【報告】内閣府「子ども・子育て会議(第63回)」提言のご紹介
2022/12/8に開催された内閣府「子ども・子育て会議(第63回)」における、駒崎理事の提言をご紹介いたします。
◎保育士の柔軟な働き方を可能にし、保育人材確保を後押しして下さい。
令和4年4月の保育士の有効求人倍率は1.98倍で、全職種平均の1.17倍と比べると、依然高い水準で推移しています。保育園は慢性的に人手不足で、特に常勤保育士の採用難が続いています。さらにコロナ禍により、今まで以上に厳しい状況になっています。
その理由として、保育士の働き方が早朝や遅番勤務もあり家事育児との両立が困難であることなどが挙げられます。またコロナ禍では、在宅勤務などの柔軟な働き方ができない仕事が敬遠されるなどの実態があります。
一方、保育士登録されているが保育施設等で従事していない「潜在保育士」は、2018年時点で95万人*1おり、その数は年々増加しています。
*1 保育士の現状と主な取組(令和2年8月24日)P22 保育士の登録者数と従事者数の推移(https://www.mhlw.go.jp/content/11907000/000661531.pdf)
株式会社野村総合研究所による2018年の調査*2では、
・潜在保育士のうち約6割が今後保育士として働く意欲を持っていること
・就労意欲を持つ潜在保育士の3人に2人は、働く上で「勤務時間や勤務日など希望に合った働き方」を最も重視していること
がわかりました。
*2 潜在保育士の6割が保育士として就労を希望~「勤務時間や勤務日など希望に合った働き方」を最も重視~(https://www.nri.com/jp/news/newsrelease/lst/2018/cc/1003)
厚労省の調査*3でも、過去に保育士として就業した者が再就業する場合の希望条件として、「勤務時間」「勤務日数」が上位にきています。
*3 保育を取り巻く状況について P53 過去に保育士として就業した者が再就業する場合の希望条件(複数回答)(https://www.mhlw.go.jp/content/11907000/000784219.pdf)
常勤保育士を確保するためには、保育現場で、保育士のニーズに合わせた多様な働き方を選択できるようにする必要があります。
しかし、現在、常勤保育士の多様な働き方が認められていません。
厚労省では「1日6時間未満又は月20日未満勤務」の保育士を短時間勤務の保育士としています。よって、多くの自治体では、常勤保育士を「1日6時間以上又は月20日以上勤務」と解釈して運用しています。「1日8時間 週4日(月16日)」勤務する人がいた場合、「1日6時間 週5日(月20日)」の人よりも合計勤務時間は多くなるにも関わらず、前者は常勤保育士とみなされません。
今年10月には、大手保育事業者が週休3日(週4勤務)の正社員の導入を始めましたが、週休3日では常勤保育士の要件を満たさなくなることが課題となっています。
2022年の「骨太の方針」*4においても、多様な働き方の推進を目的とし「選択的週休3日制度」の普及を図ることが示されています。
*4 経済財政運営と改革の基本方針 2022(https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/cabinet/2022/2022_basicpolicies_ja.pdf)
保育業界においても、多様な働き方を推進し、保育人材の確保を後押しして下さいと要望しました。
例えば、自治体に向けて「常勤」の定義を改めるように以下のとおり通知を出してくださいと提言しました。
現在:1日6時間以上かつ週5日(月20日)以上
→変更後:月120時間以上
◎保育所で子ども食堂等が実施できるよう、ガイドラインを作成し、保育園の多機能化を推進して下さい。
保育所保育指針において、保育所は、通所している児童の保育を行うだけでなく「地域の子育て支援の拠点」としての役割を担うこと*5とされています。厚生労働省は、自治体に対し「多様な社会参加への支援に向けた地域資源の活用について(通知)*6」を発出し、福祉ニーズの多様化・複雑化、人口減少といった福祉分野を取り巻く状況が変化する中、包括的な支援を提供する仕組みを推進していくため、福祉サービス事業所等を活用することとしています。そして、その例として、「保育所等の空きスペースを活用して、地域の子育て世帯等が集う場等を設ける」ことを挙げています。
*5 保育所保育指針 第1章 1ー(1)ーウ(https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00010450&dataType=0&pageNo=1)
*6 多様な社会参加への支援に向けた地域資源の活用について(通知)P1,P9 (https://www.pref.fukuoka.lg.jp/uploaded/attachment/134594.pdf)
それにも関わらず、在園児の保育に関わること以外の活動に対し、自治体は、「目的外使用に該当する」として、保育所を通常の保育以外で利用することに懸念を示したり、厳密な別管理を求める等、保育園の多機能化を阻んでいます。
例えば、保育所はキッチンもあり、子どもにとって安全な環境もあることから、地域の孤立しがちな親子に対し、子ども食堂を行うのに大変適しています。実際に、某市において認定NPO法人フローレンスが「ほいくえん子ども食堂」を行ったところ、非常に反響があり、母子生活支援施設入居者を含む、地域の多くの親子にご利用いただいています。
しかし、別の自治体で同様に子ども食堂を実施しようとしたところ、保育所の運営に係る補助金の対象ではないという判断のもと、保育施設の調理室を使用することに懸念を示されたり、調味料や光熱費を保育園運営と厳密に分ける等の非効率な運用を求められています。
保育所が、在園児だけでなく地域に向けて開かれることで、孤独と孤立に陥りやすい無園児家庭等ともつながるきっかけになることが期待できます。
また、大半の保育所は、日曜日や土曜日夜は使われておらず、平日にも、使っていないスペースを抱える保育所は少なくありません。アイドリングしている保育所内スペースを、地域のNPOや習い事の先生、親グループ等に貸すことができれば、保育所がコミュニティの結節点になっていく未来が描けます。
地域の社会資源として保育所の活用を推進するため、ガイドラインを作成してください。上述の通知は、広く福祉サービス事業所の多機能化についての発信であり、自治体の認知も高くありません。保育所は様々な親子のための施設であり、入所しているこどもとその保護者のみならず地域のすべての子どものために活用すべきです。自治体が保育所の活用を前向きに検討できるよう、保育所の多機能化に特化したガイドラインを作成してください、と要望しました。
◎保育所の人員配置基準を見直してください
2022年11月に大阪府岸和田市で、保育所に送り届けるのを忘れられた2歳の女児が、父親の乗用車内で死亡したことを受け、小倉こども政策担当大臣は会見で「保育園の方で登園管理をしてくだされば救えた命だと思っている。園の責任は重い」と述べられました。
登園時の出欠確認を確実に行う、ふだんの登園時間を過ぎても子どもが来ない場合は保護者に電話で確認する等、園が定められた手順を遵守していれば、防げた事案であることは事実です。
しかし同時に、大臣は会見で、保育所などの現状について「かなり人繰りが大変で、ご苦労されているという認識だ。担当大臣として現場の人員に余裕が出るようしっかり要望して、少しでも現場の負担が軽減できるよう努力を続けたい」とも述べられました。
現在、日本の保育所で1人の保育士が見る児童数は、海外と比較しても多すぎであり、きめ細やかな保育を行える状況とは言えません。特に、3歳児配置改善加算は導入されたものの、人員配置基準として3歳児は1人の保育士が20人、4歳以上児は30人となっていて、目を行き届かせるのは非常に困難な児童数です。
人員配置基準(保育士1人当たりの年齢別児童数)
*7さらに、子ども子育て新制度施行後、保育の記録、保存書類の作成、会計処理財務諸表への対応、第三者評価、請求業務、各種契約業務、監査対応など事務処理が明らかに増大し、保育所の職員の負担は増すばかりになっています。
*7 (日本の人員配置基準について)「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準」第33条第2項
(海外の人員配置基準について)株式会社シード・プランニング「諸外国における保育の質の捉え方・示し方に関する研究会 (保育の質に関する基本的な考え方や具体的な捉え方・示し方に関する調査研究事業) 報告書」(平成31年3月29日)
https://www.mhlw.go.jp/content/11907000/000533050.pdf
今後このような悲しい事故を起こさないためにも、保育現場の負担軽減が必要です。1人の保育士が見る児童数を少人数化し、安全で質の高い保育を提供できるように、人員配置基準の見直しを行ってください、と要望しました。
また、事務量増加に対する正規職員雇用補助や専門家に委託できる補助の創設、事務量を減らすための対行政書類の抜本的な簡素化、押印必要書類の削減、巡回指導や監査の改善も行ってください、ということも併せて要望しました。
詳細は内閣府ホームページをご覧ください。
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【報告】全国小規模保育協議会の提言が国のモデル事業に!地域のすべての子どもたちに開かれた「みんなの保育園」政策提言活動のご紹介
全国小規模保育協議会では、かねてから子ども子育て会議等で、
保育園が就労の有無や形態に関わらず利用できる、地域の全ての子どもたちに開かれた「みんなの保育園」になるよう提言を重ねてまいりました。
過去の提言内容のご紹介
>1.「保育の必要性認定」を撤廃し、全ての子どもたちが保育園を利用できるようにしてください。
>1.保育園を誰もが入れる「みんなの保育園」に
>〜保護者の就労要件を撤廃し、就労の有無や形態に関わらず保育園を利用できるよう提言〜
2022年8月には来年度の子ども家庭庁予算案に「多様な保育の充実:保育所の空き定員等を活用し、未就園児を定期的に預かるためのモデル事業を実施する」との文言が盛り込まれ、全国小規模保育協議会では、このモデル事業の本格導入に向けて、政策提言を続けてきました。
そしてついに、2022年12月末に取りまとめられた「令和5年度保育関連予算」の中に、新規事業として「保育所の空き定員等を活用した未就園児の定期的な預かりモデル事業」が入りました!
2022年11月11日、仙台市で全国小規模保育協議会会員が運営する「おうち保育園かしわぎ」に、厚労省の官僚の方、仙台市の行政の方、通信社の記者の方が視察に来られました。「おうち保育園かしわぎ」では余裕活用型一時預かり事業の仕組みを利用して、既に未就園児の定期預かりを実施しており、子育て支援の観点だけでなく、子どもの育ちの観点からも、非常に有効な施策であると感じています。実際に利用している保護者の方や、園長・スタッフへのインタビューを通して、保育園がどのように未就園児の子育てに伴走できるか、さまざまな立場から意見交換を行いました。当日は仙台チャプターのメンバーが参加し、現場の声を届けることができました。
この時の取材内容は、2023年1月16日に東京新聞、河北新報など全国の地方紙に大きく取り上げていただき、来年度から始まるモデル事業への大きな弾みとなりました。品川区、中野区、仙台市など、令和5年度予算に本事業を盛り込んでいる自治体も。この後の国の動き、自治体の動きに注目したいところです。全国小規模保育協議会では、全国の自治体でこのモデル事業の導入が進むよう、”地域おやこ園”への転換の第一歩を、引き続き後押していきたいと考えます。
仙台チャプターメンバーの平間さん、三浦さん、おうち保育園かしわぎの皆さん、ありがとうございました。またお越しいただいた厚労省、仙台市、通信社の皆さまに心より感謝申し上げます。
【報告】内閣府「子ども・子育て会議(第62回)」提言のご紹介
2022/10/4に開催された内閣府「子ども・子育て会議(第62回)」における、駒崎理事の提言をご紹介いたします。
◎通園バスへの「置き去り防止装置」の導入・運用コストを全額公費負担にしてください
通園バスへの「置き去り防止装置」の設置を義務化していただき、ありがとうございます。しかし、導入・運用にかかる費用が事業者負担となる場合、園運営を圧迫し、導入が遅れる恐れがあります。
通園バス置き去り事故の再発を防ぐため、以下の3点を要望いたします。
1.「置き去り防止装置」導入・運用にかかるコストを全額公費負担としてください
国として、安全管理のために有効と考える装置を決め、その装置の導入及び運用にかかるコストを全額公費負担していただきたいです。また、1施設あたりではなく、バス1台あたりで計算した補助額にしていただきたいです。全額公費負担がなければ、ただでさえ経済的に厳しい園運営を圧迫することになり、導入が進みません。
2.現状非常に支援の薄い通園バス運行への公的支援を強化してください
そもそも、通園バスの運行は園にとっては大きな負担であるにも関わらず、公的支援はわずかしかありません。このことが、少ない人数でとり回さなければならず、事故のリスクを上げてしまう遠因となっています。通園バス運行への公的支援を強化してください。
3.障害児用施設も対象にしてください
保育所、幼稚園、認定こども園及び特別支援学校幼稚部だけではなく、障害児用施設(障害児通所施設、特別支援学校等)も対象にしてください。自分で判断したり、身動きをすることが困難な障害児の置き去りも発生しえます。
◎企業主導型保育の障害児加算を充実させてください
しかしながら、ある県に設置された医療的ケア児支援センターによると、相談のほとんどは就園に関することであり、保育園の就園は大きな課題となっています。
一方、内閣府の「企業主導型保育事業を行う施設における医療的ケアの必要な児童の預かり実態について」によると
医療的ケア児の入所相談を受けたことがあると回答した企業主導型保育施設のうち、実際に医療的ケア児を「受け入れたことがある」と回答したのは20.4%にとどまっています。
医療的ケア児の受入れにあたり課題と感じる点として、以下が挙げられています。
「医療的ケア児や医療的ケアについての基礎知識がない」(66.3%)
「事故発生時等のリスクへの対応」(60.1%)
「医療的ケアへの対応が困難であるため、保育従事者のマンパワーが
不足する」(57.5%)
「看護師等の確保が難しい」(56.4%)
「受け入れ体制を整備するための資金が不足している」(41.0%)
看護師を加配できれば、上記に挙げた課題は改善が期待できます。
認可保育所では、保育所が2人以上の看護師を配置する際の補助金が年1058万円となっています。
企業主導型保育にも同等の補助金の導入をお願いします。
また、企業主導型の現行の障害児加算の仕組みでは「障害児2人」に対する職員配置への加算となっていて、障害児1名をお預かりしている場合は加算認定されません。
1名でも加算認定されるように変更をお願いします。
◎居宅訪問型保育事業に「障害児対応加算」を新設してください
現状、居宅訪問型保育事業には障害児対応加算はなく、健常児でも障害児でも対象者による保育料の違いがありません(施設連携加算として、健常児より障害児の方が18,090円(217,080円/年)高く支給されます)。
しかし、障害児保育では、急変が起こるなど安全体制の確保が何よりも重要であり、普段からの巡回やアドバイス体制(保育リーダー/巡回訪問費など)、保育とは異なる看護や療育の専門性(保育アドバイザー/看護アドバイザーなど)、医療従事者ではない保育スタッフの初期研修(1-2ヶ月間)や継続育成、が必要です。
また、障害児においては担任交代も容易ではなく、真の意味で保育者と児の「1対1保育」となる。集団保育同様に複数の保育者が関わり、複数の視点が入ることは障害児においても大事であることから、担任一人が児二人をみることで、実質担任2人で一人を見られる複数担任体制に現在移行しています。しかし、複数担任体制を実施するにあたり、安全の観点で、「担任同士の情報共有や保育方針の議論」の時間が必要であり、更に人員工数が必要となっています。
千葉県や神奈川県、狛江市、三鷹市などの事業者や自治体からも「居宅保育事業実施の相談」が来たものの、財務上事業が成り立たず参入できず断念している状況です。フローレンスでは、訪問看護と組み合わせたり、寄付を募ることで、会社として事業を成り立たせています。しかし、居宅保育事業と訪問看護事業のみでは大きく赤字(約3500万)[*1]の状況であり、撤退検討が必要になっています。
*1 内閣府HP 令和元年12月10日 第50回子ども子育て会議配付資料 参考資料2より
全国の医療的ケア児は約1.9万人[*2]いるとされ、そのうち未就学児は0.52万人いると推定[*3]されます。更に医療的ケア児数は医療の発達に伴い年間約750人のペースで増加[*4]しており、今後も医療的ケア児の保育ニーズも高まっていくと考えられます。
*2 厚生労働省社会・援護局、令和元年10月1日発表資料「医療的ケア児に関する施策について」より
*3 児童に占める未就学児の割合を27.5%とし、年代別ごとの医療的ケア児比率に差がないとした場合。総務省統計局「人口推計(2018年(平成30年)10月1日現在)結果の要約 参考表1:年齢(5歳階級)別人口―総人口,日本人人口(各月1日現在)」および「統計トピックスNo.109 我が国のこどもの数 -「こどもの日」にちなんで- 表2:男女、年齢3歳階級別こどもの数」より
*4 厚生労働科学研究費補助金(障害者政策総合研究事業)分担研究報告書 平成30年度医療的ケア児に対する実態調査と医療・福祉・保健・教育等の連携に関する研究 分担研究課題(1-2):「医療的ケア児数の年次推移」図2より
全国の集団保育園での受け入れも順次進んでいますが、居宅訪問型保育は【集団園へ入園可能なラインまでの児の成長支援/集団への移行支援機能】も担っています(事業開始から約6年間で、①96名のお預かり、②現在も32名が利用中、③約半数の39名を通常の集団保育園に転園させてきた実績があります)。
2021年9月に施行された「医療的ケア児支援法」においては、医療的ケア児を育てる家族の負担を軽減し、医療的ケア児の健やかな成長と家族の離職防止を目指すことが国や地方自治体の責務となります。障害福祉分野では施行に伴う検討や改定が進んでいますが、保育分野ではまだまだといえる状況です。
居宅訪問型保育事業の公定価格の見直しとともに、障害児加算の検討を行い、医療的ケア児の保育や保護者の就労の道を守ってください。
詳細は内閣府ホームページをご覧ください。
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【報告】こども家庭庁の2023年度予算案の概算要求に 全国小規模保育協議会の提言が盛り込まれました!
8月30日、内閣官房は、2023年4月にできるこども家庭庁の23年度予算案の概算要求を公表しました。
新規事業の柱の一つが「未就園児」への支援で、
保育園や幼稚園に通っていない「未就園児」や「無園児」と呼ばれる子どもの支援を本格化させるため、
23年度から、定員に空きのある保育園で定期預かりといった新たな支援のモデル事業を自治体で開始します。
これは、全国小規模保育協議会が、かねてから子ども子育て会議などの場で提言してきた
「全ての子どもたちが保育園を利用できるように」という方針を取り入れたものです!
(2)保育の受け皿整備・保育人材の確保等【一部新規】【一部推進枠】
・多様な保育の充実
保育所の空き定員等を活用し、未就園児を定期的に預かるためのモデル事業を実施するとともに、外国籍のこどもを受け入れるため
の加配職員の補助要件の緩和を行う。
令和5年度予算概算要求の概要 (こども家庭庁)(P.7)より
全国小規模保育協議会の提言
待機児童問題が解消しつつある今、保育園は、利用児童のためだけではなく、地域の子育て家庭のための施設であるべきだと考えます。地域のすべての親子に開かれた「地域おやこ園」へ移行できるようにするためには制度改正等が必要です。
法令上※、保育の必要性認定が受けられるのは、就労、妊娠・出産、保護者の疾病・障害等の事由により、家庭において必要な保育を受けることが困難な子どもに限定されています。
※子ども・子育て支援法第19条第1項第2号・第3号、子ども・子育て支援法施行規則第1条の5
しかし、保育を必要としているのは、必要性認定を受けられる家庭だけではありません。
週1〜週6まで、その家庭に応じたグラデーショナルな利用を可能とし、どのような家庭でも地域の保育園を利用できるように、法令改正を要望しています。
保育所・幼稚園に通園することで、子ども達の虐待リスクを低下させたり、自閉症やADHD等の発達障害を早期に発見し、早期に支援に繋げていくことができます。
しかし、現状も保育園にも幼稚園にも行っていない3歳以上の子どもたちが5万人いることがわかっています。
出典:厚生労働省「地域における保育所・保育士等の在り方に関する検討会(第1回)」資料3
https://www.mhlw.go.jp/content/11907000/000784219.pdf
保育園にも幼稚園にも行けず、家庭の経済力や保護者の意識によって左右されてしまう子ども達は、最も脆弱性が高い層であるとも言えます。
3歳以上児の義務教育化を実現し、こうした子ども達を早期に社会的支援の網の目で支えていくことも必要です。
過去の提言内容のご紹介
>1.「保育の必要性認定」を撤廃し、全ての子どもたちが保育園を利用できるようにしてください。
>1.保育園を誰もが入れる「みんなの保育園」に
>〜保護者の就労要件を撤廃し、就労の有無や形態に関わらず保育園を利用できるよう提言〜
全国小規模保育協議会は、全ての子どもたちが保育園を利用できる社会になるよう、引き続き具体的な提言を行ってまいります。
【報告】内閣府「子ども・子育て会議(第61回)」提言のご紹介
7/7に開催された内閣府「子ども・子育て会議(第61回)」における、駒崎理事の提言をご紹介いたします。
◎「保育の必要性認定」を撤廃し、全ての子どもたちが保育園を利用できるよう提言
【概要】
-
- 専業主婦(夫)家庭や、フリーランス等、労働時間が一定基準を満たさない保護者の場合、「保育の必要性認定」の要件に合致しないため、現行制度では子どもは保育園に通えません。
- 専業主婦家庭は、共働き世帯に比べ、周囲からのヘルプが得られにくく、 孤独と孤立に陥りやすく、24時間小さい子どもと一緒にいることで虐待のリスクを高めています。
- 親の就労の有無によって、子どもが専門的で質の高い保育を受けられるか否かに差が出ている保育園制度の現状は、こどもの権利が尊重されていません。
- こども基本法に照らして、こどもが「安心安全に成長」でき、「こどもの最善の利益」が実現されるために、保育園のあり方を見直す時期がきています。
- 「保育の必要性認定」を撤廃し、すべての家庭が、その家庭に合わせた頻度で保育園を利用できるようにしてください。
【補足:調査報告】
1.未就園児(無園児)家庭の定期保育ニーズ
フローレンスと日本総研が行った全国アンケート調査によると、未就園児(無園児)をもつ家庭の過半数が定期保育サービスの利用を希望していることが分かりました。利用頻度は週1〜2回、短時間での利用を希望しています。
無園児家庭は、保育園等を利用している家庭と比べ、子育ての中で孤独感を感じるという割合が高くなりました。
また、孤独を感じている家庭ほど、定期保育サービスを使いたいと感じていることがわかりました。
そして、虐待につながるリスクのある家庭ほど、定期保育サービスを求めていることがわかりました。
2.未就園児(無園児)の受け入れキャパシティ試算
待機児童問題が解消しつつある中、保育園にはすでに空きが出ています。また少子化により、この空き定員数は増加傾向にあります。
フローレンスと日本総研の試算により、保育所等の空き定員を利用して、すべての未就園児(無園児)が週1日通うことは可能ということが分かりました。保育園は、無園児の受け皿になりうるのです。
3.未就園児(無園児)の定期利用にかかる財源試算
少子化で利用児童数は減少するため、国の保育所等への補助額は年々減少します。この余剰となる補助額を無園児の定期預かり費用に充てる試算をしました。
現在の国の補助額の範囲内で、2028年には、未就園児(無園児)の定期利用ニーズに応じた預かり費用を賄えることがわかりました。
【まとめ】
- 無園児家庭には保育園を定期的に利用したいニーズがあり、一方、保育園には、その受け皿となるキャパシティがあることがわかりました。
- すべての子どもに質の高い保育を受ける権利が保障されるべきです。
- 私たちは、保育の必要性認定を撤廃し、保育園が全ての子どもたちと親たちのセーフティーネットになるよう、提言しました。
◎公定価格の賃借料加算の算定方法を見直すよう要望
- 賃借料加算や冷暖房費加算の「利用子ども数×単価」の算定方法では、子どもの入所率が下がると補助金収入が減ってしまいます。
- 建物賃借料や冷暖房費は毎月定額なのに、子どもの数により収入が変動してしまう現在の加算の仕組みでは、今後、保育園等の量的拡充や少子化等により、保育園等の入所率が下がると事業者負担が増し経営を圧迫していきます。
- 厚生労働省の「子ども・子育て支援推進調査研究事業」調査結果によると保育施設の5割超が人口減少により運営維持が困難な状況です。
- また、子ども1名欠員の場合の賃借料加算の影響は、100名定員の保育園では「1/100」減収ですが、19名定員の小規模保育事業では「1/19」減収になります。
規模が小さければ小さいほど、1名あたりの単価が高いので、小規模保育事業を運営する事業者にとって非常に深刻な問題です。
- 企業主導型保育事業では、在籍児童数で変動するのではなく「定員数」に応じて加算額が算定されています。
- 利用子ども数に応じて施設・事業者側で調整ができない費用に関わる加算については、企業主導型保育事業と同様に「定員数」で算定するように見直してくださいと要望しました。
詳細は内閣府ホームページをご覧ください。
子ども・子育て会議(第61回)会議資料はこちら
【報告】「児童福祉施設設備基準関係の改正について(保育所等関係)」の改正事項に全国小規模保育協議会の提言が盛り込まれました!
令和4年7月7日(木)に第61回子ども・子育て会議が開催されました。
そこで報告された「児童福祉施設設備基準関係の改正について(保育所等関係)」内で
全国小規模保育協議会が提案していた「保育園の空き定員で障害児の児童発達支援を行えるように」という内容が盛り込まれました!
資料9 児童福祉施設設備基準関係の改正について (PDF形式:217KB)
<改正事項>
• 保育所等に関し以下の取組を行うため、児童福祉施設の設備及び運営に関する基準(昭和23年厚生省令第63号)について以下の改正を予定している。
① 保育所等における児童の安全確保のための計画策定の義務化
② 保育所と児童発達支援事業の併設を可能とするため、設備及び人員の専従規定の緩和
③ 保育所における看護師等のみなし配置に関する要件緩和
全国小規模保育協議会の提言
第55回子ども子育て会議にて
2.保育園の空き定員で障害児の児童発達支援を行えるよう提案
児童福祉法により、未就学の障害児は、障害児通所施設に通い、児童発達支援(日常生活における基本的な動作の指導、知識技能の付与、集団生活への適応訓練等)を受けられます。障害児通所施設には、利用定員に応じた報酬や児童指導員等の配置加算額などが支払われます。
現在、保育園と障害児通所施設は、隣接させることはできても、保育園で障害児の児童発達支援を行うことはできません。
「障害のある子どもは障害児通所施設で、健常児は保育園で」という分断を早期に生むことは、社会的包摂(インクルーシブ)の理念からは遠ざかってしまうため、障害児と健常児が共に過ごして成長できる環境を構築していくことが重要と考えます。
保育園の待機児童数は平成29年以降順調に減少し、令和2年4月1日時点で12,439人(※2)となっており、来年度から4年間で約14万人の保育の受け皿が整備(※3)されれば、待機児童問題はほぼ解消します。
(※2) 厚生労働省子ども家庭局保育課「保育所等関連状況取りまとめ(令和2年4月1日)」
(※3) 全世代型社会保障検討会議(第12回)配布資料「世代型社会保障改革の方針(案)」(令和2年12月14日)
待機児童問題が解消に向かう中、定員割れする保育園が出てくることが想定されます。そこで、空き定員分を活用して障害児を受け入れ、児童発達支援をできるようにする制度改正を提案いたしました。
引き続き、全国小規模保育協議会は、全ての子どもたちが保育園を利用できる社会になるよう、具体的な提言を行ってまいります。
【報告】政府「骨太方針2022」に 全国小規模保育協議会の提言が盛り込まれました!
6月7日、「経済財政運営と改革の基本方針2022 新しい資本主義へ~課題解決を成長のエンジンに変え、持続可能な経済を実現~」(骨太方針2022)が閣議決定されました。https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/cabinet/2022/decision0607.html
岸田政権として初となる予算編成や重要施策の方向性を示す方針、通称【骨太の方針】に、かねてから子ども子育て会議などの場で、全国小規模保育協議会が提言してきた「全ての子どもたちが保育園を利用できるように」という方向性を目指す文言が入りました!
全てのこどもに、安全・安心に成長できる環境を提供するため、教育・保育施設等にお いて働く際に性犯罪歴等についての証明を求める仕組み(日本版DBS)の導入、予防の ためのこどもの死亡検証(CDR)の検討、未就園児等の実態把握と保育所等の空き定員 の活用等による支援の推進、SNS等の活用を含めこどもの意見を政策に反映する仕組み づくり、学校給食などを通じた食育の充実、放課後児童クラブやこども食堂等様々なこど もの居場所づくり等に取り組む。こどもの貧困解消や見守り強化を図るため、こども食堂 のほか、こども宅食・フードバンク等への支援を推進する。
経済財政運営と改革の基本方針2022 新しい資本主義へ~課題解決を成長のエンジンに変え、持続可能な経済を実現~(令和4年6月7日閣議決定)(P.13)より
全国小規模保育協議会の提言
待機児童問題が解消しつつある今、保育園は、利用児童のためだけではなく、地域の子育て家庭のための施設であるべきだと考えます。地域に開かれた「あたらしい保育園」へ移行できるようにするためには制度改正等が必要です。
法令上※、保育の必要性認定が受けられるのは、就労、妊娠・出産、保護者の疾病・障害等の事由により、家庭において必要な保育を受けることが困難な子どもに限定されています。
※子ども・子育て支援法第19条第1項第2号・第3号、子ども・子育て支援法施行規則第1条の5
しかし、保育を必要としているのは、必要性認定を受けられる家庭だけではありません。
週1〜週6まで、その家庭に応じたグラデーショナルな利用を可能とし、どのような家庭でも地域の保育園を利用できるように、法令改正を要望しています。
保育所・幼稚園に通園することで、子ども達の虐待リスクを低下させたり、自閉症やADHD等の発達障害を早期に発見し、早期に支援に繋げていくことができます。
しかし、現状も保育園にも幼稚園にも行っていない3歳以上の子どもたちが5万人いることがわかっています。
出典:厚生労働省「地域における保育所・保育士等の在り方に関する検討会(第1回)」資料3
https://www.mhlw.go.jp/content/11907000/000784219.pdf
保育園にも幼稚園にも行けず、家庭の経済力や保護者の意識によって左右されてしまう子ども達は、最も脆弱性が高い層であるとも言えます。
3歳以上児の義務教育化を実現し、こうした子ども達を早期に社会的支援の網の目で支えていくことも必要です。
過去の提言内容のご紹介
>1.「保育の必要性認定」を撤廃し、全ての子どもたちが保育園を利用できるようにしてください。
>1.保育園を誰もが入れる「みんなの保育園」に
>〜保護者の就労要件を撤廃し、就労の有無や形態に関わらず保育園を利用できるよう提言〜
全国小規模保育協議会は、全ての子どもたちが保育園を利用できる社会になるよう、引き続き具体的な提言を行ってまいります。
【報告】内閣府「子ども・子育て会議(第60回)」提言のご紹介
2/1に開催された内閣府「子ども・子育て会議(第60回)」における、駒崎理事長の提言をご紹介いたします。
◎子どもの預かり人数に応じた職員配置を認める通知を出してください
東京都23区のある自治体では、預かり人数が利用定員に満たない場合でも利用定員に応じた職員配置を求められています。
次月以降に園児が入園する可能性に備えて、常に利用定員に応じた職員を予め配置しておくことを要求されています。
事業者としては、子どもの預かり人数に応じた職員配置は守ります。
しかしながら、次月に備えるために、お預かりしていない子ども人数に対し、職員を配置するのは、ポスト待機児童時代で入所率が減っている中、事業者負担が増し経営を圧迫していきます。
一方で23区の他の自治体では、子どもの預かり人数に応じた職員配置を認めています。自治体によって、対応にばらつきが生じてしまっています。
厚生労働省保育課に問い合わせをしたところ、国では保育所の施設運営基準上、利用定員ではなく、預かり人数に応じた職員配置を求める解釈をしているということでした。
これをうけて、自治体に向けて、子どもの預かり人数に応じた職員配置を認める通知を出してくださいと要望しました。
◎東京都の「保育園で学童の預かりができる」制度を国として創ってください
東京都の2022年度予算が1月28日に発表となりました。
小1の壁を突破するために、空きスペースのある認証保育所において、学齢児を預かれるようにしよう、というものです
今後、待機児童がなくなり、保育園の充足率が下がり続けていきます。令和3年において、全体でも90%に下がり、地域型保育事業の充足率に至っては8割を切ってしまっています。
こうした状況の中、保育園の空き定員を活用するための多機能化は必須と言えるでしょう。
それを踏まえて、東京都の保育園内学童保育の試みを、国レベルでもできるようにしてください、と提言しました。
◎「保育士・幼稚園教諭等処遇改善臨時特例事業」の2022年4月以降の賃金改善要件を緩和してください
「保育士・幼稚園教諭等処遇改善臨時特例事業」において、2022年4月以降の賃金改善については、勤務当月に支払う賃金での改善が求められています。
しかし、従業員への賃金支払を勤務実績に基づき翌月払いとしている多くの法人においては、4月の賃金支払は3月の勤務実績に基づいて支払われます。
2022年4月賃金支払分(3月の勤務実績分)の改善を行うためには、2021年度内で給与改定等の変更が必要となり、事務手続きが非常に煩雑になります。
2022年4月以降に関しては、対象月に賃金改善をしていれば、支払いタイミングが勤務当月でなくても賃金改善として認める緩和措置をFAQで出してくださいと要望しました。
(例)・4月勤務の賃金改善分を5月に支払った場合も、4月の賃金改善として認める
※翌年3月勤務の賃金は4月に払うが、当期中の人件費に計上する
◎認可外保育施設も、多子世帯の保育料負担軽減の対象施設に含めてください
多子世帯への金銭的な負担軽減の推進制度である子ども・子育て支援法施行令の第十三条「複数の負担額算定基準子どもがいる教育・保育給付認定保護者に係る特例」の負担額算定基準の子どもの対象施設は以下と示されており、認可外保育施設は対象外となっています。
<複数の負担額算定基準子どもがいる教育・保育給付認定保護者に係る特例【抜粋】>
一方で、同じく保護者の負担軽減を図る「幼児教育・保育の無償化」の対象施設としては、認可外保育施設も含まれており、3-5歳児クラスは「月額3.7万円まで無償」とされています。
認可外保育施設が、「幼児教育・保育の無償化」対象になっているにも関わらず、多子世帯の保育料負担軽減の対象施設に含まれないのは、保護者の負担軽減を図る制度として一貫性がありません。
香川県高松市では、地域型保育施設と接続している認可外保育施設があり、3歳以降も認可外保育施設に預けたいと希望する保護者もいますが、第2子を認可保育施設に預ける場合、多子世帯の保育料減免対象外となるため、入所に躊躇する事例もありました。
ついては、子ども・子育て支援法施行令の第十三条「複数の負担額算定基準子どもがいる教育・保育給付認定保護者に係る特例」の対象施設に認可外保育施設を加え、第2子以降の保育料減免の対象としてください、と要望しました。
詳細は内閣府ホームページをご覧ください。
子ども・子育て会議(第60回)会議資料はこちら
【報告】内閣府「子ども・子育て会議(第59回)」提言のご紹介
12/8に開催された内閣府「子ども・子育て会議(第59回)」における、駒崎理事長の提言をご紹介いたします。
1.「保育の必要性認定」を撤廃し、全ての子どもたちが保育園を利用できるようにしてください。
2021年11月10日に日本保育協会理事長が「今後は保育の量から質の問題に重点が変わる」と表明し、保育が供給過多時代に移行しつつあるとの認識を示しました。
2020年11月に保育業界最大手のJPホールディングスグループは「児童数が減り赤字が続いた。今後も入園児が見込めない」と説明し、都内認証保育園4園を一斉閉園しました。
これらのニュースは、「保育所が供給過剰になってきている」ことを示唆するものです。自治体の積極的な取組もあり、待機児童数は昨年に続いて過去最小、東京23区と首都圏の政令指定都市では、21年4月入所を申込んだ人の倍率が平均1.00倍になりました。
厚生労働省「保育所等関連状況取りまとめ(令和3年4月1日)」保育所等の利用定員・利用児童数等の状況によると、保育所等(保育所等、幼稚園型認定こども園等、地域型保育事業)の定員充足率は減少傾向にあり、保育の供給過剰により定員割れが進んだ結果、運営を維持することができず撤退する事業者が2020年より既に現れてきています。
政府は保育所数を増やす方針を改め、ポスト待機児童時代に入ったことを明確に認識し、保育所の在り方そのものを大きく転換するべきです。
すなわち、「主に共働き家庭のためだけの保育園」から「全ての子どもたちのための保育園」へと転換していくべきです。
【概要】
専業主婦(夫)家庭や、労働時間が一定基準を満たさない保護者の場合、「保育の必要性認定」の要件に合致しないため、保育園の利用が困難です。
専業主婦家庭は、共働き世帯に比べ、周囲からのヘルプが得られにくく、孤立感等を抱える母親が、24時間小さい子どもと一緒にいることで虐待のリスクを高めています。
全ての家庭が保育園を利用できるように「保育の必要性認定」を撤廃し、家庭に合わせた頻度で週1〜2日でも保育園を利用可能とすることを要望します。
【問題背景1:高い虐待リスク】
保育園にも幼稚園にも預けられず、社会と接点を持たない児童(無園児)は多く、3歳以上でも5万人います(下記図参照 )
(厚生労働省「地域における保育所・保育士等の在り方に関する検討会(第1回)」資料3)
最新の報告によると、1年間の子どもの虐待死事例(57人)では、「0歳」が 28 人(49.1%)で最も多く、「2歳以下」の割合が34 人(59.7%)と半数を超える状況です。無園児率の高い低年齢で深刻な事例が多く発生しています。
また、子どもの虐待死による実父母の就業状況の事例では、実母は「無職」が 21 例(有効割合 48.8%)、実父は「フルタイム」が 24 例(同 82.8%)で最も多い結果が出ており、専業主婦世帯で多くの虐待事例が起きていることが分かります。
【問題背景2:出身家庭に起因する機会格差が生じている】
日本の既存研究(*1)によれば、親が心理的・経済的に余裕がない場合、子どもが低学歴になりやすく、成人後も、非正規雇用・低所得・相対的貧困率が高まるという結果が出ています。現代日本社会で子どもの「出身家庭に起因する機会格差」が存在していることが分かります。
*1 阿部彩. (2011). 子ども期の貧困が成人後の生活困難(デプリベーション)に与える影響の分析. 『季刊社会保障研究』46(4), 354-367
経済協力開発機構(OECD)の報告では、人生の最初の数年間は、個人の将来の能力開発と学習の基礎となるため、質の高い「保育・幼児教育」の投資は、「出身家庭に起因する機会格差」を軽減する効果があると認めています。
【問題背景3:一時預かりはほとんど機能していない】
保護者の育児疲れや、育児不安を軽減したいときに利用できる「一時預かり」もありますが、導入に消極的な自治体があったり、補助金が十分ではないために事業が広がりづらく、供給量が不足しています。令和元年度の利用実績で見ると、未就園児1人当たりでは1年間に約3日の利用にとどまっています。
一方で、ある研究では、働く母親と比較して、専業主婦の育児ストレスが高く、ストレスの主な要因として「子どもと離れた一人の時間がない」「一人きりの子育て、社会からの孤立を感じる」という結果が出ています(下表参照)。専業主婦世帯において、母親が育児から一時的に離れたり、自分以外の人と子育てをしたいというニーズが高いことが分かります。
「一時預かり」では、利用したい時に利用ができず、複数施設や他のサービスをかけもちで利用するなど、子どもの情緒や発達面を考えても、親子にとって望ましい姿とはいえない状況です。
【要望】
保育園や幼稚園は、子どもにとっては大きなセーフティーネットとなりえます。
低所得世帯でも給食があることで栄養をカバーでき、また、養育不全世帯ならば、虐待やネグレクトの兆候に、いち早く気づくことが可能です。発達障害等の傾向も、保育士や巡回訪問等の専門職が気づき、適切な療育や支援に早期に繋ぐことができます。
保護者にとっても、様々な専門家(保育士・看護師・栄養士等)に子育て不安や相談を定期的に行うことができ、安心して子育てをすることができます。
また現在は、ポスト待機児童時代に入り、全国の保育所等の定員充足率は年々低下しております。 ※定員充足率=利用児童数÷定員
これまではキャパがなく受け入れられなかった必要要件を満たしづらい家庭も保育所等で受け入れられるようになってきています。
施設別の定員充足率 ※( )は前年度比
参考:厚生労働省Press Release「保育所等関連状況取りまとめ(令和3年4月1日)」
https://www.mhlw.go.jp/content/11922000/000821949.pdf
ついては、全ての家庭が保育園を利用できるように「保育の必要性認定」を撤廃し、家庭に合わせた頻度で週1〜2日でも保育園を利用可能とすることを要望しました。
2.地域の実態に合わせて事業者が柔軟に利用定員変更ができるよう、自治体へ通知を出してください
上記の施設別の定員充足率にもあるとおり、特に地域型保育事業では定員充足率が低下しています。
地域の人口動向から、今後も定員が埋まらない状況が予想されたため、東京都某区に利用定員変更を相談したところ、「一律受付していない」という回答で、取り扱ってもらえませんでした。
一方、国からの通知では、「事業者から利用定員変更の届出があった場合、町村は、届出を受理せず利用定員の減少を認めないといった対応を取ることはできません。」「市町村においては、申請者との意思疎通を図り、その意向を十分に考慮しつつ、当該施設での最近における実利用人員の実績や今後の見込みなどを踏まえ、適切に利用定員を設定していただく必要がある」と示されています。
ポスト待機児童時代に入り、恒常的に利用定員を下回る受入となっている場合、経営を維持するために、利用定員数の変更を希望する事業者が増えてくると思われます。
事業者が地域の実態に合わせて柔軟に利用定員数を変更できるよう、自治体に向けて改めて通知を出してくださいと要望しました。
3.高卒でも実務経験なしで保育士試験を受けられるようにしてください
平成3年4月1日以降に高校を卒業した人が保育士試験を受験するためには、児童福祉施設(保育所、乳児院等)で2年以上かつ2,880時間以上の実務経験が必要です。
保育とは全く関係のない学科でも、短期大学又は大学を卒業していれば、保育の実務経験が全くなくても保育士試験は受験できます。
短期大学や大学を卒業していても保育の実務経験がなければ、高卒の人と保育に関する知識量は同等なはずです。2年以上かつ2,880時間以上の実務経験は現実的に非常に厳しく、高卒の人は保育士になりたくても諦めてしまうこともあります。
保育士の人材不足が問題になっている中、できる限り保育士になりたいと思う人に門戸を開くべきです。高卒の人も実務経験なしで保育試験を受けられるようにしてくださいと要望しました。
4.保育施設の種別変更に伴うルールの明確化をしてください。
保育施設には、認定こども園、認可保育所、小規模保育所、企業主導型保育所、認証保育所などの種別があり、これらの種別を変更して地域の保育需要に合わせて最適化していく施設も今後増えてくると思われます。
ですが、保育施設の種別変更を促進する自治体もあれば、全く取り扱わない自治体もあり、対応にばらつきが生じています。事業者が窓口で問い合わせた際も、国の制度でできないと断言する自治体もあり、他自治体の例などを示す形で交渉をするなどして事業者に負担がかかっています。
自治体に向けて、保育施設の種別変更についての取り扱いルールやFAQ等を通知してくださいと要望しました。
どのような状況下であれば種別変更が可能なのか明確化することで、各事業者も今後の事業運営に見通しが立てやすくなります。
<変更例>
地域型保育事業から認可保育・認定こども園へ
認可外から認可保育・認定こども園・地域型保育事業へ
企業主導型保育事業から認可保育・認定こども園・地域型保育事業へ
5.企業主導型保育事業に対する指導・監査の効率的な運用をしてください
企業主導型保育事業に対する指導・監査は、その実施機関である公益財団法人児童育成協会により、以下の指導・監査等が実施されることとなっています。
児童育成協会による指導・監査
専門的財務監査
巡回指導
専門的労務監査
企業主導型保育事業は認可外保育施設であるため、各自治体による認可外保育施設立入調査が実施されることとなっています。さらに自治体によっては、巡回指導も行っています。
上記全ての指導・監査の実施にあたって、企業主導型保育事業は、事前の書類提出や、監査資料の準備等に多くの時間を割いています。
児童育成協会による指導・監査で求められる内容と、認可外保育施設立入調査で求められる内容については、そのほとんどが重複しています。巡回指導についても、同様に目的や実施内容が重複しています。
概ね、公益財団法人児童育成協会が実施している指導・監査で、認可外保育施設立入調査の内容を網羅出来ていると考えられます。
公益財団法人児童育成協会が実施する指導・監査と、各自治体が実施する認可外保育施設立入調査の内容を精査いただき、重複する指導・監査内容については、一元化してくださいと要望しました。
6.企業主導型保育事業も地域型保育事業の連携施設として認めてください
企業主導型保育事業は、地域型保育事業の連携施設としては認められていません。
一方で、すべての地域型保育事業は令和7年3月31日までに連携施設を確保しなければならない状況です。地域により差はあるものの、特に小規模保育事業の連携施設の確保が困難なケースが存在しています。
企業主導型保育事業においては、3歳児~5歳児の受入に余裕があり、地域型保育事業の連携施設としての保育の受け皿と成り得る状況です。
※ 以下数値は、2021年11月12日 児童育成協会公表資料に基づき集計
https://www.kigyounaihoiku.jp/info/20211112-02
〔保育施設在籍児童総数〕
乳児 : 9,814人(充足率 50.4%)
1・2歳児 :41,201人(充足率 81.6%)
3歳児 : 6,150人(充足率 64.7%)
4・5歳児 : 6,842人(充足率 52.1%)
3~5歳児総数 :12,992人(充足率 57.4%)
ついては、3歳児〜5歳児の受入が可能な企業主導型保育事業が、地域型保育事業の連携施設 として設定できるよう検討くださいと提言しました。
7.虐待を未然に防ぐために「虐待予防サービス制度」を創設してください
虐待事件を未然に防ぐために、全国のリスク家庭(*2)に支援を届けること(アウトリーチ)が必要ですが、ほとんど実現していません。
*2 リスク家庭:虐待のリスク要因(貧困、ひとり親、若年出産、子どもの障害、親の障害・疾病、乳幼児健康診査非受診等)がある家庭(厚生労働省「子ども虐待対応の手引き」参照)
その大きな理由が、虐待予防に関しては、補助事業しかなく、サービス制度が存在していないことが挙げられます。
補助事業の場合、手挙げした自治体でのみ実施されるため、手挙げしない自治体の住民には全く支援が届きません。また、原則単年度予算であるため、財源も不安定です。
一方、介護や障害福祉の分野では、介護保険制度や障害福祉サービス制度といった「サービス制度」が存在するため、全国一律でほぼ永続的なサービス提供が可能になっています。
虐待予防の分野においても、全国一律で、迅速に支援を届けられるように、新たにサービス制度(虐待予防サービス制度)を創設していただきたいと提言しました。
【虐待予防サービス制度】
国において、制度作り(事業者要件、リスク家庭の範囲等を規定)、サービス報酬(公定価格)の決定、予算確保等を行う。
地方自治体は、当制度に従って、事業者指定、リスク家庭ごとの支援プランの作成、事業者への報酬支払い等を行う。
事業者は、支援プランにそって、食料提供・学習支援を通じた見守り、保育所での定期預かり・相談支援等を行う。
詳細は内閣府ホームページをご覧ください。
子ども・子育て会議(第59回)会議資料はこちら