生まれないよう細心の注意をもって開所をしております。また、2月からの長期戦のため、職員は心労や保護者・行政対応も含め疲弊をしており、特に小規模保育所のような少人数スタッフでの対応には一部限界が出ているところもあります。
感染症対策で職員と在園児以外の保育室出入りを禁じている園もあり、その対策も適正に行っているところです。
しかし、職員室も別室として大きな空間の無い小規模保育所に、監査対応のため、行政の職員が入れ代わり立ち代わり多数出入りすることで危険を増している現状があります。特に午睡現場チェックや給食室等の立ち入りは今、この時期に取り立てて行うことが適切であるか疑問を感じざる得ません。
そこで、監査の簡略化・分散化、オンライン化等の検討を提案致しました。
- 監査の簡略化・分散化
- 例えば書類チェックなどは毎回同じものを書面で確認するのみで、現場でする必要はないのではないかと考えます。場合によっては役所に園スタッフがお持ちしたり事前に提出して、一通りチェックするなども可能ではないでしょうか。
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- 保育室に見に行くべき行政職員は、現場チェックの人間だけに絞るなどの対応を検討ください。最低でも前日にPCR検査を受けた方のみでの訪問対応を求めます。
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- 緊急でない検査項目を絞るなど、時限的な対応もご検討ください。
- オンライン化
- チェックする書類の大半は、すでに役所に提出しているものであったり、ICT化されているにもかかわらずわざわざ監査用にプリントするものばかりです。印鑑の確認であれば、場所は必ずしも現場である必要はありません。認可保育所における施設調査書のようなものをオンラインで確認し、疑義があったり確認したい項目だけを箇条書きにして事前に通告いただくなどの形であれば、監査自体のオンライン化・時短化も可能なのではないかと考えます。
4.指導監査における原本主義(印鑑主義)の変更を要望
印鑑主義が保育の効率化の阻害要因になっています。
現在の実態としては、印鑑主義のため、全ての領収書、手紙、書類に園長決裁確認印をつくよう指導されていますが、シャチハタ印よりも電子決裁システムの方が正確で錯誤がなく、ごまかしもききません。不正防止の観点からも、現在の「園長印がついてあればよい」という指導自体が適切なのかも問われています。
役所から発行された書類の原本を確認に来るというのも本当に必要なプロセスなのでしょうか。役所内における発行済原本の控えの確認やナンバリングによる電子的管理はできないものでしょうか。
役所の運営費なども含めすべての書類に理事長印を求められ、その印を押すために役所で全施設長が出向かなくてはいけないなどの非効率が常態化しており、保育施設運営上の本質的ではない業務が多くなっております。
昨今、印鑑の廃止も含めたペーパレス化、ICT化が著しく進んでおり、保育現場も例外ではありません。国の行政現場における印鑑主義の改善に合わせ、保育の印鑑主義の変更を要望いたしました。
5.保護者の保育申請電子化、施設の入所調整電子化を要望
マイナンバーカードや、確定申告なども電子化されている昨今において、施設運営のみならず、保護者の書類も電子的にできるものが多く、認印や窓口提出などを簡略化は可能かと思います。保護者の保育申請電子化、施設の入所調整電子化を要望致しました。
6.居宅訪問型障害児保育の公定価格引き上げを要望
居宅訪問型保育事業(障害児向け)は、障害、疾病等で保育園に通うことができない医療的ケア児を1対1で保育する精度です。
国の公定価格では、障害児を保育する場合には約4万2千円/月額が加算されていますが、これでは事業は赤字続きで運営が成り立ちません。
なぜなら、医療的ケア児を保育するためには、専門のスタッフを採用し、たんの吸引や経管栄養等の医療的ケアができるよう、2ヶ月をかけて育成を行う必要があり、胃ろう・腸ろうなどを使用している医療的ケア児の場合は、保育士だけでなく看護師による見守りやバックアップが必要で、人手も労力もかかることから高コストにならざるを得ず、年間で3,500万程度の赤字となっています。
出典:内閣府HP 令和元年12月10日 第50回子ども子育て会議配付資料
この制度設計では、障害児に対して居宅訪問保育を提供する財務的インセンティブが働かず、事業者は一向に増えません。このままでは、医ケア児の保育の道も、医ケア児保護者の就労の道も断たれることになります。公定価格の引き上げ検討を要望致しました。
※子ども一人あたりの公定価格60,000円程度の引き上げがあれば、健全な財政のもと安定した運営が可能です。
▼(参考)子ども一人あたりの保育にかかる費用合計と赤字額
▼(参考)運営スタッフ人件費の内訳
以下の理由で、子ども一人あたりの運営スタッフを0.4人配置しています。
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- 園長がいないため、運営スタッフが保育担任の育成、保護者とのコミュニケーションや事務対応を行う
- 生まれてすぐに数ヶ月入院が必要なお子さんがほとんどで、病院退院時から在宅での生活に切り替えるために支援を行う保健師や訪問看護ステーションの看護師、療育施設など、多くの関係者によってお子さんと家族の生活が支えられており、保育を行うにあたり関係者とのカンファレンスを行ったり、地域の保育園との交流保育の実施など、多くの対応が必要となる
詳細は内閣府ホームページをご覧ください。
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【報告】内閣府「子ども・子育て会議(第52回)」駒崎理事長による提言のご紹介
6/26に開催された内閣府「子ども・子育て会議(第52回)」における、小規模保育に関する駒崎理事長の提言をご紹介いたします。
1.シッター等、保育者の性犯罪歴チェックの仕組み導入を提案
今年度に入り、大手ベビーシッターマッチングアプリの登録シッターが性犯罪容疑で立て続けに2人も逮捕されました。1人の性犯罪者は、平均380人の被害者を生んでいるという研究もあり、被害に遭っても親にも言えず、心にトラウマを抱えてしまっている子どもたちが多く存在すると思われます。
海外では、子どもを性犯罪などから守るための仕組みが導入されています。
例えば、イギリスでは、子どもと直接関わる保育士やベビーシッターなどとして働くためには、DBS(Disclosure and Barring Service)という政府部局が発行する犯罪歴証明書が必要です。
雇用者である保育所やベビーシッター事業者は、この証明書により、性犯罪などの犯罪歴がないかチェックした上で採用することができます。ベビーシッター等の保育者による性犯罪がこれ以上繰り返されないように、「性犯罪歴照会システム」(日本版DBS)を早急に導入していただきたいと考えます。
内閣府はベビーシッター補助の対象事業者が事故等を起こした際に、是正勧告をし、是正がなかった場合に対象から除外する等のルール作りを要望いたしました。
2.所得税法第9条に定められる「非課税対象」に「保育費用」の追加を要望
所得税法は第9条において課税がされない例外規定を設けており、学費関係や障害者給付などについて課税が免除されていますが、「保育費用」は対象外です。平成23年に成立した子ども子育て支援法などにおいて、「保育にかかる費用は非課税とする」旨の文言が入りましたが、これは内閣府の事業にのみ適用され、地方自治体が行う施策は対象外となっています。
【子ども子育て支援法】
東京都が共働き世帯を応援する施策として実施している「東京都ベビーシッター利用支援制度」では、
利用者への助成金が、その利用者の所得扱いになって課税されています。
↑東京都福祉保健局HP ベビーシッター利用支援制度の説明より
↑東京都福祉保健局HP ベビーシッター利用支援制度「令和2年度利用約款」
利用者が幅広い選択肢の中から子育てと仕事を両立するという環境を後押しするべきと考え、各自治体が工夫して創設した事業において「利用者が受けた助成に所得税がかかってしまう」という状況の是正を要望いたしました。
3.居宅訪問型保育事業に「障害児保育加算」を適用してください
居宅訪問型保育事業(障害児向け)は、障害、疾病等で集団保育が著しく困難であると認められる児童等を対象とした制度です。障害、疾病等のあるお子さんをお預かりする場合、専門のスタッフを採用し、医療的ケアの手技ができるよう育成を行う必要があります。このため、都市部(東京都豊島区、江東区、杉並区、渋谷区等)で待機児童対策として行われている居宅訪問型保育事業よりも、多くの費用がかかりますが、現状は「連携施設加算」のみでしか公定価格に差がない制度となっています。
同じ地域型の小規模保育事業には「障害児保育加算」が存在し、特別な支援が必要な利用子どもの単価に加算される仕組みが存在します。
今年度より千代田区では障害児を預かる居宅訪問型保育事業に対して「障害児等対応加算」が新設されました。同様の仕組みを居宅訪問型保育事業(障害児向け)に追加する等、公定価格の見直しを求めました。
4.アウトリーチ型の子育て支援サービスの充実に向けて、ニーズ・課題の実態調査を提案
新型コロナウイルス感染問題は、社会に大きな影響をもたらしており、特に、子どもと子育て中の人びとに様々な変化や課題が現れています。緊急事態宣言が発令され、保育の利用自粛が続く中、多くの親子が家に閉じこもらざるを得なくなりました。
その結果、児童虐待のリスクが高まり、小規模保育の現場でも、気になる子ども・保護者への声かけなど、保育ソーシャルワークの観点から取り組みを続けています。
一方、育児支援ヘルパー、養育支援ヘルパー、ひとり親支援ヘルパー、またいくつかの自治体で取り組まれている産前産後支援ヘルパーなどの訪問型支援については、緊急事態宣言が発令された期間においても、必要とされる家庭に対しヘルパーは細心の注意を払いながら対応しました。
施設型保育の利用自粛が続く中での最後の支援の砦となって、各種子育て支援ヘルパー派遣事業は継続されています。一方で対応できる事業者の少なさ、人材確保の課題は存在します。
子ども・子育て会議では、すでに子ども子育て支援計画の新たな5年をスタートする年ではありますが、今般の新型コロナウイルス感染問題を機に起こっている、子ども・子育て支援に関する課題をとらえ、より効果的な計画を策定するため、「アウトリーチ型の子育て支援に関する実態調査(利用者およびサービス提供者を対象)」の実施を提案いたしました。
5.公定価格の土曜減算の閉所に関する具体的な通知を出してください
保育所等を土曜日に閉所する場合の減算調整について、閉所日数に応じて段階的に減算する仕組みに見直されましたが、自治体により閉所の解釈にばらつきが見られる状況があります。
利用希望がないといった理由により土曜日を閉所する場合は減算となりますが、例えば利用希望があったが直前にキャンセルとなった場合も、利用者がいないという理由で減算する自治体があります。
小規模保育では、そもそもの土曜利用希望者が少なめです。例えば1人の子どもに対応するため、予め保育士2人、調理1人を配置するシフトを組みます。しかし、直前のキャンセルで利用がなくなっても開所する必要があるため、人件費が発生してしまいます。
利用者がいるかいないかに関わらず、利用希望が入ったかどうかで開所・閉所の判断をして頂く運用とする通知の発出を依頼しました。
6.公定価格加算項目のうち、「利用実績によって」加算額を算定する項目へのコロナ対応の補償を全般的とするよう要望
コロナによって登園自粛を求めたことによる影響として、公定価格加算項目のうち、「利用実績によって」加算額を算定する項目への補償が全般的にされていません。
報道や公式回答では、公定価格は満額補償されているので保育士への給与をはじめ、事業者が100%給与を保障するべきという議論がされているところではありますが、実際には減収が見込まれております。
特に、一時預かり、幼稚園型預かり保育、延長保育や病児保育、ひろば事業などの実績に基づく評価については積極的に地域の子育て支援に尽力してきた法人や、規模が小さい小規模保育所においては、少しの加算減でも、運営費上に比率を考えると影響が大きく、規模の大きな認定こども園などでも、実績値の大きな法人は金額が甚大です。
支出のほぼすべては人件費のため、100%を保障するように報道されるのであれば、やはり見込まれていた利用者数(例えば昨年度実績や定員等での酌量)に見合う補償ないし、みなし実績とする必要があると考えます。公定価格加算項目のうち、「利用実績によって」加算額を算定する項目への補償を全般的としていただけるよう依頼いたしました。
7.保育所や学童保育の職員への慰労金支給を要望
緊急事態宣言下、新型コロナウイルス感染防止のため、学校は休校措置を取りましたが、保育所や学童保育は、医療従事者や社会の機能を維持するために就業継続が必要な方々の子ども等を預かるため、開所していました。
令和2年度二次補正予算では、医療機関の医療従事者及び職員に対しては、感染リスクと厳しい環境の下で、相当程度心身に負担がかかる中、強い使命感を持って、業務に従事していることから、慰労金が支払われることになりました。
また、介護施設・事業所に勤務する職員に対しても、新型コロナウイルスの感染防止対策を講じながら介護サービスの継続に努めたことから、慰労金が支払われることになりました。
一方、保育所や学童保育の職員は、自らの感染リスクを感じながら、子どもたちに絶対に感染させないように細心の注意を払って、懸命に保育サービスを継続していたにも関わらず、慰労金が支払われないのは公平性に欠けます。
「クラスターの発生率は、他の福祉施設に比べると低く、死亡例も少なくて軽症者が多い」とのことですが、実際クラスターが発生していても子どもは無症状、軽症、もしくはみずから体調不良を訴えることができません。見た目や検温だけでは分からないこともあり、その中で保育従事者は介護従事者同等の感染リスクにさらされています。介護も保育も重症化リスクは従事者の属性次第であり、なんら変わりありません。
福岡市、大阪府摂津市には、保育従事者の感染リスクを理解いただき、独自に慰労金を支給している事例があります。一部自治体にとどまらず全国で保育所や学童保育の職員への慰労金支給を要望致しました。
8.ひろば事業などの実施方法としてオンラインでの実施も実績として計上できることについて、自治体向けQ&Aの拡充を依頼
コロナ対応により、保育や子育て支援の取り組みが多様化しています。特に、ICT技術を使ったオンライン保育や、オンライン会議の仕組みを使った子育て支援のイベント開催などが増えております。保育事業者も工夫を凝らしてソーシャルディスタンスを取りながらの子育て支援に取り組み始めていると言えるでしょう。
一方で、一部の自治体においてはオンラインでの子育て支援に対し、「ひろば事業」などの実績や企画として認めない例や、「オンラインは行政として推奨していない。公園などで2mの距離を置いて開催するなど考えるように」と指導している例なども散見されます。
我々保育現場としては、ICTを活用した取組については、コロナ感染のリスクを抑えながら人のつながりを維持することに非常に有効と考えており、むしろ推奨されることと考えています。ひろば事業などの実施方法としてオンラインでの実施も実績として計上できることについて、自治体向けQ&Aで示してもらえるよう依頼しました。
9.コロナの影響による失業者に対し、保育認定の延長を柔軟にできるように自治体への通知発出を依頼
コロナの影響によって失業者が増大を始めており、更なる深刻化も予想されています。雇用情勢は不透明なままであり、保育所等の保護者の中にも失業をはじめ大きな不安を抱えている方も増えてきました。
昨年度の、「保育新制度5年目の見直し」において、改めて求職事由による認定は90日という原則が確認されており、延長も慎重にするよう指示されています。現在の情勢を鑑み、今年度の認定に関して猶予期間を長めにとっていただくことなどの配慮を行うことを各自治体に通知していただくことを要望しました。
詳細は内閣府ホームページをご覧ください。
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