【報告】令和6年度 こども家庭庁の審議会での提言のご紹介
令和6年度、駒崎理事がこども家庭庁の下記審議会に参加し、提言した内容の一部をご紹介します。
●子ども・子育て支援等分科会(第6~9回)
●こども誰でも通園制度の制度化、本格実施に向けた検討会(第1~4回)
●保育人材確保懇談会(第2回)
1.こども誰でも通園制度について
令和6年6月に成立した「こども誰でも通園制度」について、その詳細が話し合われ、弊会からも提言をしました。
(1)補助単価
こどもひとりあたり一律1時間あたり850円とされていた単価について改善を求めてきました。また、制度の安定的な運用のため、1時間あたりの利用に紐づかないベースの運営費の補助を求めてきました。
【課題】「1時間あたり」の補助だけでは事業者は安定した運営ができず、こども誰でも通園制度の実施を諦めてしまいます。
【要望】加算をもうける、ベースとなる運営費を補助するなど少なくとも公定価格と同等の収入を得られる仕組みにしてください。
(2024年10月30日第3回検討会構成員提出資料より)
その結果、12月27日に示されたこども家庭庁令和7年度予算案において
◎障害児(400円)に加え、医療的ケア児(2400円)・要支援家庭(400円)に加算が措置されました。
◎年齢ごとの単価が変更になりました。(0歳1,300円、1歳1,100円、2歳900円)
(資料2 令和7年度こども家庭庁当初予算案(参考資料)(PDF/7.4MB) より)
補助単価は当初より増額となりましたが、安定的な運営のためのベースとなる補助については、今後も要望していきます。
(2)居宅訪問型保育(医ケア児・障害児等への対応)
【課題】現時点(※令和6年9月)で、居宅訪問型保育は、こども誰でも通園制度の対象となっていません。フローレンス実施の障害児・医療的ケア児の保護者アンケートでは9割が「就労の有無を問わない定期的な保育」を望んでおり※、居宅訪問型保育は、親子だけの閉塞した時間・空間に「保育のプロ」が入ることで、遊びや刺激によってこどもの育ちを支えることができると考えます。
(※認定NPO法人フローレンス「こども誰でも通園制度(仮称)の課題・ニーズについて全国の障害児・医療的ケア児の家族149人に調査しました」(2023年))
【要望】「こども誰でも通園制度」は、すべてのこどもを対象にした制度です。だれも置き去りにしないよう、居宅訪問型保育を対象としてください。
(2024年9月26日第2回検討会構成員提出資料より)
◎保育従事者を「居宅に派遣する運用」が可能になりました
(こども誰でも通園制度の制度化、本格実施に向けた検討会における取りまとめ(PDF/350KB)より)
運用上、「こども誰でも通園制度」の対象となる園から、保育従事者の派遣を認める。しかし、「居宅訪問型保育事業」は引き続き「こども誰でも通園制度」の対象外。ということになります。実際に利用者のニーズに合った制度として運用していけるのか、ひきつづき注目し、要望していきます。
また、居宅訪問型保育に限らない、通園が難しいこどもへの支援策も要望しています。
【課題】
(1)家族の事情によって送迎が難しい場合
こども本人に障がいや疾患がなくとも、保護者に慢性的な疾患があったり、疾患や障害により外出の難しいきょうだいがいる場合、保護者が外出が難しかったり、障害のあるこどものケアから離れられないことがあります。
(2)こども本人に医療的ケアがある場合
未就学のこどもの場合、通園、通所についての移動支援制度がなく、基本的に保護者が担うのが現状です。
【要望】
登園を希望しているにもかかわらず、既存の支援では移動手段がないために、登園が叶わないおそれがあるこどもも、「こども誰でも通園制度」の利用につながるような仕組みの整備をお願いします。
(令和7年3月4日第9回 子ども・子育て支援等分科会構成員提出資料より)
(3)総合支援システム(要支援家庭への対応)
【課題】「こども誰でも通園制度総合支援システムのイメージ」が示されましたものの、要支援家庭の預かりの際に必要な、事業所と市区町村の連携の記載がありません。要支援家庭を考慮に入れず、利用者の決定方法や利用申請ルートが全国で固定化されると必要な支援が届かないおそれもあります。
【要望】事業者と市区町村の連携が可能となる、予約システムにしてください。
例
①利用者の決定方法:先着順ではなく要支援家庭等を受け入れる枠を確保できる仕組みが必要
②利用申請ルート:行政や園が要支援家庭を見つけた際に、申請を代行できる仕組みが必要
(2024年9月26日第2回検討会構成員提出資料より)
◎要支援家庭への代理予約、優先利用ができるようになる方針が示されました
(第3回検討会資料 資料5:総合支援システム(PDF/1.2MB)より)
(4)受け入れ可能年齢
現状、「0歳6ヶ月~満3歳」とされている受け入れ可能年齢について、変更を求めています。
【課題】0歳6ヶ月未満のこどもへ虐待等を未然に防ぐには、量・質の面から十分とは言い難い状況です。既存事業(通常保育、一時預かり、伴走型相談支援や産後ケア事業)と「こども誰でも通園制度」を併存させ、親、こども双方への重層的な支援とすることができないでしょうか。
【要望】0歳6ヶ月未満の場合は、親子通園や慣らし保育を条件として、受入可能な園だけでも、受け入れを認めてください。
(2024年12月26日第4回検討会構成員提出資料より)
この要望については、国の対応に変化はなく、今後も要望を続けていきます。
(5)利用時間
かねてからアンケート調査や、検討会でも「足りない」と指摘されていたこどもひとりあたりの利用時間10時間/月について、独自に拡充している自治体の事例を示し、国制度での拡充を求めてきました。
【課題】独自に利用時間を上乗せしている自治体の費用は、各自治体が負担しており自治体間の格差を広げています。
【要望】利用時間を上乗せしている自治体に、「追加補助」による支援をお願いします。
(2024年6月24日第1回検討会構成員提出資料より)
こちらの要望についても、国の対応に変化はなく、今後も要望を続けていきます。
2.そのほかの子育て政策について
主にこども子育て等支援分科会にて提言してきた内容になります。
(1)保育の多機能化
小規模保育協議会がこれまで訴えてきた「保育園多機能化」について、
◎令和6年度補正予算で過疎地の保育所の多機能化モデル事業ができました(新規)
(令和6年度こども家庭庁補正予算の施策集(令和6年12月17日)(PDF/3.7MB)より)
今後は過疎地以外でも実施が可能となるよう要望すると共に、具体例として福祉避難所としての活用を提言しています。
・保育園多機能化のための補助を過疎地域以外にも拡大してください
【課題】経営悪化による保育園の突然の閉園は、都市部でも起こっています。保育園が定員割れで潰れてしまっては地域の親子への支援ができません。
【要望】保育園を多機能化するための補助を、過疎地域以外にも拡大してください。
(2024年12月19日第8回子ども・子育て支援等分科会委員提出資料より)
・こどものための福祉避難所を増やすために、保育園多機能化の一貫として、保育園を福祉避難所にできるような制度を整えてください。
【課題】災害大国である日本において、避難所の環境改善は大きな課題です。特に乳幼児・妊産婦・障害児・医療的ケア児等、生活に特別な配慮が必要な人々(以下、要配慮者)とその家族は、生活環境が整っていなかったり、日常と異なる環境である避難所で長期間過ごすと、健康を害することがあります。こどもたちでも安心して過ごせる場所が必要です。
【要望】各地域にあり、日々こどもが過ごす場所として設計されている保育園は、地域のこどものための福祉避難所として最適です。身近な保育園が、緊急時にも利用できる福祉避難所となることで、地域の親子の安心安全を守ることにつながります。保育園を福祉避難所として活用する場合、その施設を維持するための補助制度(加算)を創設してください。
(2024年10月17日第7回子ども・子育て支援等分科会委員提出資料より)
(2)小規模保育の運営
小規模保育所のよりよい運営のために、以下の要望をしました。
・保育施設の情報公開における「ここdeサーチ」の課題を解消してください。
【課題】情報が不正確であるにも関わらず、施設側に編集権がなかったり、新制度施設や認可外などの公開項目の課題が散見されます。特に小規模保育所は運営費における賃借料補助や施設単位の補助の割合が増大しがちであり、人件費比率などが大型園と大きく乖離した数値が出る場合があります。
【要望】保育施設の情報公開において、正確で公平な施設情報を目指してください。特に、施設類型や規模、法人類型によって測定の基準が異なることに配慮した形での公表を求めます。保護者の判断材料として提供するのであれば、ミスリードになります。情報の正確性と公平性、類型による特性に配慮した提供をしてほしいと思います。
(2024年8月2日第6回子ども・子育て支援等分科会委員提出資料より)
・小規模保育事業で、一定の条件下で施設長の保育従事者との兼任を認めることで、こどもの安全を守りながら保育士の労働環境を改善してください。
【課題】定員19名以下の小規模保育事業では、早朝や夕方にこどもが1名という状況があります。正規職員が少ないことによる働き手の負担や、人手不足でパートの確保が難しいことも課題です。
【要望】小規模保育事業において、こどもが1人になる早朝や夕方に、保育士資格をもつ場合に限り、施設長の兼任を認めてください。
(2025年3月4日第9回子ども・子育て支援等分科会委員提出資料より)
・小規模保育事業で、1歳児配置加算の要件(3)を対象外とする例外を認め、園の配置改善を後押ししてください。
【課題】令和7年度予算案において「1歳児配置改善加算」が措置されました。1歳児の配置改善を進めてくださり、ありがとうございます。しかし、「 施設・事業所の職員の平均経験年数が10年以上」という条件を設けることは、職場環境改善を進めている施設・事業所に対し、特に小規模保育所において、適切ではありません。
【要望】小規模保育事業において、配置を改善し、職場環境改善や質の高い保育に取り組む意欲のある事業所から、機会を奪わないでください。1歳児配置加算の条件(3)について、平均の影響が大きい小規模保育事業や職員数が一定数以下の施設では、対象外としてください。
(2025年3月4日第9回子ども・子育て支援等分科会委員提出資料より)
・小規模保育事業にS型を創設することを提案します。
【課題】全国的な保育ニーズが減少傾向に転じる中、すべてのこどもに保育をうける権利を保証するためには、今後は地域ごとのより細かいニーズ(マイクロニーズ)に対応する、スピーディーな立ち上げと撤退が可能な保育形態が必要です。
【要望】そこで、小規模保育事業でも、既存の3類型(A~C型)の他に、定員2~9名で、施設要件にとらわれない新たな類型「小規模保育事業S型」を追加することを提案します。保育の質を担保するために、職員全員が保育士資格を持つこととします。
(2025年3月4日第9回子ども・子育て支援等分科会委員提出資料より)
(3)保育士等の処遇改善
保育士の処遇改善についてもより実効性のある内容となるよう提言しています。
・保育士等の処遇改善について2つの提言
(1)算定方法を「在園児数×単価」ではなく「定員×単価」にしてください。
【課題】基本分単価は、認可定員ではなく在園児数(実際に保育園に在籍しているこどもの数)をもとに計算されます。この算定方法では、定員割れしている施設においては処遇改善の効果が限定的になってしまいます。
【要望】処遇改善は、在園児数ではなく定員に連動する仕組みにしてください。
(2)処遇改善によって、認可保育園等の保育士と、それ以外で働く保育士の格差が広がらないようにしてください。
【課題】国の処遇改善等加算は公定価格を通じておこなわれ、施設型給付に基づく認定こども園、幼稚園、保育所等が対象です。一時預かり事業・病児保育事業・放課後児童クラブ等には、国の処遇改善の基本分単価等の引上げは適応されますが、処遇改善加算Ⅰ~Ⅲの部分は適応されず、同じ資格を持っていても、働く場所で格差が生じています。
【要望】保育士という専門性を持つ人材が、あらゆる子育て支援事業において役割を発揮するためにも、処遇改善によって、認可保育園で働く保育士と、それ以外の保育士の格差を広げない仕組みにしてください。
(2024年12月19日第8回子ども・子育て支援等分科会委員提出資料より)
弊会では、今後もすべてのこどもによりよい小規模保育の形を実現するため、政策提言をつづけていきます。
それぞれの提言について、詳細はこども家庭庁HPを御覧ください。
発言の様子はこども家庭庁のYouTubeでもご覧いただけます。
子ども・子育て支援等分科会
第9回(令和7年3月4日)
第8回(令和6年12月19日)
第7回(令和6年10月17日)
第6回 (令和6年8月2日)
こども誰でも通園制度の制度化、本格実施に向けた検討会
第4回(令和6年12月26日)
第3回(令和6年10月30日)
第2回(令和6年9月26日)
第1回(令和6年6月26日)
保育人材確保懇談会
第2回(令和6年11月29日)
【報告】こども家庭庁「子ども・子育て等支援分科会(第2回)」提言のご紹介
2023/10/12に開催されたこども家庭庁「子ども・子育て支援等分科会(第2回)」における、駒崎理事の提言をご紹介いたします。
◎こども誰でも通園制度に関する全国アンケート結果の共有
全国小規模保育協議会の会員であるフローレンスが実施した、「こども誰でも通園制度(仮称)」に関するアンケート調査結果(全国の保育事業者対象)の共有と、提言を行いました。
【共有】
◆1.保育事業者の約9割が「自由利用」よりも「定期利用」での受け入れを支持
「こども誰でも通園制度」の制度設計の大きな論点のひとつである利用形態について、保育事業所へ定期的にこどもが通園する「定期利用」と、一時預かりのように様々な利用頻度で通園する「自由利用」、どちらをより積極的に受け入れたいかを尋ねたところ、「定期利用」の受け入れを望む声が約9割という結果となりました。
◆2.こどもの育ちを第一に考えた場合の預かり頻度・時間は「週3日以上」6割、「1日3時間以上」9割
「定期利用の場合、こどもの育ちを第一に考えた際に、1人につき望ましい利用頻度・利用時間」を尋ねたところ、利用頻度については「週4日以上」26.7%、「週3日」32.8%と「週3日以上」が合わせて59.5%にのぼりました。また、1日あたりの利用時間については、「3~4時間」45.2%、「5~6時間」36.8%、「7~8時間」10.6%など、「3時間以上」の回答が9割を超えました。
◆3.「こども誰でも通園制度」へ期待する点は、在宅子育て家庭との接点創出
「こども誰でも通園制度に期待すること」を尋ねたところ、「在宅子育て家庭への支援ができる」59.0%、「より多くのこどもに支援が届けられる」38.3%と在宅子育て家庭と接点創出という福祉的な視点での期待が寄せられています。本制度の趣旨である「全てのこどもの育ちを応援し、こどもの良質な成育環境を整備する」ことに対して、前向きに捉えている保育事業者が多いことが伺えます。
◆4.「こども誰でも通園制度」で不安に感じる点は、「業務負荷」「事務負担増加」に加え、「要支援・要保護家庭の受け入れ」など
「こども誰でも通園制度に不安に感じていること」については、「保育士の業務負荷が増しそう」が84.4%と最多となり、次いで「事務負担が増えそう」66.7%、「こども誰でも通園児が園に慣れるのに時間がかかりそう」59.0%などが続きました。「要支援や要保護家庭等のリスクの高い家庭の受入れ依頼が行政から来そう・数が増えそう」は54.3%でした。
【要望】
「こども誰でも通園制度」の制度設計について、アンケートを活用し提言を行いました。
1)「定期利用」や「自由利用」などの利用形態について、保育事業者が選択できる仕組みにしてください
アンケート結果で定期利用の受け入れを望む声が9割あることを踏まえ、実際に運営する保育事業者が保育しやすい形態での受け入れができるよう、保育事業者が選択できる仕組みにしてほしいと提言しました。
2)月の利用時間は、自治体単位で加算できる仕組みにしてください
会議開催時点(23年10月)でこども家庭庁で検討されている案では、利用時間は「月10時間」が上限とされていました。しかしアンケートでは、利用頻度は「週3日以上」約6割、1日あたりの利用時間については「3時間以上」の回答が9割を超え、「月10時間」を大幅に超える結果となりました。
そこで、地域によって待機児童数や受け入れ体制が異なる状況も踏まえ、「月10時間」を基準とした上で、基礎自治体単位で利用時間を加算できる仕組みを提言しました。
※24年1月、こども家庭庁が2026年度の全国展開の際は「月10時間以上を検討している」ことを明らかにしました!
3)要支援・要保護家庭のこどもの預かりを促進できる仕組みも導入してください
「こども誰でも通園制度」によって通園が可能になる、保育の必要性認定がない家庭の中には、様々な事情を抱えた「要支援・要保護家庭」が含まれます。
こういった高リスク家庭の受け入れが促進される制度の提言を行うとともに、事業者が安心して保育ができるよう体制を整えてほしいと訴えました。
詳細はこども家庭庁ホームページをご覧ください。
子ども・子育て支援等分科会: こども家庭庁(リンク)
子ども・子育て支援等分科会(第2回)会議資料はこちら
【報告】通知により保育園の「子ども食堂」実施を後押し!保育園の多機能化で「地域おやこ園」推進へ
全国小規模保育協議会では、かねてから子ども・子育て会議等で、保育所で子ども食堂等の食支援が実施できるよう、ガイドラインを作成し、保育園の多機能化の推進を後押しするよう提言を重ねてまいりました。
その提言が実り、保育園で子ども食堂など地域に資する活動を行っても良いという通知が、9月7日、こども家庭庁などから全国の自治体などに出されました。
国と自治体で分かれる「目的外使用の禁止」の壁
全国小規模保育協議会では、保育園は就労している親のみが利用できる施設ではなく、地域の親子にも開いた「子どもと親のための包括的福祉拠点」として捉え直し、様々な機能を備えていく「地域おやこ園」を目指しています。
「保育所等の空きスペースを活用して、地域の子育て世帯等が集う場等を設ける」という国が定める保育所保育指針にならい、降園後の空き時間に地域の親子も利用できる子ども食堂を実施し、保護者の負担軽減のほか「孤独な子育て」解消にも役立てる取り組みを進めてきました。
しかし、自治体によっては保育園は保育以外のことは原則として行ってはいけないと考えが根強く、公立の保育園には「目的外使用の禁止」を管理規則で定めている自治体も存在していました。国は保育園を子ども食堂等に使うことを禁じているわけではありませんが、自治体から渋られたり「調味料は園利用分と子ども食堂分を分けて計上する」など厳しい運営を指示されることがあり、全国的な実施が進まない実情がありました。
そこで、全国小規模保育協議会では国に対して、「保育所で子ども食堂等がスムーズに運営できるよう、ガイドラインを作成し国が考え方を示してほしい」と提言してきました。
「保育所は地域の拠点」国の通知のポイントは
そして今回、全国の自治体などに通知が出されました。
「保育所等において地域づくりに資する取組を行う意義」として、次のように書かれています。
●地域において保育所等は、現に利用しているこどもや保護者だけではなく、かつて保育所等を利用していたこどもや地域住民、保育所等において勤務していた職員その他保育所等と連携して活動する地域の主体とも関わり合う存在である。
● そうした場において地域づくりに資する取組を行うことは、こども・子育て支援や生活困窮世帯に対する支援のみならず、高齢者、障害者その他の地域住民の交流拠点に発展することが期待されており、子育て世帯に限らない地域住民の居場所づくり、地域の賑わいの創出等の意味においても意義のあることであると考えられる。
● 特に人口減少地域においてこどもや子育て世帯その他の若い世代が集う場は貴重かつ重要なものであり、保育所等がその拠点となることは、保育所等の多機能化の一つの例である。
※通知「保育所等における子ども食堂等の地域づくりに資する取組の実施等について」
大きくポイントは二つあります。
①施設の業務時間外・休日利用OKと明記されたこと
施設等の業務時間外や休日を利用し、本来の事業に支障を及ぼさない範囲で一時的に子ども食堂等の実施のために保育所等の設備を使用する場合のほか、 保育の提供時間内であっても、令和3年通知1(2)の整理に基づき、定員に空きがある場合において、保育所等の運営に支障を及ぼさない範囲で子ども食堂等の実施のために保育所等の設備を一時的に使用する場合には、一時使用に該当するものであり、財産処分の手続は不要となるため、令和3年通知1(4)で示した取扱いも踏まえ適切な手続を行うこと。
②消耗品費、水道光熱費を園利用分と分けて経理処理しなくてOKと明記されたこと
保育所等において子ども食堂等を実施する際の消耗品費、水道光熱費等の経費について、子ども食堂等の取組の規模が本来の事業に支障を及ぼさない範囲である場合にあっては、保育所等の運営と子ども食堂等の実施とを区分して経理することを要しない。
この通知を受け、保育園での子ども食堂の実施に理解が深まり、実践する園とすべての親子が食をきっかけに繋がれる未来が見えてきました。
今後、小規模保育協議会の会員の園でも、保育園での子ども食堂が実施され、全国でも子ども食堂の事例が増えていくでしょう。
小規模保育協議会では、子ども食堂以外にも保育園を多機能化し、地域にひらいた存在になることを目指しています。これからも引き続き、実践と政策提言を重ねてまいります。
【報告】こども家庭庁主催の「第1回子ども・子育て支援等分科会」に出席致しました
8月1日にこども家庭庁で開催された、「第1回子ども・子育て支援等分科会」に小規模保育協議会・理事の駒崎が有識者として参加しました。
当会議は、有識者や地方公共団体、事業主代表・労働者代表、子育て当事者、子育て支援当事者等(子ども・子育て支援に関する事業に従事する者)が、子育て支援の政策プロセスなどに参画・関与することができる仕組みとして設置された「子ども・子育て会議」を引き継ぐもの。
今年4月のこども家庭庁創設に伴い「子ども・子育て支援等分科会」として初めて開催され、『子ども・子育て支援をめぐる課題として』を議題に互いに意見・情報交換や提言を行いました。
駒崎理事は、今年度から開始した国のモデル事業「こども誰でも通園制度」の制度設計などについて提言。実施する事業者として現場の声を伝えました。
詳細はこども家庭庁ホームページをご覧ください。
子ども・子育て支援等分科会: (リンク)
子ども・子育て会議: 子ども・子育て本部 – 内閣府(リンク)
【報告】内閣府「子ども・子育て会議(第64回)」提言のご紹介
2023/2/1に開催された内閣府「子ども・子育て会議(第64回)」における、駒崎理事の提言をご紹介いたします。
まず、昨年10月の「子ども・子育て会議」にて意見書を提出した「企業主導型保育園への医ケア児加算」が来年度の予算案に反映されたことについて、御礼を申し上げました。
これにより、企業主導型保育園が医ケア児預かりの体制を整え、より多くの医ケア児家庭が保育園を利用できるようになると期待されます。
引き続き、医ケア児以外の障害児の受け入れ加算についても、見直しを進めていただきたい、と併せてお伝えしました。
また、この会議冒頭で保育課長より、「保育所等における使用済みおむつの処分について」の資料説明が行われました。
保育士や保護者の負担軽減につながるとして、保育所等において使用済みおむつの処分を行うことを推奨するというもので、使用済おむつの持ち帰り廃止は、全国小規模保育協議会の上野代表理事がかねてから提言していた内容です。
こちらも事務連絡発出の御礼を申し上げました。
◎保育所の人員配置基準を再度見直してください
【背景】
子ども家庭庁の令和5年度当初予算
「比較的規模の大きな保育所(利用定員121人以上)(※)について、25:1の配置が実現可能となるよう、2人までの加配を可能とする(現行は保育所の規模にかかわらず1人。)拡充を行い、保育士の負担軽減、こどもの安心・安全な保育環境の整備を推進する。」
と、保育所の人員配置基準改善に向けて動いてくださりありがとうございました。
一方で、利用定員121人以上で対象となる保育所は日本において18%*1 程度しかありません。加えて、職員の平均経験年数(12年以上)等という条件も含めると該当の保育所がさらに少なくなると推測します。根本的な配置基準の改善には至っておりません。
*1 統計「社会福祉施設等調査 / 令和2年社会福祉施設等調査 個別表 施設票」より推計、NHK首都圏ナビ「“虐待や人手不足” 保育に関する来年度の予算案 現場や専門家は」
https://www.nhk.or.jp/shutoken/newsup/20221226c.html
【要望】
前回の子ども子育て会議でも提言いたしましたが、保育所の人員配置基準の見直しを今一度お願いいたします、と改めて提言しました。
===以下、前回2022年12月6日の意見書内容===
2022年11月に大阪府岸和田市で、保育所に送り届けるのを忘れられた2歳の女児が、父親の乗用車内で死亡したことを受け、小倉こども政策担当大臣は会見で「保育園の方で登園管理をしてくだされば救えた命だと思っている。園の責任は重い」と述べられました。
登園時の出欠確認を確実に行う、ふだんの登園時間を過ぎても子どもが来ない場合は保護者に電話で確認する等、園が定められた手順を遵守していれば、防げた事案であることは事実です。
しかし同時に、大臣は会見で、保育所などの現状について「かなり人繰りが大変で、ご苦労されているという認識だ。担当大臣として現場の人員に余裕が出るようしっかり要望して、少しでも現場の負担が軽減できるよう努力を続けたい」とも述べられました。
現在、日本の保育所で1人の保育士が見る児童数は、海外と比較しても多すぎであり、きめ細やかな保育を行える状況とは言えません。特に、3歳児配置改善加算は導入されたものの、人員配置基準として3歳児は1人の保育士が20人、4歳以上児は30人となっていて、目を行き届かせるのは非常に困難な児童数です。
人員配置基準(保育士1人当たりの年齢別児童数)
*2さらに、子ども子育て新制度施行後、保育の記録、保存書類の作成、会計処理財務諸表への対応、第三者評価、請求業務、各種契約業務、監査対応など事務処理が明らかに増大し、保育所の職員の負担は増すばかりになっています。
*2 (日本の人員配置基準について)「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準」第33条第2項
(海外の人員配置基準について)株式会社シード・プランニング「諸外国における保育の質の捉え方・示し方に関する研究会 (保育の質に関する基本的な考え方や具体的な捉え方・示し方に関する調査研究事業)報告書」(平成31年3月29日)
https://www.mhlw.go.jp/content/11907000/000533050.pdf
今後このような悲しい事故を起こさないためにも、保育現場の負担軽減が必要です。1人の保育士が見る児童数を少人数化し、安全で質の高い保育を提供できるように、人員配置基準の見直しを行ってください。
また、事務量増加に対する正規職員雇用補助や専門家に委託できる補助の創設、事務量を減らすための対行政書類の抜本的な簡素化、押印必要書類の削減、巡回指導や監査の改善も行ってください、と併せて要望しました。
◎事業者が行っている保育園や居宅型訪問保育への巡回を支援してください。
【背景】
静岡県裾野市で起きた保育士の虐待事件を皮切りに、全国で不適切保育の報告があがっています。
保育士の過重労働や園のマネジメント体制の問題など、原因は複数考えられますが、リスクマネジメントの観点からも、園に第三者の目を入れることが、不適切保育の防止に効果的だと考えられます。
また、保育士が日々の保育を振り返り、これから取り組もうとする保育について継続的にアドバイス・指導を受けることは、職員のスキルアップや保育の質の向上のためには欠かせません。
東京都では「東京都ベビーシッター利用支援事業」において、利用者が安心してベビーシッターを利用できる環境を整備するため、認定事業者の保育の質向上の取り組みを支援しています。
巡回支援を実施するために必要な人件費や、安心・安全のためのウェブカメラ設置に必要な経費に対する補助があります*3 。
*3 令和3年度ベビーシッター利用支援事業認定事業者に対する保育の質向上支援事業補助要綱
(参考)
【要望】
この【保育の質向上事業】をぜひ国の制度として導入してください、と要望しました。
令和5年度保育関係予算の中で、就業継続支援として「若手保育士や保育事業者等への巡回支援事業」を盛り込んでいただいていますが、保育の質向上を目的として、定期的かつ継続的に園を巡回し指導やアドバイスを行うスーパーバイザー等の雇用支援も導入してください。
また、障害や医療的ケアのあるお子さんを、研修を受けた医療従事者ではない保育スタッフがご自宅で保育するケースが多い「居宅訪問型保育事業」では、重大事故を防ぐための安全管理が必要です。スタッフの急な休みでも保育提供を止めない対策や、現場でのスタッフ指導・育成等に対応していくため、担任保育スタッフ以外の目線・支援が必要です。また健常児と異なり救急搬送等の緊急対応のリスクが高く看護視点での見守りも欠かせません。
しかし、上述のとおり、国の制度には事業者の行う巡回支援やウェブカメラ設置に対する補助や加算がありません。
特に1対1で保育を行う居宅訪問型保育には、東京都ベビーシッター利用支援事業同様に巡回支援やウェブカメラ等の導入への補助を強く要望しました。
◎企業主導型保育事業における、利用定員の1割以上を自社従業員枠にしなければいけないルールを見直してください。
【背景】
企業主導型保育事業実施者(保育事業者型事業の事業実施者を除く)は、施設の利用定員の1割(小数点以下切り上げ。以下同じ)以上を自社従業員枠の定員として設けなければならないこととなっています。
令和元年度までに企業主導型保育事業の助成を受けている施設については、令和4年度末までの経過措置としてこの定員設定は求められないこととなっていますが、令和5年4月以降はすべての事業者がこの設定を求められることとなります。
自社従業員枠の定員を1割以上設けなければならないこのルールは、多くの従業員を抱える設置事業者においてはそれほど大きな問題とはならないことが想定されますが、従業員数の比較的少ない設置事業者においては大きな障害となります。
自社従業員の利用が1割に満たない場合、保育定員の空きが常時発生することになり、提携企業枠や一般枠で保育ニーズが発生しても、このニーズに応えることができなくなり、保育園という社会的な資源が有効活用されないこととなってしまいます。
【要望】
企業主導型保育事業における利用定員の1割以上を自社従業員枠にしなければいけないルールの見直し、もしくは経過措置の継続を検討してください、と要望しました。
◎企業主導型保育事業の安定的かつ発展的な事業継続を目的とした、設置事業者を交えた定期的な議論の場を設定ください。
【背景】
企業主導型保育事業は、平成28年度の制度創設以降、政府の「子育て安心プラン」等に基づき、定員11万人分の受け皿整備に向けて取り組まれ、この定員11万人分の定員整備が令和4年度中に概ね達成されました。
全国的に待機児童数が減少している現状を鑑みると、企業主導型保育事業は、今後いかに安定的に事業継続を行うか、また企業主導型保育事業を「子育て支援」や「少子化対策」にいかに活用するかといった発展的な事業継続の議論が必要となることが想定されます。
企業主導型保育園を安定的に事業継続していくためには、設置事業者の健全な経営が大前提です。一方、設置事業者が健全な経営を行っていたとしても、制度そのものやその運用が非効率だと、事業者の財務的な疲弊や保育園(保育士)に過度な業務負担が課されるような事態を招きます。
企業主導型保育事業に関わる事業点検・評価の場として「企業主導型保育事業点検・評価委員会」が設置されており、定期的な評価点検が行われていますが、この委員会では安定的な事業継続の議論はなされているものの、発展的な事業継続の議論はなされていないのが現状です。
企業主導型保育事業の設置事業者の中には、新しい発想や、制度運用上の課題を解決するためのアイデアを持ちえた事業者がたくさん存在しますが、発展的な議論を行うための有効な場がありません。
【要望】
全国に約4,500か所ある企業主導型保育園をいかに有効活用していくかの議論や、安定的かつ発展的に事業継続を行うための新たな仕組みについての議論、制度運用上の課題をいかに解決していくかの議論を行っていく、設置事業者を交えた定期的な議論の場を設定してください、と要望しました。
◎認可外保育施設の職員も研修を受講できるよう、キャリアアップ研修のガイドラインを見直してください
【背景】
保育士等キャリアアップ研修は、職員のキャリアアップの仕組みを構築するとともに、一定の水準のもとでリーダー的職員を育成するためのすばらしい制度です。
しかしながら、現行ガイドライン(保育士等キャリアアップ研修ガイドライン 雇児保発0401第1号)では、対象者は「保育所等(子ども・子育て支援法に基づく特定教育・保育施設及び特定地域型保育事業をいう)の保育現場において役割を担うもの」と明記されており、認可外保育施設に勤務する職員は対象外と読み取れてしまいます。
ガイドラインには対象者に「当該役割を担うことが見込まれる者を含む」とも記載されており、現在認可外保育施設に勤務する職員でも対象外になるわけではないと考えられますが、自治体によっては申込みを受け付けてもらえなかったり、順番を後回しにするなどの対応を受けることがあります。
認可外施設の職員も認可施設と同じようにキャリアアップ研修が受講可能になれば、職員のスキルアップやモチベーションの向上にも繋がります。
【要望】
現行のガイドライン(保育士等キャリアアップ研修ガイドライン 雇児保発0401第1号)で対象の施設に認可外保育施設も明記してください。または認可外保育施設を排除しないよう、自治体向けに通知等を出してください、と要望しました。
詳細は内閣府ホームページをご覧ください。
子ども・子育て会議(第64回)会議資料はこちら
【報告】内閣府「子ども・子育て会議(第63回)」提言のご紹介
2022/12/8に開催された内閣府「子ども・子育て会議(第63回)」における、駒崎理事の提言をご紹介いたします。
◎保育士の柔軟な働き方を可能にし、保育人材確保を後押しして下さい。
令和4年4月の保育士の有効求人倍率は1.98倍で、全職種平均の1.17倍と比べると、依然高い水準で推移しています。保育園は慢性的に人手不足で、特に常勤保育士の採用難が続いています。さらにコロナ禍により、今まで以上に厳しい状況になっています。
その理由として、保育士の働き方が早朝や遅番勤務もあり家事育児との両立が困難であることなどが挙げられます。またコロナ禍では、在宅勤務などの柔軟な働き方ができない仕事が敬遠されるなどの実態があります。
一方、保育士登録されているが保育施設等で従事していない「潜在保育士」は、2018年時点で95万人*1おり、その数は年々増加しています。
*1 保育士の現状と主な取組(令和2年8月24日)P22 保育士の登録者数と従事者数の推移(https://www.mhlw.go.jp/content/11907000/000661531.pdf)
株式会社野村総合研究所による2018年の調査*2では、
・潜在保育士のうち約6割が今後保育士として働く意欲を持っていること
・就労意欲を持つ潜在保育士の3人に2人は、働く上で「勤務時間や勤務日など希望に合った働き方」を最も重視していること
がわかりました。
*2 潜在保育士の6割が保育士として就労を希望~「勤務時間や勤務日など希望に合った働き方」を最も重視~(https://www.nri.com/jp/news/newsrelease/lst/2018/cc/1003)
厚労省の調査*3でも、過去に保育士として就業した者が再就業する場合の希望条件として、「勤務時間」「勤務日数」が上位にきています。
*3 保育を取り巻く状況について P53 過去に保育士として就業した者が再就業する場合の希望条件(複数回答)(https://www.mhlw.go.jp/content/11907000/000784219.pdf)
常勤保育士を確保するためには、保育現場で、保育士のニーズに合わせた多様な働き方を選択できるようにする必要があります。
しかし、現在、常勤保育士の多様な働き方が認められていません。
厚労省では「1日6時間未満又は月20日未満勤務」の保育士を短時間勤務の保育士としています。よって、多くの自治体では、常勤保育士を「1日6時間以上又は月20日以上勤務」と解釈して運用しています。「1日8時間 週4日(月16日)」勤務する人がいた場合、「1日6時間 週5日(月20日)」の人よりも合計勤務時間は多くなるにも関わらず、前者は常勤保育士とみなされません。
今年10月には、大手保育事業者が週休3日(週4勤務)の正社員の導入を始めましたが、週休3日では常勤保育士の要件を満たさなくなることが課題となっています。
2022年の「骨太の方針」*4においても、多様な働き方の推進を目的とし「選択的週休3日制度」の普及を図ることが示されています。
*4 経済財政運営と改革の基本方針 2022(https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/cabinet/2022/2022_basicpolicies_ja.pdf)
保育業界においても、多様な働き方を推進し、保育人材の確保を後押しして下さいと要望しました。
例えば、自治体に向けて「常勤」の定義を改めるように以下のとおり通知を出してくださいと提言しました。
現在:1日6時間以上かつ週5日(月20日)以上
→変更後:月120時間以上
◎保育所で子ども食堂等が実施できるよう、ガイドラインを作成し、保育園の多機能化を推進して下さい。
保育所保育指針において、保育所は、通所している児童の保育を行うだけでなく「地域の子育て支援の拠点」としての役割を担うこと*5とされています。厚生労働省は、自治体に対し「多様な社会参加への支援に向けた地域資源の活用について(通知)*6」を発出し、福祉ニーズの多様化・複雑化、人口減少といった福祉分野を取り巻く状況が変化する中、包括的な支援を提供する仕組みを推進していくため、福祉サービス事業所等を活用することとしています。そして、その例として、「保育所等の空きスペースを活用して、地域の子育て世帯等が集う場等を設ける」ことを挙げています。
*5 保育所保育指針 第1章 1ー(1)ーウ(https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00010450&dataType=0&pageNo=1)
*6 多様な社会参加への支援に向けた地域資源の活用について(通知)P1,P9 (https://www.pref.fukuoka.lg.jp/uploaded/attachment/134594.pdf)
それにも関わらず、在園児の保育に関わること以外の活動に対し、自治体は、「目的外使用に該当する」として、保育所を通常の保育以外で利用することに懸念を示したり、厳密な別管理を求める等、保育園の多機能化を阻んでいます。
例えば、保育所はキッチンもあり、子どもにとって安全な環境もあることから、地域の孤立しがちな親子に対し、子ども食堂を行うのに大変適しています。実際に、某市において認定NPO法人フローレンスが「ほいくえん子ども食堂」を行ったところ、非常に反響があり、母子生活支援施設入居者を含む、地域の多くの親子にご利用いただいています。
しかし、別の自治体で同様に子ども食堂を実施しようとしたところ、保育所の運営に係る補助金の対象ではないという判断のもと、保育施設の調理室を使用することに懸念を示されたり、調味料や光熱費を保育園運営と厳密に分ける等の非効率な運用を求められています。
保育所が、在園児だけでなく地域に向けて開かれることで、孤独と孤立に陥りやすい無園児家庭等ともつながるきっかけになることが期待できます。
また、大半の保育所は、日曜日や土曜日夜は使われておらず、平日にも、使っていないスペースを抱える保育所は少なくありません。アイドリングしている保育所内スペースを、地域のNPOや習い事の先生、親グループ等に貸すことができれば、保育所がコミュニティの結節点になっていく未来が描けます。
地域の社会資源として保育所の活用を推進するため、ガイドラインを作成してください。上述の通知は、広く福祉サービス事業所の多機能化についての発信であり、自治体の認知も高くありません。保育所は様々な親子のための施設であり、入所しているこどもとその保護者のみならず地域のすべての子どものために活用すべきです。自治体が保育所の活用を前向きに検討できるよう、保育所の多機能化に特化したガイドラインを作成してください、と要望しました。
◎保育所の人員配置基準を見直してください
2022年11月に大阪府岸和田市で、保育所に送り届けるのを忘れられた2歳の女児が、父親の乗用車内で死亡したことを受け、小倉こども政策担当大臣は会見で「保育園の方で登園管理をしてくだされば救えた命だと思っている。園の責任は重い」と述べられました。
登園時の出欠確認を確実に行う、ふだんの登園時間を過ぎても子どもが来ない場合は保護者に電話で確認する等、園が定められた手順を遵守していれば、防げた事案であることは事実です。
しかし同時に、大臣は会見で、保育所などの現状について「かなり人繰りが大変で、ご苦労されているという認識だ。担当大臣として現場の人員に余裕が出るようしっかり要望して、少しでも現場の負担が軽減できるよう努力を続けたい」とも述べられました。
現在、日本の保育所で1人の保育士が見る児童数は、海外と比較しても多すぎであり、きめ細やかな保育を行える状況とは言えません。特に、3歳児配置改善加算は導入されたものの、人員配置基準として3歳児は1人の保育士が20人、4歳以上児は30人となっていて、目を行き届かせるのは非常に困難な児童数です。
人員配置基準(保育士1人当たりの年齢別児童数)
*7さらに、子ども子育て新制度施行後、保育の記録、保存書類の作成、会計処理財務諸表への対応、第三者評価、請求業務、各種契約業務、監査対応など事務処理が明らかに増大し、保育所の職員の負担は増すばかりになっています。
*7 (日本の人員配置基準について)「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準」第33条第2項
(海外の人員配置基準について)株式会社シード・プランニング「諸外国における保育の質の捉え方・示し方に関する研究会 (保育の質に関する基本的な考え方や具体的な捉え方・示し方に関する調査研究事業) 報告書」(平成31年3月29日)
https://www.mhlw.go.jp/content/11907000/000533050.pdf
今後このような悲しい事故を起こさないためにも、保育現場の負担軽減が必要です。1人の保育士が見る児童数を少人数化し、安全で質の高い保育を提供できるように、人員配置基準の見直しを行ってください、と要望しました。
また、事務量増加に対する正規職員雇用補助や専門家に委託できる補助の創設、事務量を減らすための対行政書類の抜本的な簡素化、押印必要書類の削減、巡回指導や監査の改善も行ってください、ということも併せて要望しました。
詳細は内閣府ホームページをご覧ください。
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【報告】内閣府「子ども・子育て会議(第62回)」提言のご紹介
2022/10/4に開催された内閣府「子ども・子育て会議(第62回)」における、駒崎理事の提言をご紹介いたします。
◎通園バスへの「置き去り防止装置」の導入・運用コストを全額公費負担にしてください
通園バスへの「置き去り防止装置」の設置を義務化していただき、ありがとうございます。しかし、導入・運用にかかる費用が事業者負担となる場合、園運営を圧迫し、導入が遅れる恐れがあります。
通園バス置き去り事故の再発を防ぐため、以下の3点を要望いたします。
1.「置き去り防止装置」導入・運用にかかるコストを全額公費負担としてください
国として、安全管理のために有効と考える装置を決め、その装置の導入及び運用にかかるコストを全額公費負担していただきたいです。また、1施設あたりではなく、バス1台あたりで計算した補助額にしていただきたいです。全額公費負担がなければ、ただでさえ経済的に厳しい園運営を圧迫することになり、導入が進みません。
2.現状非常に支援の薄い通園バス運行への公的支援を強化してください
そもそも、通園バスの運行は園にとっては大きな負担であるにも関わらず、公的支援はわずかしかありません。このことが、少ない人数でとり回さなければならず、事故のリスクを上げてしまう遠因となっています。通園バス運行への公的支援を強化してください。
3.障害児用施設も対象にしてください
保育所、幼稚園、認定こども園及び特別支援学校幼稚部だけではなく、障害児用施設(障害児通所施設、特別支援学校等)も対象にしてください。自分で判断したり、身動きをすることが困難な障害児の置き去りも発生しえます。
◎企業主導型保育の障害児加算を充実させてください
しかしながら、ある県に設置された医療的ケア児支援センターによると、相談のほとんどは就園に関することであり、保育園の就園は大きな課題となっています。
一方、内閣府の「企業主導型保育事業を行う施設における医療的ケアの必要な児童の預かり実態について」によると
医療的ケア児の入所相談を受けたことがあると回答した企業主導型保育施設のうち、実際に医療的ケア児を「受け入れたことがある」と回答したのは20.4%にとどまっています。
医療的ケア児の受入れにあたり課題と感じる点として、以下が挙げられています。
「医療的ケア児や医療的ケアについての基礎知識がない」(66.3%)
「事故発生時等のリスクへの対応」(60.1%)
「医療的ケアへの対応が困難であるため、保育従事者のマンパワーが
不足する」(57.5%)
「看護師等の確保が難しい」(56.4%)
「受け入れ体制を整備するための資金が不足している」(41.0%)
看護師を加配できれば、上記に挙げた課題は改善が期待できます。
認可保育所では、保育所が2人以上の看護師を配置する際の補助金が年1058万円となっています。
企業主導型保育にも同等の補助金の導入をお願いします。
また、企業主導型の現行の障害児加算の仕組みでは「障害児2人」に対する職員配置への加算となっていて、障害児1名をお預かりしている場合は加算認定されません。
1名でも加算認定されるように変更をお願いします。
◎居宅訪問型保育事業に「障害児対応加算」を新設してください
現状、居宅訪問型保育事業には障害児対応加算はなく、健常児でも障害児でも対象者による保育料の違いがありません(施設連携加算として、健常児より障害児の方が18,090円(217,080円/年)高く支給されます)。
しかし、障害児保育では、急変が起こるなど安全体制の確保が何よりも重要であり、普段からの巡回やアドバイス体制(保育リーダー/巡回訪問費など)、保育とは異なる看護や療育の専門性(保育アドバイザー/看護アドバイザーなど)、医療従事者ではない保育スタッフの初期研修(1-2ヶ月間)や継続育成、が必要です。
また、障害児においては担任交代も容易ではなく、真の意味で保育者と児の「1対1保育」となる。集団保育同様に複数の保育者が関わり、複数の視点が入ることは障害児においても大事であることから、担任一人が児二人をみることで、実質担任2人で一人を見られる複数担任体制に現在移行しています。しかし、複数担任体制を実施するにあたり、安全の観点で、「担任同士の情報共有や保育方針の議論」の時間が必要であり、更に人員工数が必要となっています。
千葉県や神奈川県、狛江市、三鷹市などの事業者や自治体からも「居宅保育事業実施の相談」が来たものの、財務上事業が成り立たず参入できず断念している状況です。フローレンスでは、訪問看護と組み合わせたり、寄付を募ることで、会社として事業を成り立たせています。しかし、居宅保育事業と訪問看護事業のみでは大きく赤字(約3500万)[*1]の状況であり、撤退検討が必要になっています。
*1 内閣府HP 令和元年12月10日 第50回子ども子育て会議配付資料 参考資料2より
全国の医療的ケア児は約1.9万人[*2]いるとされ、そのうち未就学児は0.52万人いると推定[*3]されます。更に医療的ケア児数は医療の発達に伴い年間約750人のペースで増加[*4]しており、今後も医療的ケア児の保育ニーズも高まっていくと考えられます。
*2 厚生労働省社会・援護局、令和元年10月1日発表資料「医療的ケア児に関する施策について」より
*3 児童に占める未就学児の割合を27.5%とし、年代別ごとの医療的ケア児比率に差がないとした場合。総務省統計局「人口推計(2018年(平成30年)10月1日現在)結果の要約 参考表1:年齢(5歳階級)別人口―総人口,日本人人口(各月1日現在)」および「統計トピックスNo.109 我が国のこどもの数 -「こどもの日」にちなんで- 表2:男女、年齢3歳階級別こどもの数」より
*4 厚生労働科学研究費補助金(障害者政策総合研究事業)分担研究報告書 平成30年度医療的ケア児に対する実態調査と医療・福祉・保健・教育等の連携に関する研究 分担研究課題(1-2):「医療的ケア児数の年次推移」図2より
全国の集団保育園での受け入れも順次進んでいますが、居宅訪問型保育は【集団園へ入園可能なラインまでの児の成長支援/集団への移行支援機能】も担っています(事業開始から約6年間で、①96名のお預かり、②現在も32名が利用中、③約半数の39名を通常の集団保育園に転園させてきた実績があります)。
2021年9月に施行された「医療的ケア児支援法」においては、医療的ケア児を育てる家族の負担を軽減し、医療的ケア児の健やかな成長と家族の離職防止を目指すことが国や地方自治体の責務となります。障害福祉分野では施行に伴う検討や改定が進んでいますが、保育分野ではまだまだといえる状況です。
居宅訪問型保育事業の公定価格の見直しとともに、障害児加算の検討を行い、医療的ケア児の保育や保護者の就労の道を守ってください。
詳細は内閣府ホームページをご覧ください。
子ども・子育て会議(第62回)会議資料はこちら
【報告】内閣府「子ども・子育て会議(第57回)」提言のご紹介
6/18に開催された内閣府「子ども・子育て会議(第57回)」における、駒崎理事長の提言をご紹介いたします。
1.「こども基金」の創設を提言
現在、政府内で「こども庁」創設に向けた議論が進められています。子どもを中心に据えた政策の推進のために、子ども関連政策を所管する関係府省庁の縦割りをなくすことは賛成です。
ただし、単に関係府省庁の人員と予算を1か所に集めるだけでは、有効な政策を打ち出すことは困難です。「こども庁」創設は、必要な人員と予算の投入とセットで行われる必要があります。
そこで、「こども基金」の創設を提案しました。今回、「こども庁」を創設する目的は、子育て政策の強化ですから、組織再編とセットで、子育て分野に集中的に予算を投下し、実行力のある政策を打ち出せるように、新たな「こども基金」の創設を提言しました。
(注)政府は、平成21年度に創設した「子育て支援対策臨時特例交付金(都道府県が設置する「安心こども基金」)」により、待機児童解消のための保育所整備等を実施し、一定の効果を上げました。
2.地域の全ての子どもたちに開かれた保育園に
保育園は、利用児童のためだけではなく、地域の子育て家庭のための施設であるべきだと考えます。待機児童問題が解消しつつある今、地域に開かれた「あたらしい保育園」へ移行できるように制度改正等が必要です。
1)保育の必要性認定を廃止し「国民皆保育」を目指してください。
法令上※、保育の必要性認定が受けられるのは、就労、妊娠・出産、保護者の疾病・障害等の事由により、家庭において必要な保育を受けることが困難な子どもに限定されています。
※子ども・子育て支援法第19条第1項第2号・第3号、子ども・子育て支援法施行規則第1条の5
しかし、保育を必要としているのは、必要性認定を受けられる家庭だけではありません。
週1〜週6まで、その家庭に応じたグラデーショナルな利用を可能とし、どのような家庭でも地域の保育園を利用できるように、法令改正をと要望しました。
2)3歳以上児の保育園の義務化を
保育所・幼稚園に通園することで、子ども達の虐待リスクを低下させたり、自閉症やADHD等の発達障害を早期に発見し、早期に支援に繋げていくことができます。
しかし、現状も保育園にも幼稚園にも行っていない3歳以上の子どもたちが5万人いることがわかります。
出典:厚生労働省「地域における保育所・保育士等の在り方に関する検討会(第1回)」資料3
https://www.mhlw.go.jp/content/11907000/000784219.pdf
保育園にも幼稚園にも行けず、家庭の経済力や保護者の意識によって左右されてしまう子ども達は、最も脆弱性 が高い層であると思います
3歳以上児の義務教育化を実現し、こうした子ども達を早期に社会的支援の網の目で支えていくことが必要であると提言しました。
3)保育園で福祉サービスをできるように通知を出してください。
保育園において、子ども食堂等の福祉サービスを行えれば、地域の子育て家庭の支援になります。
しかし、都内では、保育園で福祉サービスを実施することが認められていません。
法令で禁じられていない保育園での福祉サービスを、自治体の運用で認めないこととするのは適切ではありません。厚生労働省は国としては禁じていないというスタンスですが、地域の福祉に資するサービスであれば、積極的に保育園を活用できるよう、国から通知を発出していただきたいと要望しました。
3.「保育所等における要支援児童等対応推進事業」(保育ソーシャルワーク関連事業)について
当該事業は、地域の基幹保育所に「地域連携推進員」(保育士、社会福祉士、精神保健福祉士等)を配置し、他の保育所等への巡回支援、保護者への相談支援等を実施するものです。これにより、保育所等における要支援児童等の対応や関係機関との連携強化、運営の円滑化を図ることとしています。
1)対象児童数に応じた補助基準額にしてください。
現在、基幹保育所1か所あたり約460万円が補助されますが、基幹保育所数に対し、対象児童数が多いと赤字運営になります。
安定的に事業運営ができるように、対象児童の見込み数に応じた補助基準額としてもらえるよう要望しました。
2)自治体・地域連携推進員・保育園・関係機関間のクラウドでの情報共有を推進してください。
中野区では、クラウド活用やメールでの書類のやりとりは認められておらず、全て書留での発送業務が必要となっています。紙でのやりとりでは、紛失などによる情報漏えいリスクが高い上、費用・時間のロスが多く、事業をスムーズに実施することが困難です。
児童の情報をより安全に管理し、要支援家庭に対して、自治体・保育園・関係機関がそれぞれ迅速に必要な対応がとれるように、クラウドを活用した情報共有が進むよう、通知等により国から後押ししていただきたいと要望しました。
3)保育スタッフが要支援児童等の対応を適切に行うための研修や意見交換会の運営費を補助してください。
専門知識を有する地域連携推進員が、要支援児童それぞれの対応方法について保育スタッフに助言することは重要です。しかし、限られた数の地域連携推進員の助言だけでは、要支援児童等の適切な対応が十分に行えません。
保育所等で要支援児童等の対応をより適切にできるようになるためには、
①保育スタッフ自身がそのノウハウを身に付けるための研修機会の提供
②他の保育所等の保育スタッフとの意見交換会の実施(他園の事例から学ぶ)
が欠かせないと考えます。
そのための、保育スタッフの対応スキルを底上げするために必要な研修等の運営費の補助を要望しました。
4.土曜減算ルールについて、土曜利用の実態や将来的な保育園のあり方にあわせた見直しを提言
小規模保育事業は定員19名以下のため、そもそも土曜保育を希望する利用者が少なく、認可保育所と比べて預かり人数が0人になり、減算対象となる確率が高めです。そのため、毎月給付費が安定せず、小規模保育の経営に大きな影響が発生しています。
直前キャンセルについては、減算しないということが国の通知にて示されておりますが、減算対象とする自治体があると聞いています。運用の徹底を図っていただくよう対応を要望しました。
また、多様な保育ニーズの受け皿として一時保育事業を行う保育園も徐々に増えてきています。一時保育の予約が入っている場合には、例え在園児の利用がなくても、開園して子どもを預かっているとみなし、減算対象としない運用を要望しました。
そして、今後の保育園のあり方として、地域に根差した子育て支援や保育の質向上を考えていく必要があると考えます。土曜日に園職員が地域向けの子育て支援活動や、園内の環境整備・研修等による保育の質向上を目的とした活動により開園した場合には、在園児の利用が0人であっても土曜減算の対象外とするように検討を要望しました。
5.特区小規模保育の全国化を提言
大阪府堺市等で行われている3〜5歳の特区小規模保育ですが、当該自治体の方々にヒアリングを行うと、有用性を感じていらっしゃり、今後についても期待度が高いことが伺えます。
堺市の小規模保育の入所率データを見ると、卒園後の入園先として3~5歳の特区小規模保育をもつ小規模保育の入所率が105.3%と、非常に高い結果であることがわかります。
特区小規模を持たない小規模保育 84・4%
特区小規模を持つ小規模保育 105・3%
今後、全国的に少子化が進む中、人口減少地帯では既存の認可保育園のインフラを維持できなくなる地域が多発してくると考えられます。そうなった際に、0〜2歳の小規模認可保育園と連携する形で、3〜5歳の小規模認可園という選択肢があることで、保育インフラを維持していける可能性が見えてきます。
よって、3〜5歳の小規模認可保育園を国家戦略特区だけでなく、全国でできるようにすることを検討するよう要望しました。
6.企業主導型保育事業について
1)企業主導型にも障害児加算の適用を
認可保育事業である地域型保育事業(居宅訪問型保育事業を除く)において障害児を受け入れる場合、障害児2人につき、保育士1人を配置するために必要な経費「障害児保育加算」が補助されます。
しかし、認可外保育事業である企業主導型保育事業では、この「障害児保育加算」の補助がありません。
企業主導型保育事業所にも地域型保育事業所と同様に、障害児の申し込みは一定数あります。また、入園時は障害児としての入園でなくても、保育園に通っている間に園児が障害児となる場合もあり、企業主導型保育事業所で障害児を預かるケースが発生することはあり得ます。
企業主導型保育事業所であっても、障害児が安心して通える環境を整備できるように、障害児保育加算を適用するよう要望しました。
2)土曜減算についてルールの見直しを提言
企業主導型には、土曜日利用が1日でも無い場合、2カ月は猶予、3カ月目に週5運営の園として減算されるルールがあります。
例えば、保護者が毎週ではなく月2日の土曜日利用を希望した場合、週5運営の園としての給付しかない中で運用するか、土曜休園を前提とした運営にする必要があり、保護者ニーズに合わせられません。
また、認可保育事業で認められている、直前キャンセル=減算なしとする運用もありません。
土曜保育を必要とする保護者のニーズに柔軟に対応できるようなルールの見直しを提言しました。
3)定員(減少)変更を認めるよう要望
企業主導型保育事業においては、一度整備した定員を減らすことができないという指導になっています。認可保育所や認定こども園では、定員変更は自治体が認めれば可能になっております。
急激な少子化により、定員を減少させざる得ない企業主導型保育事業が今後増加することが予想されます。定員の硬直化により、運営費単価が不利な運営を強いられることで経営が悪化するなどの弊害が起きることになります。
認定こども園などは、認可定員とは別に利用定員という概念を用いて、自在に定員を伸縮させることが可能です。
現在のルールを改め、企業主導型でも、定員(減少)変更が認められる、または利用定員の設定を認めるよう要望しました。
7.公費補助により整備した施設の場合の、撤退時の返還義務について、内装費を対象外にするよう要望
補助金の交付を受けて保育所等を整備したが、今後、預かり人数の減少などでやむを得ず撤退の判断を行う保育所等が増えることが予想されます。
保育所等整備交付要綱の条件に、「事業により取得し、又は効用の増加した不動産及びその従物並びに事業により取得し、又は効用の増加した価格が単価30万円以上の機械及び器具及びその他財産については、適化法施行令第14条第1項第2号の規定により厚生労働大臣が別に定める期間を経過するまで市町村長の承認を受けないでこの補助金の目的に反して使用し、譲渡し、交換し、貸し付け、担保に供し、取り壊し又は廃棄してはならない。」とあります。
条件に反した場合には、補助金の全部または一部を返還しなければならなりませんが、建物内部の壁面や床、天井、家具、室内装飾や仕上げ等の内装費については、対象から除外するよう要望しました。
8.企業主導型ベビーシッター利用者支援事業の事務手続き(事業者・利用者双方)負担軽減のため、制度公表のスケジュール見直し、および電子化を提言
内閣府が実施する企業主導型ベビーシッター利用者支援事業は、以下のようなスキームとなります。
加入企業(親の勤め先)が親に紙の割引券を配布
↓
一回の利用ごとに割引券を親が氏名等を記入し、千切ってベビーシッター事業者に提出
↓
受け取った事業者は、一枚一枚その記載内容を目で確認しながらまとめ、社判を押し、期日までに全国保育サービス協会に送付
↓
全国保育サービス協会よりベビーシッター会社に振り込まれる
という流れです。割引券が紙であることから、管理方法が非常に煩雑となり、ベビーシッター事業者にとっては手作業に大変な工数をとられています。
また、年度始めの時期に当該年度の制度が決定されていない状況なため、毎年4-6月の利用分に関しては遡及割引対応(一度全額をベビーシッター会社に払った後、遅れて割引券を提出し、事業者から利用者へ返金する)が発生しており、利用者・事業者とも相当な負担を背負っています。
一方で、企業主導型ベビーシッター利用者支援事業と同様のサービスである民間の福利厚生では、今年度以降相次いでクーポンの電子化が予定されています。(えらべるくらぶ(2021年夏~)・ベネフィットワン(2022年度~)等)
内閣府のベビーシッター利用者支援事業においても、割引券の電子化を推進し、利用者・事業者双方の負担を軽減すること、また、遡及対応が発生しないよう、スケジュールの見直しを強く要望しました。
詳細は内閣府ホームページをご覧ください。
子ども・子育て会議: 子ども・子育て本部 – 内閣府(リンク)
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【報告】内閣府「子ども・子育て会議(第56回)」提言のご紹介
1/20に開催された内閣府「子ども・子育て会議(第56回)」における、小規模保育などに関する駒崎理事長の提言をご紹介いたします。
1.シッターによる届出義務化が「ザル状態」になっていることについて ―マッチング型事業者の届出未確認事案を踏まえて―
1月15日のビジネスインサイダー誌の報道によると、「ベビーシッターの大手マッチングプラットフォームで、4年半以上にわたり、児童福祉法上シッター個人に義務付けられている、都道府県等への届出を確認しないまま、届出対象年齢である7歳未満のシッティングをマッチングしていたことが明らかになった」とのことです。
児童福祉法の改正によって、2016年4月から、1日に1人以上児童を預かるベビーシッター事業者も、児童福祉法上の認可外保育施設として届出の対象になりました。今回の事案は、その法令を違反していたということになります。そうした状況のまま、同社は内閣府のシッター補助金の対象となっていました。
同誌は「そもそも補助金事業に対して、個人のベビーシッターは申請ができず、マッチング型事業者が認定をされているのは、事業者が審査等を経て安全性を担保しているとみなされているからではなかったのか。(中略)『認定の一時停止や取り消しができないのであれば、補助金事業自体が砂上の楼閣だったということではないか」「今回のキッズラインの届出未確認問題により、シッターによる届出の義務化は、ザル状態であったことが明るみに出たと言える」と指摘しています。
こうした状態について、民間から内閣府に対応策を求めました。
2.企業主導型の新規園募集停止を提案
待機児童解消が一定程度効果を発揮し、このペースで待機児童が解消された場合、3年で待機児童は0になる推計となっています。
作成:認定NPO法人フローレンス
待機児童解消を目的として設計された企業主導型保育は、その使命を終えたと考えることもできます。だとしたら新規園募集は止め、既存の園の質の向上等にリソースを振り向けていくべきではないかと考えます。
一方で、一時保育・病児保育・ショートステイ・産後ケア・多胎児支援等、地域の子育て資源はいまだに不足していることは明らかです。
認可園や地域型保育と違って、13の子ども子育て支援事業については、自治体が手を挙げなければ実施することができず、自治体は予算制約や優先順位などから、積極的に整備を行ってきたとは言い難い状況です。
企業主導型の新規園募集を停止することで生まれる予算的な余白を用いて、これまで整備が進みにくかった地域の子育て支援を行うことはできないでしょうか。その際は現状の13事業のように自治体のコミットに左右されてしまう仕組みではなく、企業主導型の良い点であった、自治体を介さず、事業者の希望で事業を始められる仕組みを踏襲することで、スピード感を持って整備を進めることが叶う構想もあわせて提案いたしました。
3.5歳まで預かれる特区小規模保育を、特区だけでなく全国でできるよう要望
堺市等で行われている3〜5歳の特区小規模保育について、当該自治体の方々にヒアリングを行うと、有用性を感じていらっしゃり、今後についても期待度が高いことが伺えます。
今後、全国的に少子化が進む中、人口減少地帯では既存の認可保育園のインフラを維持できなくなる地域が多発してくると考えられます。そうなった際に、0〜2歳の小規模認可保育園と連携する形で、3〜5歳の小規模認可園という選択肢があることで、保育インフラを維持していける可能性が見えてきます。
3〜5歳の小規模認可保育園を国家戦略特区だけでなく、全国でできるようにすることを検討して頂きたいです。
4.「在宅勤務の場合、自宅保育をしてほしい」という自治体の独自要請の取り下げを要望
都内の一部の区において、保護者へ、保育園の登園自粛要請と受け取れる通達が出されているケースが見受けられます。要請内容は「家で保育できる人だけ」とありますが、これにより育児休暇中の家庭や在宅勤務可能な家庭が保育園に預けられない事例が実際に出ています。
子どもを見ながらの在宅勤務は不可能です。さらに毎日通っている園からの「協力のお願い」は容易に「ほぼ強制」に転嫁し得ます。
保育園で働く職員の感染を防ぐことももちろん大切です。しかし、それでもなお登園自粛要請には慎重になるべきです。保護者を追い込み、精神的に不安定にさせれば、そのリスクは子どもに向かいます。
既に発出されているであろうFAQ等とあわせて、自治体独自の登園自粛を再検討するよう、厚生労働省より通知等を出して頂けるよう要望いたしました。
5.保育所運営にかかわる本部所属の職員の人件費も、拠点区分の経費として認められるよう要望
江東区の認可保育所の指導検査にて、拠点に属さない職員(本部所属)の給与等を人件費として計上したことについて、あくまでも拠点区分外の経費とする改善依頼(口頭)がありました。
指導検査基準では、委託費の人件費の使徒範囲について「保育所に属する職員の給与、賃金等保育所運営における職員の処遇に必要な一切の経費に支出されるもの」とされています。
保育所の委託費の請求業務や取引先への支払業務、園児が使うシステムの保守等に従事する本部職員の処遇に関わる経費についても、「保育所運営における職員の処遇に必要な一切の経費に支出されるもの」に該当します。
本来は拠点内で実施すべき業務を多数の拠点を運営する強みから集中管理しているにすぎず、その所属の有無に関わらず拠点運営の経費として計上されるのが適切と考えます。
もし、このような業務に従事する職員の人件費を拠点区分外の経費とすると、不当に人件費比率が低くなってしまい、実態と乖離してしまいます。
多様な運営形態があることを鑑み、保育所運営にかかわる本部所属の職員の人件費を拠点区分の経費として認めていただけるよう、指導監査実施要綱の改定を要望いたしました。
6.保育士の働き方改革において、副業・兼業として複数の認可保育施設での勤務が可能になるよう、各自治体へ通知の発出を依頼
令和2年7月時点で保育士の全国の有効求人倍率は 2.29 倍、全職種は 1.05 倍。全職種平均の倍以上となっているなど、多くの施設で保育の担い手の確保がますます困難に。
原因の一つに、保育士の働き方の画一的な運用があろうかと思います。多くの自治体において指導監査での縛りが厳しく、解釈も定まらない状況があります。
複数の認可保育施設に所属することができるか、という問題があります。例えば、保育園Aの常勤職員(月160時間勤務)が、労働時間が被らない就業時間に保育園Bで短時間勤務(月12時間勤務)する場合に、保育園Aは常勤、保育園Bでは非常勤職員として月次の各自治体への公定価格職員配置報告へ記載し、所属させることに関して、いまだ多くの自治体では許されていません。
町田市では、「複数の施設での勤務は可能です。ただし、その場合、当該職員を法人では常勤職員として採用したとしても、法令上の施設ごとの職員配置の考え方では、どちらの園でも非常勤職員扱いとなります」と示されいます。
各自治体における指導では、同法人内でも、他法人でも、複数所属を認められないと指導しているケースが多いようです。
昨今の働き方改革において、「副業・兼業」なども積極的に取り組むよういわれておりますが、保育士においても可能になってしかるべきと考えます。副業・兼業を行う理由は、収入を増やしたい、1つの仕事だけでは生活ができない、自分が活躍できる場を広げる等様々ですが、保育士の過度な長時間労働などを招かないよう留意しつつ、保育現場においても、その希望に応じて複数施設で副業・兼業が行える環境を整備すべきと考えます。
法的には問題がないと思われますので、上記のような保育士の働き方について自治体に通知を出していただけるよう提案いたしました。
7.東京都都市部における公定価格の「賃借料加算」について、金額の算定基準の見直しを要望
東京都都市部において、公定価格で定められている「賃借料加算」が金額的に実態と大きく乖離している実態があります。これは、東京都の財源で5年の期限付きで加算の上乗せを行っていることからも明らかです。
自治体の財源を使わなくてはならない現状のため、「5年」という時限付きでしか上乗せされません。そのため、5年を超えると法人が持ち出すなどの方策を取らなければ賃料を賄えないケースが続出しています。
5年後に賃料が安くなるという社会情勢でもないことから、このことが理由で保育所整備が進まない地域もあり、整備されたとしても非常に不安定な見通しでの運営を余儀なくされています。
保育所の運営は5年では終わりません。改修型であっても最低10年は運営するよう自治体からは約束を求められています。東京都の公定価格上の賃借料加算の金額設定に無理があるためこのような状況になっていると思われるため、算定基準の見直しを求めました。
8.コロナ禍における処遇改善Ⅱキャリアアップ研修の実施体制・要件について、抜本的な見直しを要望
保育士は、処遇改善Ⅱの適用を受けるため、キャリアアップ研修を受けることが必要です。しかし、コロナ禍の影響で特に2020年度は各実施主体とも「ソーシャルディスタンス」への配慮により、受講定員を減らしてきており、希望しても受講がかなわないことが増えています。
「受けたくても受けられない」という状況に鑑み、現在の実施体制や要件の抜本的な変革とともに、受講機会・受講主体を増やすこと、そして処遇改善Ⅱの 講座受講要件のさらなる延長・緩和を要望いたしました。
9.子ども子育て新制度施行後、増大した事務負担への対応に係る提言
子ども子育て新制度施行後、制度の安定と引き換えに認可申請をはじめ、記録、保存書類の作成、会計処理財務諸表への対応、第三者評価、請求業務、各種契約業務、監査対応など事務処理が明らかに増大し、施設長や事務職員への負担は増すばかりで、各施設で負担する会計業務などの外部委託や、労務管理、規定類の整備などにかかる費用なども看過できない状態となってきています。
事務量増加に対する正規職員雇用補助や専門家に委託できる補助の創設をするか、それができないならば、事務量を減らすための対行政書類の抜本的な簡素化、巡回指導や監査の改善などを希望いたしました。
詳細は内閣府ホームページをご覧ください。
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