【報告】保育士「週4勤務」でも常勤に!保育士も柔軟な働き方が選択できる時代へ
全国小規模保育協議会では、かねてから子ども・子育て会議等で、保育士の「常勤」の定義を改め、週4勤務など保育士の柔軟な働き方を可能にし、保育人材確保を後押しするよう提言を重ねてまいりました。
その提言がついに実り、この度、こども家庭庁から保育士を週4勤務でも「常勤」として認めるという通知が出されました。
令和4年4月の保育士の有効求人倍率は1.98倍で、全職種平均の1.17倍と比べると、依然高い水準で推移。保育園は慢性的に人手不足で、特に常勤保育士の採用難が続いています。さらにコロナ禍により、今まで以上に厳しい状況になっていました。
その理由として、保育士の働き方が早朝や遅番勤務もあり家事育児との両立が困難であることなどが挙げられます。またコロナ禍では、在宅勤務などの柔軟な働き方ができない仕事が敬遠されるなどの実態がありました。
厚労省では「1日6時間未満又は月20日未満勤務」の保育士を短時間勤務の保育士としています。よって、多くの自治体では、常勤保育士を「1日6時間以上又は月20日以上勤務」と解釈して運用しています。「1日8時間 週4日(月16日)」勤務する人がいた場合、「1日6時間 週5日(月20日)」の人よりも合計勤務時間は多くなるにも関わらず、前者は常勤保育士とみなされていませんでした。
2022年の「骨太の方針」*においても、多様な働き方の推進を目的とし「選択的週休3日制度」の普及を図ることが示されていたことなどから、全国小規模保育協議会では、保育業界においても、多様な働き方を推進し、保育人材の確保を後押しして下さいと要望していました。
* 経済財政運営と改革の基本方針 2022(https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/cabinet/2022/2022_basicpolicies_ja.pdf)
保育士も多様な働き方を選択できる時代へ
保育士の柔軟な働き方が広く認められることで、人材不足が叫ばれる保育業界に、これまで資格を持ちながらも働いていない「潜在保育士」の参入を促進することが期待されます。
通知では、新たに常勤保育士の定義を規定。「月120時間以上で勤務する者」も含められました。例えば、1日8時間で週4回働くと常勤保育士とみなされることになります。保育士も多様な働き方を選択できる職業になることが期待されます。
今後も、全国小規模保育協議会では引き続き、提言活動を行ってまいります。
本件に関する過去の提言内容について
本件に関する過去の提言内容の詳細は下記のリンクよりご確認いただけます。
【報告】小規模保育施設でも5歳児までの預かりが可能に!小規模保育の「3歳の壁」問題解消へ
全国小規模保育協議会では、かねてから子ども・子育て会議等で、大阪府堺市などで導入されている小規模保育の対象を5歳まで広げられる特区小規模保育事業の全国化の提言を重ねてまいりました。
その提言がついに実り、この度、こども家庭庁から小規模保育施設でも5歳児までの預かりを認めると発表されました。
小規模保育事業は、待機児童が一番多い0〜2歳の受け皿として全国の待機児童問題解消に大きく貢献してきましたが、卒園児が再保活しなければならない「3歳の壁」問題が大きな課題として横たわっていました。
そのため、弊会では小規模保育の対象を5歳まで広げられるよう、かねてより提言を重ねてまいりました。
この提言を2016年、国家戦略特区で行い、「5歳まで預かれる小規模保育」制度が2017年9月に実現。全国に先駆けて大阪府堺市などで、特区小規模保育事業(以下「特区小規模」)が開設されました。
当該自治体の方々にヒアリングを行うと、有用性を感じていらっしゃり、今後についても期待度が高いことが伺えていました。
例えば、堺市の小規模保育の入所率データを見ると、卒園後の入園先として3~5歳の特区小規模保育をもつ小規模保育の入所率が105.3%と、非常に高い結果であることがわかります。
<堺市の入所率(令和2年4月)>
特区小規模を持たない小規模保育 84・4%
特区小規模を持つ小規模保育 105・3%
このようなデータをもとに、弊会では3〜5歳の小規模認可保育園を国家戦略特区だけでなく、全国でできるようにすることを度々要望してきました。
その政策提言活動が実り、この度こども家庭庁より「小規模保育施設でも5歳までの預かりを認める」と発表されました。
これまで、小規模保育の大きな課題として横たわっていた卒園児が再保活しなければならない「3歳の壁」問題が解消されていくことが期待されます。
ポスト待機児童時代の保育インフラとして
今後、全国的に少子化が進む中、人口減少地帯では既存の認可保育園のインフラを維持できなくなる地域が多発してくると考えられます。そうなった際に、少人数の保育ニーズがある地域において、狭いスペースでも立ち上げられ、0~5歳児まで保育でき、かつ、家庭的保育・小規模保育事業者等の卒園児の受け皿となれる小規模保育所があれば、地域の保育インフラを維持していける可能性が見えてきます。
今後も、全国小規模保育協議会では引き続き、提言活動を行ってまいります。
本件に関する過去の提言内容について
本件に関する過去の提言内容の詳細は下記のリンクよりご確認いただけます。
【報告】内閣府「子ども・子育て会議(第64回)」提言のご紹介
2023/2/1に開催された内閣府「子ども・子育て会議(第64回)」における、駒崎理事の提言をご紹介いたします。
まず、昨年10月の「子ども・子育て会議」にて意見書を提出した「企業主導型保育園への医ケア児加算」が来年度の予算案に反映されたことについて、御礼を申し上げました。
これにより、企業主導型保育園が医ケア児預かりの体制を整え、より多くの医ケア児家庭が保育園を利用できるようになると期待されます。
引き続き、医ケア児以外の障害児の受け入れ加算についても、見直しを進めていただきたい、と併せてお伝えしました。
また、この会議冒頭で保育課長より、「保育所等における使用済みおむつの処分について」の資料説明が行われました。
保育士や保護者の負担軽減につながるとして、保育所等において使用済みおむつの処分を行うことを推奨するというもので、使用済おむつの持ち帰り廃止は、全国小規模保育協議会の上野代表理事がかねてから提言していた内容です。
こちらも事務連絡発出の御礼を申し上げました。
◎保育所の人員配置基準を再度見直してください
【背景】
子ども家庭庁の令和5年度当初予算
「比較的規模の大きな保育所(利用定員121人以上)(※)について、25:1の配置が実現可能となるよう、2人までの加配を可能とする(現行は保育所の規模にかかわらず1人。)拡充を行い、保育士の負担軽減、こどもの安心・安全な保育環境の整備を推進する。」
と、保育所の人員配置基準改善に向けて動いてくださりありがとうございました。
一方で、利用定員121人以上で対象となる保育所は日本において18%*1 程度しかありません。加えて、職員の平均経験年数(12年以上)等という条件も含めると該当の保育所がさらに少なくなると推測します。根本的な配置基準の改善には至っておりません。
*1 統計「社会福祉施設等調査 / 令和2年社会福祉施設等調査 個別表 施設票」より推計、NHK首都圏ナビ「“虐待や人手不足” 保育に関する来年度の予算案 現場や専門家は」
https://www.nhk.or.jp/shutoken/newsup/20221226c.html
【要望】
前回の子ども子育て会議でも提言いたしましたが、保育所の人員配置基準の見直しを今一度お願いいたします、と改めて提言しました。
===以下、前回2022年12月6日の意見書内容===
2022年11月に大阪府岸和田市で、保育所に送り届けるのを忘れられた2歳の女児が、父親の乗用車内で死亡したことを受け、小倉こども政策担当大臣は会見で「保育園の方で登園管理をしてくだされば救えた命だと思っている。園の責任は重い」と述べられました。
登園時の出欠確認を確実に行う、ふだんの登園時間を過ぎても子どもが来ない場合は保護者に電話で確認する等、園が定められた手順を遵守していれば、防げた事案であることは事実です。
しかし同時に、大臣は会見で、保育所などの現状について「かなり人繰りが大変で、ご苦労されているという認識だ。担当大臣として現場の人員に余裕が出るようしっかり要望して、少しでも現場の負担が軽減できるよう努力を続けたい」とも述べられました。
現在、日本の保育所で1人の保育士が見る児童数は、海外と比較しても多すぎであり、きめ細やかな保育を行える状況とは言えません。特に、3歳児配置改善加算は導入されたものの、人員配置基準として3歳児は1人の保育士が20人、4歳以上児は30人となっていて、目を行き届かせるのは非常に困難な児童数です。
人員配置基準(保育士1人当たりの年齢別児童数)
*2さらに、子ども子育て新制度施行後、保育の記録、保存書類の作成、会計処理財務諸表への対応、第三者評価、請求業務、各種契約業務、監査対応など事務処理が明らかに増大し、保育所の職員の負担は増すばかりになっています。
*2 (日本の人員配置基準について)「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準」第33条第2項
(海外の人員配置基準について)株式会社シード・プランニング「諸外国における保育の質の捉え方・示し方に関する研究会 (保育の質に関する基本的な考え方や具体的な捉え方・示し方に関する調査研究事業)報告書」(平成31年3月29日)
https://www.mhlw.go.jp/content/11907000/000533050.pdf
今後このような悲しい事故を起こさないためにも、保育現場の負担軽減が必要です。1人の保育士が見る児童数を少人数化し、安全で質の高い保育を提供できるように、人員配置基準の見直しを行ってください。
また、事務量増加に対する正規職員雇用補助や専門家に委託できる補助の創設、事務量を減らすための対行政書類の抜本的な簡素化、押印必要書類の削減、巡回指導や監査の改善も行ってください、と併せて要望しました。
◎事業者が行っている保育園や居宅型訪問保育への巡回を支援してください。
【背景】
静岡県裾野市で起きた保育士の虐待事件を皮切りに、全国で不適切保育の報告があがっています。
保育士の過重労働や園のマネジメント体制の問題など、原因は複数考えられますが、リスクマネジメントの観点からも、園に第三者の目を入れることが、不適切保育の防止に効果的だと考えられます。
また、保育士が日々の保育を振り返り、これから取り組もうとする保育について継続的にアドバイス・指導を受けることは、職員のスキルアップや保育の質の向上のためには欠かせません。
東京都では「東京都ベビーシッター利用支援事業」において、利用者が安心してベビーシッターを利用できる環境を整備するため、認定事業者の保育の質向上の取り組みを支援しています。
巡回支援を実施するために必要な人件費や、安心・安全のためのウェブカメラ設置に必要な経費に対する補助があります*3 。
*3 令和3年度ベビーシッター利用支援事業認定事業者に対する保育の質向上支援事業補助要綱
(参考)
【要望】
この【保育の質向上事業】をぜひ国の制度として導入してください、と要望しました。
令和5年度保育関係予算の中で、就業継続支援として「若手保育士や保育事業者等への巡回支援事業」を盛り込んでいただいていますが、保育の質向上を目的として、定期的かつ継続的に園を巡回し指導やアドバイスを行うスーパーバイザー等の雇用支援も導入してください。
また、障害や医療的ケアのあるお子さんを、研修を受けた医療従事者ではない保育スタッフがご自宅で保育するケースが多い「居宅訪問型保育事業」では、重大事故を防ぐための安全管理が必要です。スタッフの急な休みでも保育提供を止めない対策や、現場でのスタッフ指導・育成等に対応していくため、担任保育スタッフ以外の目線・支援が必要です。また健常児と異なり救急搬送等の緊急対応のリスクが高く看護視点での見守りも欠かせません。
しかし、上述のとおり、国の制度には事業者の行う巡回支援やウェブカメラ設置に対する補助や加算がありません。
特に1対1で保育を行う居宅訪問型保育には、東京都ベビーシッター利用支援事業同様に巡回支援やウェブカメラ等の導入への補助を強く要望しました。
◎企業主導型保育事業における、利用定員の1割以上を自社従業員枠にしなければいけないルールを見直してください。
【背景】
企業主導型保育事業実施者(保育事業者型事業の事業実施者を除く)は、施設の利用定員の1割(小数点以下切り上げ。以下同じ)以上を自社従業員枠の定員として設けなければならないこととなっています。
令和元年度までに企業主導型保育事業の助成を受けている施設については、令和4年度末までの経過措置としてこの定員設定は求められないこととなっていますが、令和5年4月以降はすべての事業者がこの設定を求められることとなります。
自社従業員枠の定員を1割以上設けなければならないこのルールは、多くの従業員を抱える設置事業者においてはそれほど大きな問題とはならないことが想定されますが、従業員数の比較的少ない設置事業者においては大きな障害となります。
自社従業員の利用が1割に満たない場合、保育定員の空きが常時発生することになり、提携企業枠や一般枠で保育ニーズが発生しても、このニーズに応えることができなくなり、保育園という社会的な資源が有効活用されないこととなってしまいます。
【要望】
企業主導型保育事業における利用定員の1割以上を自社従業員枠にしなければいけないルールの見直し、もしくは経過措置の継続を検討してください、と要望しました。
◎企業主導型保育事業の安定的かつ発展的な事業継続を目的とした、設置事業者を交えた定期的な議論の場を設定ください。
【背景】
企業主導型保育事業は、平成28年度の制度創設以降、政府の「子育て安心プラン」等に基づき、定員11万人分の受け皿整備に向けて取り組まれ、この定員11万人分の定員整備が令和4年度中に概ね達成されました。
全国的に待機児童数が減少している現状を鑑みると、企業主導型保育事業は、今後いかに安定的に事業継続を行うか、また企業主導型保育事業を「子育て支援」や「少子化対策」にいかに活用するかといった発展的な事業継続の議論が必要となることが想定されます。
企業主導型保育園を安定的に事業継続していくためには、設置事業者の健全な経営が大前提です。一方、設置事業者が健全な経営を行っていたとしても、制度そのものやその運用が非効率だと、事業者の財務的な疲弊や保育園(保育士)に過度な業務負担が課されるような事態を招きます。
企業主導型保育事業に関わる事業点検・評価の場として「企業主導型保育事業点検・評価委員会」が設置されており、定期的な評価点検が行われていますが、この委員会では安定的な事業継続の議論はなされているものの、発展的な事業継続の議論はなされていないのが現状です。
企業主導型保育事業の設置事業者の中には、新しい発想や、制度運用上の課題を解決するためのアイデアを持ちえた事業者がたくさん存在しますが、発展的な議論を行うための有効な場がありません。
【要望】
全国に約4,500か所ある企業主導型保育園をいかに有効活用していくかの議論や、安定的かつ発展的に事業継続を行うための新たな仕組みについての議論、制度運用上の課題をいかに解決していくかの議論を行っていく、設置事業者を交えた定期的な議論の場を設定してください、と要望しました。
◎認可外保育施設の職員も研修を受講できるよう、キャリアアップ研修のガイドラインを見直してください
【背景】
保育士等キャリアアップ研修は、職員のキャリアアップの仕組みを構築するとともに、一定の水準のもとでリーダー的職員を育成するためのすばらしい制度です。
しかしながら、現行ガイドライン(保育士等キャリアアップ研修ガイドライン 雇児保発0401第1号)では、対象者は「保育所等(子ども・子育て支援法に基づく特定教育・保育施設及び特定地域型保育事業をいう)の保育現場において役割を担うもの」と明記されており、認可外保育施設に勤務する職員は対象外と読み取れてしまいます。
ガイドラインには対象者に「当該役割を担うことが見込まれる者を含む」とも記載されており、現在認可外保育施設に勤務する職員でも対象外になるわけではないと考えられますが、自治体によっては申込みを受け付けてもらえなかったり、順番を後回しにするなどの対応を受けることがあります。
認可外施設の職員も認可施設と同じようにキャリアアップ研修が受講可能になれば、職員のスキルアップやモチベーションの向上にも繋がります。
【要望】
現行のガイドライン(保育士等キャリアアップ研修ガイドライン 雇児保発0401第1号)で対象の施設に認可外保育施設も明記してください。または認可外保育施設を排除しないよう、自治体向けに通知等を出してください、と要望しました。
その他、駒崎理事の提言内容の詳細はこちらをご覧ください。
詳細は内閣府ホームページをご覧ください。
子ども・子育て会議: 子ども・子育て本部 – 内閣府(リンク)
子ども・子育て会議(第64回)会議資料はこちら
【報告】内閣府「子ども・子育て会議(第63回)」提言のご紹介
2022/12/8に開催された内閣府「子ども・子育て会議(第63回)」における、駒崎理事の提言をご紹介いたします。
◎保育士の柔軟な働き方を可能にし、保育人材確保を後押しして下さい。
令和4年4月の保育士の有効求人倍率は1.98倍で、全職種平均の1.17倍と比べると、依然高い水準で推移しています。保育園は慢性的に人手不足で、特に常勤保育士の採用難が続いています。さらにコロナ禍により、今まで以上に厳しい状況になっています。
その理由として、保育士の働き方が早朝や遅番勤務もあり家事育児との両立が困難であることなどが挙げられます。またコロナ禍では、在宅勤務などの柔軟な働き方ができない仕事が敬遠されるなどの実態があります。
一方、保育士登録されているが保育施設等で従事していない「潜在保育士」は、2018年時点で95万人*1おり、その数は年々増加しています。
*1 保育士の現状と主な取組(令和2年8月24日)P22 保育士の登録者数と従事者数の推移(https://www.mhlw.go.jp/content/11907000/000661531.pdf)
株式会社野村総合研究所による2018年の調査*2では、
・潜在保育士のうち約6割が今後保育士として働く意欲を持っていること
・就労意欲を持つ潜在保育士の3人に2人は、働く上で「勤務時間や勤務日など希望に合った働き方」を最も重視していること
がわかりました。
*2 潜在保育士の6割が保育士として就労を希望~「勤務時間や勤務日など希望に合った働き方」を最も重視~(https://www.nri.com/jp/news/newsrelease/lst/2018/cc/1003)
厚労省の調査*3でも、過去に保育士として就業した者が再就業する場合の希望条件として、「勤務時間」「勤務日数」が上位にきています。
*3 保育を取り巻く状況について P53 過去に保育士として就業した者が再就業する場合の希望条件(複数回答)(https://www.mhlw.go.jp/content/11907000/000784219.pdf)
常勤保育士を確保するためには、保育現場で、保育士のニーズに合わせた多様な働き方を選択できるようにする必要があります。
しかし、現在、常勤保育士の多様な働き方が認められていません。
厚労省では「1日6時間未満又は月20日未満勤務」の保育士を短時間勤務の保育士としています。よって、多くの自治体では、常勤保育士を「1日6時間以上又は月20日以上勤務」と解釈して運用しています。「1日8時間 週4日(月16日)」勤務する人がいた場合、「1日6時間 週5日(月20日)」の人よりも合計勤務時間は多くなるにも関わらず、前者は常勤保育士とみなされません。
今年10月には、大手保育事業者が週休3日(週4勤務)の正社員の導入を始めましたが、週休3日では常勤保育士の要件を満たさなくなることが課題となっています。
2022年の「骨太の方針」*4においても、多様な働き方の推進を目的とし「選択的週休3日制度」の普及を図ることが示されています。
*4 経済財政運営と改革の基本方針 2022(https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/cabinet/2022/2022_basicpolicies_ja.pdf)
保育業界においても、多様な働き方を推進し、保育人材の確保を後押しして下さいと要望しました。
例えば、自治体に向けて「常勤」の定義を改めるように以下のとおり通知を出してくださいと提言しました。
現在:1日6時間以上かつ週5日(月20日)以上
→変更後:月120時間以上
◎保育所で子ども食堂等が実施できるよう、ガイドラインを作成し、保育園の多機能化を推進して下さい。
保育所保育指針において、保育所は、通所している児童の保育を行うだけでなく「地域の子育て支援の拠点」としての役割を担うこと*5とされています。厚生労働省は、自治体に対し「多様な社会参加への支援に向けた地域資源の活用について(通知)*6」を発出し、福祉ニーズの多様化・複雑化、人口減少といった福祉分野を取り巻く状況が変化する中、包括的な支援を提供する仕組みを推進していくため、福祉サービス事業所等を活用することとしています。そして、その例として、「保育所等の空きスペースを活用して、地域の子育て世帯等が集う場等を設ける」ことを挙げています。
*5 保育所保育指針 第1章 1ー(1)ーウ(https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00010450&dataType=0&pageNo=1)
*6 多様な社会参加への支援に向けた地域資源の活用について(通知)P1,P9 (https://www.pref.fukuoka.lg.jp/uploaded/attachment/134594.pdf)
それにも関わらず、在園児の保育に関わること以外の活動に対し、自治体は、「目的外使用に該当する」として、保育所を通常の保育以外で利用することに懸念を示したり、厳密な別管理を求める等、保育園の多機能化を阻んでいます。
例えば、保育所はキッチンもあり、子どもにとって安全な環境もあることから、地域の孤立しがちな親子に対し、子ども食堂を行うのに大変適しています。実際に、某市において認定NPO法人フローレンスが「ほいくえん子ども食堂」を行ったところ、非常に反響があり、母子生活支援施設入居者を含む、地域の多くの親子にご利用いただいています。
しかし、別の自治体で同様に子ども食堂を実施しようとしたところ、保育所の運営に係る補助金の対象ではないという判断のもと、保育施設の調理室を使用することに懸念を示されたり、調味料や光熱費を保育園運営と厳密に分ける等の非効率な運用を求められています。
保育所が、在園児だけでなく地域に向けて開かれることで、孤独と孤立に陥りやすい無園児家庭等ともつながるきっかけになることが期待できます。
また、大半の保育所は、日曜日や土曜日夜は使われておらず、平日にも、使っていないスペースを抱える保育所は少なくありません。アイドリングしている保育所内スペースを、地域のNPOや習い事の先生、親グループ等に貸すことができれば、保育所がコミュニティの結節点になっていく未来が描けます。
地域の社会資源として保育所の活用を推進するため、ガイドラインを作成してください。上述の通知は、広く福祉サービス事業所の多機能化についての発信であり、自治体の認知も高くありません。保育所は様々な親子のための施設であり、入所しているこどもとその保護者のみならず地域のすべての子どものために活用すべきです。自治体が保育所の活用を前向きに検討できるよう、保育所の多機能化に特化したガイドラインを作成してください、と要望しました。
◎保育所の人員配置基準を見直してください
2022年11月に大阪府岸和田市で、保育所に送り届けるのを忘れられた2歳の女児が、父親の乗用車内で死亡したことを受け、小倉こども政策担当大臣は会見で「保育園の方で登園管理をしてくだされば救えた命だと思っている。園の責任は重い」と述べられました。
登園時の出欠確認を確実に行う、ふだんの登園時間を過ぎても子どもが来ない場合は保護者に電話で確認する等、園が定められた手順を遵守していれば、防げた事案であることは事実です。
しかし同時に、大臣は会見で、保育所などの現状について「かなり人繰りが大変で、ご苦労されているという認識だ。担当大臣として現場の人員に余裕が出るようしっかり要望して、少しでも現場の負担が軽減できるよう努力を続けたい」とも述べられました。
現在、日本の保育所で1人の保育士が見る児童数は、海外と比較しても多すぎであり、きめ細やかな保育を行える状況とは言えません。特に、3歳児配置改善加算は導入されたものの、人員配置基準として3歳児は1人の保育士が20人、4歳以上児は30人となっていて、目を行き届かせるのは非常に困難な児童数です。
人員配置基準(保育士1人当たりの年齢別児童数)
*7さらに、子ども子育て新制度施行後、保育の記録、保存書類の作成、会計処理財務諸表への対応、第三者評価、請求業務、各種契約業務、監査対応など事務処理が明らかに増大し、保育所の職員の負担は増すばかりになっています。
*7 (日本の人員配置基準について)「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準」第33条第2項
(海外の人員配置基準について)株式会社シード・プランニング「諸外国における保育の質の捉え方・示し方に関する研究会 (保育の質に関する基本的な考え方や具体的な捉え方・示し方に関する調査研究事業) 報告書」(平成31年3月29日)
https://www.mhlw.go.jp/content/11907000/000533050.pdf
今後このような悲しい事故を起こさないためにも、保育現場の負担軽減が必要です。1人の保育士が見る児童数を少人数化し、安全で質の高い保育を提供できるように、人員配置基準の見直しを行ってください、と要望しました。
また、事務量増加に対する正規職員雇用補助や専門家に委託できる補助の創設、事務量を減らすための対行政書類の抜本的な簡素化、押印必要書類の削減、巡回指導や監査の改善も行ってください、ということも併せて要望しました。
その他、駒崎理事の提言内容の詳細はこちらをご覧ください。
詳細は内閣府ホームページをご覧ください。
子ども・子育て会議: 子ども・子育て本部 – 内閣府(リンク)
子ども・子育て会議(第63回)会議資料はこちら
【報告】全国小規模保育協議会の提言が国のモデル事業に!地域のすべての子どもたちに開かれた「みんなの保育園」政策提言活動のご紹介
全国小規模保育協議会では、かねてから子ども子育て会議等で、
保育園が就労の有無や形態に関わらず利用できる、地域の全ての子どもたちに開かれた「みんなの保育園」になるよう提言を重ねてまいりました。
過去の提言内容のご紹介
>1.「保育の必要性認定」を撤廃し、全ての子どもたちが保育園を利用できるようにしてください。
>1.保育園を誰もが入れる「みんなの保育園」に
>〜保護者の就労要件を撤廃し、就労の有無や形態に関わらず保育園を利用できるよう提言〜
2022年8月には来年度の子ども家庭庁予算案に「多様な保育の充実:保育所の空き定員等を活用し、未就園児を定期的に預かるためのモデル事業を実施する」との文言が盛り込まれ、全国小規模保育協議会では、このモデル事業の本格導入に向けて、政策提言を続けてきました。
そしてついに、2022年12月末に取りまとめられた「令和5年度保育関連予算」の中に、新規事業として「保育所の空き定員等を活用した未就園児の定期的な預かりモデル事業」が入りました!
2022年11月11日、仙台市で全国小規模保育協議会会員が運営する「おうち保育園かしわぎ」に、厚労省の官僚の方、仙台市の行政の方、通信社の記者の方が視察に来られました。「おうち保育園かしわぎ」では余裕活用型一時預かり事業の仕組みを利用して、既に未就園児の定期預かりを実施しており、子育て支援の観点だけでなく、子どもの育ちの観点からも、非常に有効な施策であると感じています。実際に利用している保護者の方や、園長・スタッフへのインタビューを通して、保育園がどのように未就園児の子育てに伴走できるか、さまざまな立場から意見交換を行いました。当日は仙台チャプターのメンバーが参加し、現場の声を届けることができました。
この時の取材内容は、2023年1月16日に東京新聞、河北新報など全国の地方紙に大きく取り上げていただき、来年度から始まるモデル事業への大きな弾みとなりました。品川区、中野区、仙台市など、令和5年度予算に本事業を盛り込んでいる自治体も。この後の国の動き、自治体の動きに注目したいところです。全国小規模保育協議会では、全国の自治体でこのモデル事業の導入が進むよう、”地域おやこ園”への転換の第一歩を、引き続き後押していきたいと考えます。
仙台チャプターメンバーの平間さん、三浦さん、おうち保育園かしわぎの皆さん、ありがとうございました。またお越しいただいた厚労省、仙台市、通信社の皆さまに心より感謝申し上げます。
【報告】内閣府「子ども・子育て会議(第62回)」提言のご紹介
2022/10/4に開催された内閣府「子ども・子育て会議(第62回)」における、駒崎理事の提言をご紹介いたします。
◎通園バスへの「置き去り防止装置」の導入・運用コストを全額公費負担にしてください
通園バスへの「置き去り防止装置」の設置を義務化していただき、ありがとうございます。しかし、導入・運用にかかる費用が事業者負担となる場合、園運営を圧迫し、導入が遅れる恐れがあります。
通園バス置き去り事故の再発を防ぐため、以下の3点を要望いたします。
1.「置き去り防止装置」導入・運用にかかるコストを全額公費負担としてください
国として、安全管理のために有効と考える装置を決め、その装置の導入及び運用にかかるコストを全額公費負担していただきたいです。また、1施設あたりではなく、バス1台あたりで計算した補助額にしていただきたいです。全額公費負担がなければ、ただでさえ経済的に厳しい園運営を圧迫することになり、導入が進みません。
2.現状非常に支援の薄い通園バス運行への公的支援を強化してください
そもそも、通園バスの運行は園にとっては大きな負担であるにも関わらず、公的支援はわずかしかありません。このことが、少ない人数でとり回さなければならず、事故のリスクを上げてしまう遠因となっています。通園バス運行への公的支援を強化してください。
3.障害児用施設も対象にしてください
保育所、幼稚園、認定こども園及び特別支援学校幼稚部だけではなく、障害児用施設(障害児通所施設、特別支援学校等)も対象にしてください。自分で判断したり、身動きをすることが困難な障害児の置き去りも発生しえます。
◎企業主導型保育の障害児加算を充実させてください
しかしながら、ある県に設置された医療的ケア児支援センターによると、相談のほとんどは就園に関することであり、保育園の就園は大きな課題となっています。
一方、内閣府の「企業主導型保育事業を行う施設における医療的ケアの必要な児童の預かり実態について」によると
医療的ケア児の入所相談を受けたことがあると回答した企業主導型保育施設のうち、実際に医療的ケア児を「受け入れたことがある」と回答したのは20.4%にとどまっています。
医療的ケア児の受入れにあたり課題と感じる点として、以下が挙げられています。
「医療的ケア児や医療的ケアについての基礎知識がない」(66.3%)
「事故発生時等のリスクへの対応」(60.1%)
「医療的ケアへの対応が困難であるため、保育従事者のマンパワーが
不足する」(57.5%)
「看護師等の確保が難しい」(56.4%)
「受け入れ体制を整備するための資金が不足している」(41.0%)
看護師を加配できれば、上記に挙げた課題は改善が期待できます。
認可保育所では、保育所が2人以上の看護師を配置する際の補助金が年1058万円となっています。
企業主導型保育にも同等の補助金の導入をお願いします。
また、企業主導型の現行の障害児加算の仕組みでは「障害児2人」に対する職員配置への加算となっていて、障害児1名をお預かりしている場合は加算認定されません。
1名でも加算認定されるように変更をお願いします。
◎居宅訪問型保育事業に「障害児対応加算」を新設してください
現状、居宅訪問型保育事業には障害児対応加算はなく、健常児でも障害児でも対象者による保育料の違いがありません(施設連携加算として、健常児より障害児の方が18,090円(217,080円/年)高く支給されます)。
しかし、障害児保育では、急変が起こるなど安全体制の確保が何よりも重要であり、普段からの巡回やアドバイス体制(保育リーダー/巡回訪問費など)、保育とは異なる看護や療育の専門性(保育アドバイザー/看護アドバイザーなど)、医療従事者ではない保育スタッフの初期研修(1-2ヶ月間)や継続育成、が必要です。
また、障害児においては担任交代も容易ではなく、真の意味で保育者と児の「1対1保育」となる。集団保育同様に複数の保育者が関わり、複数の視点が入ることは障害児においても大事であることから、担任一人が児二人をみることで、実質担任2人で一人を見られる複数担任体制に現在移行しています。しかし、複数担任体制を実施するにあたり、安全の観点で、「担任同士の情報共有や保育方針の議論」の時間が必要であり、更に人員工数が必要となっています。
千葉県や神奈川県、狛江市、三鷹市などの事業者や自治体からも「居宅保育事業実施の相談」が来たものの、財務上事業が成り立たず参入できず断念している状況です。フローレンスでは、訪問看護と組み合わせたり、寄付を募ることで、会社として事業を成り立たせています。しかし、居宅保育事業と訪問看護事業のみでは大きく赤字(約3500万)[*1]の状況であり、撤退検討が必要になっています。
*1 内閣府HP 令和元年12月10日 第50回子ども子育て会議配付資料 参考資料2より
全国の医療的ケア児は約1.9万人[*2]いるとされ、そのうち未就学児は0.52万人いると推定[*3]されます。更に医療的ケア児数は医療の発達に伴い年間約750人のペースで増加[*4]しており、今後も医療的ケア児の保育ニーズも高まっていくと考えられます。
*2 厚生労働省社会・援護局、令和元年10月1日発表資料「医療的ケア児に関する施策について」より
*3 児童に占める未就学児の割合を27.5%とし、年代別ごとの医療的ケア児比率に差がないとした場合。総務省統計局「人口推計(2018年(平成30年)10月1日現在)結果の要約 参考表1:年齢(5歳階級)別人口―総人口,日本人人口(各月1日現在)」および「統計トピックスNo.109 我が国のこどもの数 -「こどもの日」にちなんで- 表2:男女、年齢3歳階級別こどもの数」より
*4 厚生労働科学研究費補助金(障害者政策総合研究事業)分担研究報告書 平成30年度医療的ケア児に対する実態調査と医療・福祉・保健・教育等の連携に関する研究 分担研究課題(1-2):「医療的ケア児数の年次推移」図2より
全国の集団保育園での受け入れも順次進んでいますが、居宅訪問型保育は【集団園へ入園可能なラインまでの児の成長支援/集団への移行支援機能】も担っています(事業開始から約6年間で、①96名のお預かり、②現在も32名が利用中、③約半数の39名を通常の集団保育園に転園させてきた実績があります)。
2021年9月に施行された「医療的ケア児支援法」においては、医療的ケア児を育てる家族の負担を軽減し、医療的ケア児の健やかな成長と家族の離職防止を目指すことが国や地方自治体の責務となります。障害福祉分野では施行に伴う検討や改定が進んでいますが、保育分野ではまだまだといえる状況です。
居宅訪問型保育事業の公定価格の見直しとともに、障害児加算の検討を行い、医療的ケア児の保育や保護者の就労の道を守ってください。
その他、駒崎理事の提言内容の詳細はこちらをご覧ください。
詳細は内閣府ホームページをご覧ください。
子ども・子育て会議: 子ども・子育て本部 – 内閣府(リンク)
子ども・子育て会議(第62回)会議資料はこちら
【報告】こども家庭庁の2023年度予算案の概算要求に 全国小規模保育協議会の提言が盛り込まれました!
8月30日、内閣官房は、2023年4月にできるこども家庭庁の23年度予算案の概算要求を公表しました。
新規事業の柱の一つが「未就園児」への支援で、
保育園や幼稚園に通っていない「未就園児」や「無園児」と呼ばれる子どもの支援を本格化させるため、
23年度から、定員に空きのある保育園で定期預かりといった新たな支援のモデル事業を自治体で開始します。
これは、全国小規模保育協議会が、かねてから子ども子育て会議などの場で提言してきた
「全ての子どもたちが保育園を利用できるように」という方針を取り入れたものです!
(2)保育の受け皿整備・保育人材の確保等【一部新規】【一部推進枠】
・多様な保育の充実
保育所の空き定員等を活用し、未就園児を定期的に預かるためのモデル事業を実施するとともに、外国籍のこどもを受け入れるため
の加配職員の補助要件の緩和を行う。
令和5年度予算概算要求の概要 (こども家庭庁)(P.7)より
全国小規模保育協議会の提言
待機児童問題が解消しつつある今、保育園は、利用児童のためだけではなく、地域の子育て家庭のための施設であるべきだと考えます。地域のすべての親子に開かれた「地域おやこ園」へ移行できるようにするためには制度改正等が必要です。
法令上※、保育の必要性認定が受けられるのは、就労、妊娠・出産、保護者の疾病・障害等の事由により、家庭において必要な保育を受けることが困難な子どもに限定されています。
※子ども・子育て支援法第19条第1項第2号・第3号、子ども・子育て支援法施行規則第1条の5
しかし、保育を必要としているのは、必要性認定を受けられる家庭だけではありません。
週1〜週6まで、その家庭に応じたグラデーショナルな利用を可能とし、どのような家庭でも地域の保育園を利用できるように、法令改正を要望しています。
保育所・幼稚園に通園することで、子ども達の虐待リスクを低下させたり、自閉症やADHD等の発達障害を早期に発見し、早期に支援に繋げていくことができます。
しかし、現状も保育園にも幼稚園にも行っていない3歳以上の子どもたちが5万人いることがわかっています。
出典:厚生労働省「地域における保育所・保育士等の在り方に関する検討会(第1回)」資料3
https://www.mhlw.go.jp/content/11907000/000784219.pdf
保育園にも幼稚園にも行けず、家庭の経済力や保護者の意識によって左右されてしまう子ども達は、最も脆弱性が高い層であるとも言えます。
3歳以上児の義務教育化を実現し、こうした子ども達を早期に社会的支援の網の目で支えていくことも必要です。
過去の提言内容のご紹介
>1.「保育の必要性認定」を撤廃し、全ての子どもたちが保育園を利用できるようにしてください。
>1.保育園を誰もが入れる「みんなの保育園」に
>〜保護者の就労要件を撤廃し、就労の有無や形態に関わらず保育園を利用できるよう提言〜
全国小規模保育協議会は、全ての子どもたちが保育園を利用できる社会になるよう、引き続き具体的な提言を行ってまいります。
【報告】内閣府「子ども・子育て会議(第61回)」提言のご紹介
7/7に開催された内閣府「子ども・子育て会議(第61回)」における、駒崎理事の提言をご紹介いたします。
◎「保育の必要性認定」を撤廃し、全ての子どもたちが保育園を利用できるよう提言
【概要】
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- 専業主婦(夫)家庭や、フリーランス等、労働時間が一定基準を満たさない保護者の場合、「保育の必要性認定」の要件に合致しないため、現行制度では子どもは保育園に通えません。
- 専業主婦家庭は、共働き世帯に比べ、周囲からのヘルプが得られにくく、 孤独と孤立に陥りやすく、24時間小さい子どもと一緒にいることで虐待のリスクを高めています。
- 親の就労の有無によって、子どもが専門的で質の高い保育を受けられるか否かに差が出ている保育園制度の現状は、こどもの権利が尊重されていません。
- こども基本法に照らして、こどもが「安心安全に成長」でき、「こどもの最善の利益」が実現されるために、保育園のあり方を見直す時期がきています。
- 「保育の必要性認定」を撤廃し、すべての家庭が、その家庭に合わせた頻度で保育園を利用できるようにしてください。
【補足:調査報告】
1.未就園児(無園児)家庭の定期保育ニーズ
フローレンスと日本総研が行った全国アンケート調査によると、未就園児(無園児)をもつ家庭の過半数が定期保育サービスの利用を希望していることが分かりました。利用頻度は週1〜2回、短時間での利用を希望しています。
無園児家庭は、保育園等を利用している家庭と比べ、子育ての中で孤独感を感じるという割合が高くなりました。
また、孤独を感じている家庭ほど、定期保育サービスを使いたいと感じていることがわかりました。
そして、虐待につながるリスクのある家庭ほど、定期保育サービスを求めていることがわかりました。
2.未就園児(無園児)の受け入れキャパシティ試算
待機児童問題が解消しつつある中、保育園にはすでに空きが出ています。また少子化により、この空き定員数は増加傾向にあります。
フローレンスと日本総研の試算により、保育所等の空き定員を利用して、すべての未就園児(無園児)が週1日通うことは可能ということが分かりました。保育園は、無園児の受け皿になりうるのです。
3.未就園児(無園児)の定期利用にかかる財源試算
少子化で利用児童数は減少するため、国の保育所等への補助額は年々減少します。この余剰となる補助額を無園児の定期預かり費用に充てる試算をしました。
現在の国の補助額の範囲内で、2028年には、未就園児(無園児)の定期利用ニーズに応じた預かり費用を賄えることがわかりました。
【まとめ】
- 無園児家庭には保育園を定期的に利用したいニーズがあり、一方、保育園には、その受け皿となるキャパシティがあることがわかりました。
- すべての子どもに質の高い保育を受ける権利が保障されるべきです。
- 私たちは、保育の必要性認定を撤廃し、保育園が全ての子どもたちと親たちのセーフティーネットになるよう、提言しました。
◎公定価格の賃借料加算の算定方法を見直すよう要望
- 賃借料加算や冷暖房費加算の「利用子ども数×単価」の算定方法では、子どもの入所率が下がると補助金収入が減ってしまいます。
- 建物賃借料や冷暖房費は毎月定額なのに、子どもの数により収入が変動してしまう現在の加算の仕組みでは、今後、保育園等の量的拡充や少子化等により、保育園等の入所率が下がると事業者負担が増し経営を圧迫していきます。
- 厚生労働省の「子ども・子育て支援推進調査研究事業」調査結果によると保育施設の5割超が人口減少により運営維持が困難な状況です。
- また、子ども1名欠員の場合の賃借料加算の影響は、100名定員の保育園では「1/100」減収ですが、19名定員の小規模保育事業では「1/19」減収になります。
規模が小さければ小さいほど、1名あたりの単価が高いので、小規模保育事業を運営する事業者にとって非常に深刻な問題です。
- 企業主導型保育事業では、在籍児童数で変動するのではなく「定員数」に応じて加算額が算定されています。
- 利用子ども数に応じて施設・事業者側で調整ができない費用に関わる加算については、企業主導型保育事業と同様に「定員数」で算定するように見直してくださいと要望しました。
その他、駒崎理事の提言内容の詳細はこちらをご覧ください。
詳細は内閣府ホームページをご覧ください。
子ども・子育て会議: 子ども・子育て本部 – 内閣府(リンク)
子ども・子育て会議(第61回)会議資料はこちら
【報告】「児童福祉施設設備基準関係の改正について(保育所等関係)」の改正事項に全国小規模保育協議会の提言が盛り込まれました!
令和4年7月7日(木)に第61回子ども・子育て会議が開催されました。
そこで報告された「児童福祉施設設備基準関係の改正について(保育所等関係)」内で
全国小規模保育協議会が提案していた「保育園の空き定員で障害児の児童発達支援を行えるように」という内容が盛り込まれました!
資料9 児童福祉施設設備基準関係の改正について (PDF形式:217KB)
<改正事項>
• 保育所等に関し以下の取組を行うため、児童福祉施設の設備及び運営に関する基準(昭和23年厚生省令第63号)について以下の改正を予定している。
① 保育所等における児童の安全確保のための計画策定の義務化
② 保育所と児童発達支援事業の併設を可能とするため、設備及び人員の専従規定の緩和
③ 保育所における看護師等のみなし配置に関する要件緩和
全国小規模保育協議会の提言
第55回子ども子育て会議にて
2.保育園の空き定員で障害児の児童発達支援を行えるよう提案
児童福祉法により、未就学の障害児は、障害児通所施設に通い、児童発達支援(日常生活における基本的な動作の指導、知識技能の付与、集団生活への適応訓練等)を受けられます。障害児通所施設には、利用定員に応じた報酬や児童指導員等の配置加算額などが支払われます。
現在、保育園と障害児通所施設は、隣接させることはできても、保育園で障害児の児童発達支援を行うことはできません。
「障害のある子どもは障害児通所施設で、健常児は保育園で」という分断を早期に生むことは、社会的包摂(インクルーシブ)の理念からは遠ざかってしまうため、障害児と健常児が共に過ごして成長できる環境を構築していくことが重要と考えます。
保育園の待機児童数は平成29年以降順調に減少し、令和2年4月1日時点で12,439人(※2)となっており、来年度から4年間で約14万人の保育の受け皿が整備(※3)されれば、待機児童問題はほぼ解消します。
(※2) 厚生労働省子ども家庭局保育課「保育所等関連状況取りまとめ(令和2年4月1日)」
(※3) 全世代型社会保障検討会議(第12回)配布資料「世代型社会保障改革の方針(案)」(令和2年12月14日)
待機児童問題が解消に向かう中、定員割れする保育園が出てくることが想定されます。そこで、空き定員分を活用して障害児を受け入れ、児童発達支援をできるようにする制度改正を提案いたしました。
引き続き、全国小規模保育協議会は、全ての子どもたちが保育園を利用できる社会になるよう、具体的な提言を行ってまいります。